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49 [リムマイア]狂戦士、守護魔獣を貫通する。

「とりあえず二人は拠点を守ってくれ」


 フリーゼンとメルポリーにそう告げた時には、私はもう体から稲妻を発していた。すぐに足は地面から離れ、空中へと浮かび上がる。

 作っている最中は気付かなかったが、この〈雷身絶空〉、完成したらどういうわけか飛行能力も備えていた。まあ、得した。

 浮遊する私を見ながらメルポリーが首を傾げる。


「それ、どういう魔法?」

「そうか、メルポリーにはまだ見せてなかったな。まあすぐに分かる」


 ちなみに、〈アタックゲイン〉などの強化魔法もすでに使用してある。私自身の強靭さが重要になる魔法だからな。

 ガロミュギラの上空まで移動すると、奴から魔力を吸い続けているゼノレイネが視線を向けてきた。心の中に彼女の声が響く。


(ああ、それを使うのか。確かに今後の戦いを考えたら慣らしておいた方がよいしのう。じゃあ、わしは離れるゆえ存分にやれ。巻き添えで穴を開けられてはたまらん)


 失礼だな、そんなミスをするか。とにかく存分にやらせてもらおう。いずれオルセラと一緒に上位魔獣を相手にする時が来たら、この魔法は絶対に必要になる。あいつがドジを踏んで死にかけた時には私が……、ふふふふ。


 む、何だか魔力の質が高まってきているのを感じるぞ。なぜか分からんがちょうどいい。いよいよ〈雷身絶空〉、本格発動だ。


 私の纏う雷の輝きが増した。

 これは出力的にはウエポン最上位のⅣと同じ。さらに、武器の大槍には重ねて〈サンダーウエポンⅣ〉を付与する。これで準備は整った。

 しかし、ゼノレイネが言ったように穴が開くなんてことがあるのだろうか? レベルが低めとはいえ、あれは鎧竜種の守護魔獣だぞ?


 ……念のため、横から行くか。地面の中に埋まりたくはないしな。

 と私は飛行高度を下げた。背後に壁を作るように〈ステップ〉の足場を構築。こちらも強度が重要なのでかなりの魔力を注ぐ。

 ガロミュギラが私に向かって口を開き、〈ファイアブラストⅡ〉を撃つ構えを見せていた。


 悪いがこちらの方が早い。

 私は空中で横向きになって〈ステップ〉をしっかり足で踏む。大槍の切っ先を、鎧竜の心臓があると思われる位置にまっすぐ向けた。よし。

 いくぞ! 私! 発射だ――――――――っ!


 足場を思いっ切り蹴ると同時に、飛行速度を一気に最大まで上げた。


 ズッギュ――――――――ン!


 前方にいたガロミュギラはすでに私の背後に。その胸部には人が通れそうな大きさの穴がぽっかりと開いていた。それもそのはず、実際にたった今、私が通り抜けたんだから。しかし、本当に貫通できてしまったぞ。


 この〈雷身絶空〉は、私自身を弾丸として撃ち出す魔法だ。作った本人である私もよく分からないが、様々な要素が組み合わさって大変な速度と威力が実現されている。今日は守護魔獣にもしっかり通用するということが証明できたな。


 達成感を噛み締めている間に、体長五十メートルを超える巨竜は塵へと変わった。

 魔石を拾い上げて拠点に戻ると、待っていた者達の反応はそれぞれだった。再び人の姿になったゼノレイネは割といつも通り変わらず。フリーゼンは呆れたような視線を送ってくる。そして、メルポリーはといえば……。


「私が、〈爆発するエクスプロージョン〉で仕留めるはずだったのに……」

「……あ、すまん。完全に忘れてた……」


 ツインテールの美少女はしばらく落ちこんだ後に、思い立ったように顔を上げた。再び魔法の翼で離陸する。


「ちょっと釣りをしてくる」

「待て! 私が悪かったから! 今日はもう釣ってくるな!」


 メルポリーを空中から引きずり下していると、こちらに駆けてくる六人の戦士が目に入った。先頭で率いているのはエリザだ。彼らはこの拠点で活動するもう一つのチームになる。

