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MAIDes―メイデス―メイド、地獄の戦場に転送される。固有のゴミ収集魔法で、最弱クラスのまま人類最強に。  作者: 有郷 葉


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32 メイド、何かの始まりを予感する。

 騒がしくなった場を収めるように、コレットさんは手をパンパンと打ち鳴らした。


「皆さん! 転送四日目で上位魔獣を倒してレベル11になったとはいえオルセラさんはまだ新人さんなんですよ! そんなに注目されるとやりづらいでしょう!」


 誰もが、注目させたのはあんただろ、という視線をコレットさんに投げかける。

 彼女は全く気にすることなく、リムマイアとの会話を再開させていた。


「そうそう、ナタリーと調査団も戻ってきていますよ。アスラシスさんが同行させてくれたようです」

「本当か、じゃあちょっと話を聞いてくるかな」

「そうしてください。今回、アスラシスさんは二頭の守護魔獣を討伐したそうです。これを受けて、ついに作戦を決行することになりました。エリザさんは今、その件で彼女の所に行っています」

「……いよいよか」


 リムマイアが神妙な口ぶりで呟いた。

 私の背中にいるメルポリーさんも緊張しているのが伝わってくる。

 状況は全然分からないけど、何か大変なことが始まるみたいだ……。


 なお、先ほどから話に出てくるアスラシスさんは、私のヴェルセ王国所属のエンドラインになる。前にリムマイアが言った、強い奴、とはやはり彼女のことらしい。

 アスラシスさんは私が幼い頃からこの戦場にいて、王国にも年に数回しか帰還しない。なので、私も顔を合わせたのは数えるほど。以前は東方出身の上品なお姉さんという感じしかしなかったけど、魔力が増えてきた今ならまた印象は違うのかもしれない。リムマイアが強いって言うくらいだし。


 その狂戦士の少女は私の顔を見ながらため息をついていた。


「お前、せめてあと一年早くドジって転送されてきたらよかったのに……」

「何それ、どういう意味……」

「言っても仕方ないか。ほらメルポリー、いつまでオルセラの背中にいるんだ。とっくに歩けるくらいには回復してるだろ」


 リムマイアは私が背負っているメルポリーさんをベリッと引き剥がした。分離させられた彼女はしっかりした足取りで立つ。


「さっきから人をベリベリと。どうやら、やっぱりリムマイアはいつか爆破しないといけないようだ」

「だったらもっとレベルを上げろ」


 リムマイアの言葉に、コレットさんが「充分に高レベルですよ」と反論した。天然パーマの職員は再び仕事モードのきちんとした雰囲気に戻っている。


「メルポリーさんはすでに英雄クラスの実力ですし、爆破拡張の能力は大きな戦力です。今回の作戦には欠かせません。もちろんリムマイアさんもですよ。固有魔法を使えばもうエンドライン級なんですから。契約獣のゼノレイネさんはまさに守護魔獣級ですし」


 これに今度はゼノレイネさんが反論する。


「わしはとうにあの台地の守護魔獣共を超えておるぞ。なんせレベルは105じゃからの。それより、わしが参戦することを前提に勝手に話を進めるな」


 黒竜の少女は不満そうに尻尾で床をビタンビタンと叩いた。

 すると、コレットさんは受付カウンターの下に手を入れる。取り出したのは大きな熊のぬいぐるみだった。


「何卒、ご一考ください」

「…………。仕方ないのう」


 ゼノレイネさんはタヌセラを持っているのとは反対の腕でぬいぐるみを抱えた。

 ……この職場の人達、賄賂を贈るの得意にしてるな。

 だけど、守護魔獣って普通の魔獣とどう違うの? 本当に分からないことだらけだよ……。

 私が首を傾げていると、リムマイアが声に出して笑った。


「知りたいことはあとでゼノレイネに聞けばいい。ゼノレイネ、私はナタリー達の所に寄っていくから、先に飯を買って帰っていてくれ」


 リムマイアはそう言い残すと、「お前も来るんだ」とメルポリーさんを引っ張って部屋の奥へと消えていった。

 一方のゼノレイネさんは関所の入口へと歩いていく。


「面倒じゃのう……。ああ、オルセラ、その金を持ってきてくれ。わしは見ての通り狸と熊で両手が塞がっとる。飯を買って余った分はお前にやるからの」

「ええ! ……さっき金額交渉までしていたのに、いいんですか?」

「構わん、餞別じゃ。その金で早く自分を強化しろ。さもないとオルセラ、この先は本当に死ぬことになるぞ」

「え……」


 恐ろしく不吉な暗示をされたが、言われるままにカウンターのお金に手を伸ばした。

 札束が四つに、プラスアルファ。……あのグラバノス、上位魔獣なだけあってこんなに高額の魔石なんだ。

 あ、私のシャロゴルテの魔石はどうしよう。まだ換金しなくていいか。


 四百万ゼア超のお金を回収していると、コレットさんがスッと顔を寄せてきた。


「私も後でリムマイアさんと一緒に伺います。お肉は多めに買っておいてください。私! 非戦闘員なので皆さんほど豪遊できないんです!」

「わ、分かりました……」


 迫力に押されるように、私もゼノレイネさんを追って関所を出た。

 ……お肉へのただならぬ執念を感じた。世界戦線協会のお給料はどれくらいか分からないけど、確かに戦士じゃなきゃここの物価はきついよね。


「コレットは非戦闘員じゃが、あの遠慮のなさと物怖じしない性格で各国との調整役を担っておる。エリザの片腕、統括補佐としてなかなかの激務らしいからの、肉くらいは好きなだけ食わせてやろう」


 飲食店の並ぶ通りへの道すがら、ゼノレイネさんはそう呟く。それから彼女はついでに、協会に所属する他の人達のことも教えてくれた。


 まずは先ほど話に出てきたナタリーさん。彼女はリムマイアと同じドルソニア王国の戦士で、今は協会に出向中らしい。何でも分析能力にとても優れているそうで、エリザさんのもう一方の片腕、コレットさんと対になる統括補佐とのこと。

 ナタリーさんは定期的に自ら台地の上まで足を運ぶんだとか。


 それに同行するのが協会の精鋭部隊である調査団だ。全員がレベル40以上の戦士で、団長を務めるハロルドさんもドルソニア王国からの出向なんだって。


「リムマイアももう半分は協会所属みたいなものじゃからの。……あいつはとにかく面倒事を引き受けよる。あれこそ病気じゃよ。わしも苦労が絶えんのじゃ……」


 ため息まじりにゼノレイネさんは愚痴をこぼしていた。

 ……すごく分かる気がする。たぶん私もその面倒事の一つだろうし……。

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挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[一言] 面倒事を抱えてもこなせるという実績豊富って他なら兎も角 この地特有の厄介事が多そうな印象ですね
[一言] スピーカーでマッチポンパーでツラの皮が分厚いだと…? 絶対に目を付けられたくないランキング上位の人種じゃないか
[一言] ベルセレス・リライフの方ではまだまだ駆け出しだったハロルドやナタリーも、もう英雄に近いレベルになり協会の一員になってるんですか。
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