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MAIDes―メイデス―メイド、地獄の戦場に転送される。固有のゴミ収集魔法で、最弱クラスのまま人類最強に。  作者: 有郷 葉


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50 メイド、洞窟について調べる。

 転送から九日目の朝を迎えた。


 毎朝ホットケーキばかりじゃ飽きるので、今日は起きてすぐにハンバーガーを買いにいってきたよ。……本当は、起きてすぐ無性にハンバーガーが食べたくなった。昨日巨大なハンバーガーを見ちゃったからだろうか。間に挟まっていたのは魔獣だったけど。


 私が買い物を終えて帰宅すると、待ちわびていたようにタヌセラが駆け寄ってくる。


「お待たせ、こっちがタヌセラの肉まんね」

(ありがとうございます! わーい、蒸したてのふわふわです)

「それから、あのいつものお店にお金を預けてきたから、タヌセラが行けばいつでも肉まんと牛乳を出してくれるよ」

(助かります。おかげで私も先輩契約獣としてのメンツを保てそうです)


 昨晩のラクーム大面接会の後、タヌセラは新たに契約獣となった五匹に町を案内してあげる約束をしていた。一通り回った後に肉まんを振る舞って、先輩としていい顔を見せたいらしい。

 自分もつい最近まで森で暮らしていたのに、ずいぶん社会性が身についたものだ。


「キュキュ! キュキュー!」

(もうこんな時間に! 遅刻しちゃうと印象が最悪です!)


 壁の時計に目をやったタヌセラは、肉まんを咥えたまま慌てて家を出ていった。

 喉、詰まらせないようにね。……まったくもって社会性が身についたものだ。

 さ、私もそろそろ行こうかな。と勢いよくハンバーガーにかぶりつき、危うく喉が詰まりそうになる。み、水……!


 私も朝から予定があった。昨日ティグレドと戦ってみて、あの魔獣のいる洞窟がどんな所なのか興味が湧いたんだよね。……もちろんまだ私が行くのは早過ぎるって分かっているけど、話を聞くくらいはしておいてもいいかなって。


 関所に入ると、今日もコレットさんが私の姿を見るなり近付いてきてくれた。


「洞窟の話ですか、それなら適任がいますよ。普段は出ていることが多いんですけど、今ちょうど奥にいます。どうぞ入ってください」


 その人がいる部屋の場所だけ聞き、カウンターの横から中へと入らせてもらった。

 これまでも来たことがあるけど、受付のある部屋を抜けると一気に前線基地という名称通りの雰囲気に変わる。今は台地奪還作戦の直前とあって一際だ。すれ違う職員の全員から緊張感が伝わってくる。

 と廊下の角からひそひそと囁く声が聞こえてきた。


「あれがオルセラ様……!」

「そう、ルクトレア様のお嬢様よ。失礼があったら首が飛ぶから」


 ……あれ? そういう緊張感だったの?

 急に申し訳ない気持ちになり、私は隠れるように移動して目的の場所に辿り着いた。部屋の扉が開いていたので隙間から様子を窺う。中には予想していた通りの人が座っていた。


「ナタリーさん、少しお話いいですか?」


 ノックしながらそう声をかけると彼女は室内へと招き入れてくれた。

 私が洞窟について尋ねると、ナタリーさんは「ふむ」と眼鏡の位置を修正。伊達なのに相変わらず眼鏡がよく似合っている。

 立ち上がった彼女は棚から取り出した地図を私の前に広げた。


「これは洞窟の一つの内部を記した地図です」

「一つって、洞窟はいくつもあるんですか?」

「はい、ナンバー01台地には、ああ、東の台地のことです。あそこにはサフィドナの森から入れる洞窟が五つあります。出現する魔獣や構造に応じて難易度を設定していまして、この地図は最難関ランクAのもの。昨日ティグレドが出て来たのもここですよ」


 じゃあ、ダイアナさんとシンシアさんは最難関の洞窟に挑んでたってこと? さすがにあの二人だと無謀じゃないかな……。

 疑問を口にするとナタリーさんはすごく大きなため息をついた。


「たまにいるんですよ。下調べをしないで行ってしまうチームが。何のために私が資料を作成しているのか……」


 関所では世界戦線協会が保有する様々な情報を閲覧できるらしい。中でもとりわけ戦士達の助けになるのが、台地や洞窟などの戦場に関する情報だ。

 それらを収集して資料にまとめるのがナタリーさんの仕事なんだって。


「ですから私は嬉しいんです!」


 突然ナタリーさんは前のめりに私の手を握った。


「オルセラさんがここに話を聞きにきてくれたことが! あなたは分かっているんですね! 情報の大切さが!」

「え、は、はい……、情報はとても大切です……」

「そうですとも! ただでさえ命の危険がつきまとう場所に得られる情報も得ないで赴くなんて愚かとしか言いようがありません! ですよね!」

「はい……、下調べもせずに最難関の洞窟に突撃するなんて愚か者のすることです……」


 ……ダイアナさん、シンシアさん、ごめんなさい。あまりの迫力に抗えませんでした……。(言ってることは全くその通りだと思うし)

 どうやらナタリーさんは情報に並々ならぬ情熱を注いでいるようだ。彼女の固有魔法〈状況分析〉は発現するべくして発現した気がする。高レベルの戦士なのにデスクワークもできるんだから協会からスカウトされるはずだね。


 この洞窟の地図もナタリーさんが作成したのかな。色々とびっしり書きこまれてるし絶対そうだと思う。

 と地図を覗きこむ私の顔を、ナタリーさんはじっと見つめてきていた。


「……情報、ちゃんと全部読んでますよ」

「素晴らしいです。資料に目を通すのも重要ですが、もっと効率よく情報を得る方法もありますよ」

「え、どんな方法ですか?」

「今から私と一緒に洞窟に行くんです」

「……今から、ですか?」

いよいよ小説2巻のメイン、ダンジョンパートに入ります。

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― 新着の感想 ―
タヌセラ立派になって… ただラクーム界隈で肉まんが日常食になったら、それはそれでとんでもない認識の浸透っぽいけど
あの二人なら下調べしても、その場のノリで 『このルートを行こう、私達ならイケる』となる光景が容易に見えるかも
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