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MAIDes―メイデス―メイド、地獄の戦場に転送される。固有のゴミ収集魔法で、最弱クラスのまま人類最強に。  作者: 有郷 葉


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53 メイド、待ち伏せされる。


 とりあえず私はナタリーさんの試練を突破できたらしい。(ハロルドさんは彼女に協力させられていたみたい)


 どうやら二人にとってリムマイアは特別な存在のようで、今の自分達があるのは全て面倒見のいい彼女のおかげだと教えてくれた。かつてのナタリーさん達のチームがサフィドナの森で安定して戦えるようになった頃、いきなりリムマイアに洞窟へ引っ張っていかれたんだとか。それからは無我夢中で、気付いたらベテラン戦士の仲間入りをしていたそうな。


 ……あまり他人事に思えない話だけど、二人とも今や英雄クラスなんだからリムマイアの面倒見のよさもすごいものだと思う。


「当時は大変だったけどね、リムマイア様がいなければ俺達は生きてもいないからやっぱり感謝しかないよ」


 ハロルドさんが笑いながらそう言うと、隣でナタリーさんも同意して頷く。


「ですから私達はリムマイア様を、尊敬を通り越してもう崇拝しているんです(特に私は)」


 ……私、腕前を試される程度で済んでよかった。


 私達はブレノーガと戦った最初の部屋を抜け、奥の通路を進んでいた。通路といっても横幅は二十メートル以上あってかなりの広さだ。天井も高く、やはりあの発光する水晶がいくつも浮かんでいる。本当に全く洞窟といった感じがしない。

 隣を歩くタヌセラがキョロキョロと周囲を見回す。


「キュキュー」

(これまで入った建物の中で一番広いです)

「お城とか神殿ってこんな風だよ。いや、それよりも広いかも」


 狸と一緒にキョロキョロしていると、前を行くナタリーさんが振り返った。


「試そうとしたお詫びに少しこの洞窟を案内します。今度こそ見学気分で大丈夫です」

「はい、よろしくお願いします……」

「ところでオルセラさん、ここまでで何か気付いたことはありますか?」

「えーと、やけに広いことと……、あ、なぜか魔力感知がうまくできません」

「そう、ここの床や壁は感知を遮断するようにできています。この広さも含め、洞窟は魔獣が有利に戦える構造になっているんです。たとえばあそこ」


 とナタリーさんは先に見える曲がり角を指差す。


「あれが何かあるんですか?」

「安易に曲がってはいけません。ちょうどいい機会ですのでタヌセラさん、〈狸分身〉を見せてください。魔力はほとんど分けない感じで」


 ナタリーさんに言われるまま、タヌセラは分身体を作った。本当に魔力を全く込めていないらしく、見るからに弱々しい。


(普通の狸にも負けるほどです)

「それは相当弱いね」


 動物の狸より戦闘力の劣るタヌセラ分身体は、ナタリーさんの指示で曲がり角へと向かう。その様子を眺めつつ、分析が専門の彼女はクイッと眼鏡を上げた。


「あのように内角を攻めてはいけません。もっと外側を大回りしないと……」


 角の向こうから現れた巨大な竜の前脚が、ベシッ! と分身体を叩き潰した。

 ……な、なるほど、よく分かりました。

 ハロルドさんが剣を抜き、「ちょっと待ってて」と言い残して曲がり角へ駆けていく。


「気を付けてください! 何かでかいのが待ち伏せしていますよ!」


 私が注意を促すまでもなく、ハロルドさんは再び繰り出された魔獣の前脚をスイッと避けた。彼の姿も角の向こうへ消え、数秒間の激しい閃光と爆発音の後、何食わぬ顔で私達の所へ帰還。

 手に持っていた魔石を私の前に差し出す。


「オルセラさんにあげる。これは俺からのお詫び」

「ど、どうもありがとうございます」


 いったい何の魔石だろう……。

 さっきは私の前にブレノーガと戦って敵の動きを見せてくれたし、ハロルドさんはとても優しいリーダーのようだった。


 以降は魔獣と遭遇することなく通路を進んだ私達は、やがて二つ目の部屋に辿り着いた。

 先ほど同様の広さで、今度はいくつもの通路への入口がある。ざっと見渡したが魔獣の姿はない。胸を撫で下ろしていると、ナタリーさんが部屋の中央へと歩きながら喋り出した。


「あのブレノーガのように正々堂々とした魔獣はここでは稀なんですよ。大抵は手段を選ばずに攻撃を仕掛けてきます。待ち伏せしたり、死角から襲ってきたり」


 とナタリーさんは私の背後を指差す。振り返ると壁に体長二メートルくらいの竜が引っ付いていた。その姿を確認した時には、敵は今まさに私に飛びかかってこようとしているところだった。


 うわ――――っ! プ! 〈プラスシールド〉ー!


 私が魔法の盾を出すより先に、ナタリーさんの武器が魔獣を捉えた。彼女の手元から伸びた、鎖の付いた剣が竜の背中にザクッと突き刺さる。その体は一瞬で凍りつき、直後に粉々に砕けて魔石が現れた。


「……助かりました。やっぱり感知が効かないと危険ですね」

「安心するのはまだ早いですよ、上を見てください」


 ナタリーさんに促されて私は天井を見上げる。先ほどと同じ竜が少なくとも十頭以上、壁をつたって次々に下りてきていた。


 い、いっぱい来る! 続々と来る……!



コミカライズの方、現在公開中の9話と次の10話、すごくいいです。

ぜひ読んでみてください。

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10話はまだ下書き段階なので、次の投稿時にもお知らせします。

あの名シーンが漫画に。

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― 新着の感想 ―
上に行くには、難易度低い方でもこれくらいは突破しなくちゃいけないんだから選別はピッタリな言い回しで。
動物の狸にも負けるほどとな。タヌセラも魔力の調整が上達してるねぇ
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