 一団が到着し、まずエリザが私の持っている魔石を確認。


「見てたわよ。守護魔獣をおびき出して倒すなんてやるじゃない」

「こいつが勝手に連れてきたんだよ……」


 私は飛んでいかないように捕まえているメルポリーを指した。


「私は作戦開始までにレベル50に到達して英雄クラスになると心に誓った。そして、台地奪還の立役者になってオルセラに『やっぱりメルポリーさんはリムマイアより頼りになりますね!』と言ってもらう」


 こいつ、そんな邪な計画を立てていたのか……。

 すると、ススッと私の後ろに回りこんだゼノレイネが背中を突っついてきた。


「お前も似たようなもんじゃろ」


 ……うるさいな、私はもうちょっと人類のことも考えてるぞ。

 ここで、こっちのチームを眺めていたエリザがハッとした表情になった。


「マルティナ……。バカだけど悪い奴じゃなかったわね……」

「いや、あいつどっかに吹き飛ばされたけど、たぶん死んではないと思う」


 とマルティナが飛んでいった方角に目をやると、大斧を振り回しながら走ってくる彼女が見えた。すごく元気そうだ。


「あんにゃろう! よくもアタシをっ! ……って、もうやっつけちゃったのか……」

「ああ、リムマイアが風穴を開けて一撃で葬った。小動物系美少女に転生しても以前の凶悪さは健在だ」


 フリーゼンがうなだれるマルティナの肩に手を乗せる。


「あれを使ったのか……。よくあんなえげつない魔法を思いつくよ」


 いや、よくよく考えたら〈雷身絶空〉はそこまでひどくないだろ。魔獣に銃弾を撃ちこむのと一緒だ。偏見が入ってないか?

 エリザが「ふーん」と私の顔を覗きこんできていた。


「リムマイア、〈戦闘狂〉は使った?」

「今回はなしでいけた。メルポリーやゼノレイネが結構削ってくれたから」

「それでも鎧竜種の守護魔獣に穴を開けるのはすごいでしょ。ねえリムマイア、もうエンドラインに入っちゃったら? 実力は充分だし、ゼノレイネもいる。誰も文句なんて言わないわよ」

「それはレベル100を超えてからでいい」


 このやり取りに、メルポリーが私の掴んでいた手を振り払った。


「先に私が100に到達してエンドラインに入るよ。でオルセラに『さすがメルポリーさん! 大好きです!』と言ってもらう!」


 それ、オルセラは言わんだろう。

 やっぱりこいつには今後は勝手な行動を取らないように言っておかないと駄目だな。今回はどうにかなったからよかったが。


「マルティナも死ななかったしな」


 私の呟きに対してマルティナが眉を吊り上げる。


「あの程度でアタシが死ぬか! 少なくとも(前世の)アタシの宿敵、軍神赤神を討つまでは絶対に死ねない! ……なあ、ほんとに誰も赤神を見てないのか? あいつが転生してないはずないと思うんだけど」


 彼女は場にいる全員をぐるりと見回した。その問いかけに、誰もが首を横に振る。


 軍神赤神というのは、マルティナと同じ戦乱の時代に生きた赤髪の双剣使いの女性だ。圧倒的な強さを誇ったようで、一国の主戦力として日常的に一対数千数万の戦いをこなしていたらしい。私だって前世では数万の軍と戦ったことがあるが(最期もその状況で死んだし)、日常的にじゃない。


 神格化されたほどの傑物なので、軍神赤神はその後の時代に生きた前世のフリーゼンや私でも知っていた。マルティナに会って話を聞くまで、空想上の人物だと思っていたんだが。残っている逸話はそれほど人間離れしたものばかりだし、赤神は最期は竜の背に乗って天に上っていったという話まである。

 とにかくそんな奴が転生していたら気付かないわけない。

 エリザがどこか遠くを見つめながらボソッと。


「軍神赤神、来てくれないかしら」

「切実だな」


 私の言葉に、彼女は即座に反応した。


「当然でしょ、私達一つ目の台地でこんなに苦労してるのよ。あと二十六もあって、しかもほとんどが手付かず!」

「ここの台地だってまだまだ守護魔獣が残っているしな。あと何頭だっけ?」

「十七頭よ」


 そんなにいるのか……。

皆さん、今年は大変お世話になりました。

来年もよろしくお願いします。

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固有の強化無しで守護級を倒し切るし、準エンド級って言えそうな域に達してそうですね 良いお年を〜
固有スキル使わずもエンドライン級に達するってナイスなお墨付きでは。 そんな神格化された人が更に反則級な固有スキルを得た模様
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