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MAIDes―メイデス―メイド、地獄の戦場に転送される。固有のゴミ収集魔法で、最弱クラスのまま人類最強に。  作者: 有郷 葉


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18 メイド、賄賂を受け取る。

 関所の受付にて、私達を囲む戦士の数はさらに増えてきた。

 やっぱりお姉さん達が多い。とにかく、人なつっこいラクーム、タヌセラが人気だ。

 この最弱の魔獣は森で見掛けることがあっても、警戒心が強く、近寄ったらすぐに逃げていくらしい。こんな風に触れ合えることはないんだって。そもそも魔獣は力で従わせて契約を結ぶまでは、決して人間に心を許すことはない。

 そう言われてみれば、契約前からやけに馴れ馴れしかったタヌセラはずいぶん変わった魔獣だと思う。

 という話をしているとリムマイアが笑いながら。


「出会ったのがオルセラだからじゃないか? 一緒にいるうちに性格もうつったんだろ。それより皆、〈狸火〉が見たいって言ってるぞ」

「でもこんな室内で、しかも人が大勢いる場所で危険……、ではないか。小さな火だし、全員戦士だし。じゃあタヌセラ、〈狸火〉使ってくれる?」

「キュ。キューン」

(お安いご用です。むしろ見ていただきたい)


 だろうね、お願い。

 タヌセラがくいっと顔を上げると、その視線の先に、ボボウ! と炎が浮かび上がった。

 あれ……、結構大きい。ちょっとしたたき火くらいあるよ。

 そうか、レベルと魔力が上がったからだ。


 契約獣は得意げな顔を向けてくる。


(今回はまだフルパワーじゃありません。力をセーブしています)


 何その、私が本気を出すと危ないので、みたいな……。

 でも、これなら武器として充分に使えそうだね。

 戦士のお姉さん達も感心したように〈狸火〉を眺めている。


「ラクームでもレベルを上げてやれば戦力になりそうね」

「私もラクームと契約しようかな」

「私はタヌセラと契約したいわ」

「そうだ、今日タヌセラは結構大変な目に遭ったんでしょ? オルセラ、ヒールストーンをあげるわ」


 と手渡されたのは綺麗な水色の小石だった。

 あ、これは私も知ってる。

 ヒールストーンは怪我の治療をする魔法〈ヒール〉が込められた消費型の魔法道具。私の家や勤めていた王城にも、緊急時に備えて常に置いてあった。そのお値段、なんと一個十万ゼア。


「もらえないよ! こんな高価なもの!」


 私が慌ててそう言うと、全員が同じ眼差しを向けてきた。

 あ、これも知ってる。「本当に貴族(公爵)令嬢?」だね……。

 すると、今度はボーイッシュな戦士がヒールストーンを投げてよこした。


「アタシもやるよ。なんかオルセラを気に入った」


 彼女に続いて「私も」「私も」と次々に。あっという間に、十個のヒールストーンが手元に集まった。

 ひゃ、百万相当!

 ……まるでお菓子でもくれるように。やっぱり戦士の人達ってお金持ってるんだな。だからといって、いただいてしまっていいのかな……。


「もらっておけばいいわよ」


 戸惑う私に背後から声が。振り返るとエリザさんが部下達をひき連れて立っていた。


「リムマイアは面倒見がいいようで実はかなり雑だから、うっかりしていると死ぬことになるわ。命の危険を感じたら迷わず治療なさい」


 関所統括者の言葉に戦士達もうんうんと頷く。

 これにリムマイアは当然黙っていられなかった。


「ヒールストーンなら私だってちゃんと持っていってたし! オルタヌセラが危なくなったらすぐに使うつもりだったぞ!」


 名前引っつけないで。私に渡しておいてくれなきゃすぐに使えないし、結構危ない時あったよ。

 ……今回はエリザさんと皆さんの方が正しいみたいだ。

 私は戦士のお姉さん達に向かって頭を下げた。


「ありがとうございます。いざという時はこれで治療します。ほら、タヌセラもお礼を言って。怪我を治せる石をもらったんだよ」

「キュ。キュキュー」

(ありがとうございます。魔石にならないように頑張ります)


 狸の魔獣がペコリとお辞儀すると歓声が起こった。

 再びタヌセラが皆からもふもふされている間に、エリザさんがススーと私に近付いてくる。


「私達からはこれを贈るわ」


 差し出された手には腕輪が。彼女はそれを私の手首に装着させながら説明を始めた。


「この腕輪には〈プラスシールド〉の魔法が付与されているの。半径五メートル以内の好きな場所に魔法の盾を出すことができるわ。今着ているプレートアーマーはいい物だけど、防具がそれだけじゃ心許ないでしょうから。私達職員からこれをプレゼントよ」


 早速〈プラスシールド〉を発動させてみた。

 私の目の前に半透明の板が浮かび上がる。

 これ、動かせるかな? 念じると魔法の板は空中を泳いで移動した。なるほど、こちらも半径五メートル以内なら可能みたい。これならタヌセラも守ってあげられるね。

 こんなに便利な魔法道具をくれるなんて……。

 視線をやるとエリザさん始め職員一同が満面の笑みを湛えていた。


「それでちょっとお願いがあるんだけどー……、帰ったら母上に、私達は皆しっかり仕事をしていたって伝えてくれない?」


 ……この腕輪、賄賂だ。

 まあでも、〈プラスシールド〉があれば断然戦いやすくなるし、安全性も高まる。もらっておこうかな。


「……お母さんには、皆さん真面目に職務をこなしていて、私にもとても親切にしてくれたと伝えます」

「「「よろしくお願いします!」」」


 関所の全職員、心からのお願いは確かに私に届いた。

 お母さんにも感謝しないと。お母さんが協会の人事権を掌握しておいてくれたおかげで、私は安全に戦えるようになったよ。


 関所統括者としてのエリザさんの仕事はまだ残っていた。

 リムマイアにツカツカと靴音をたてて詰め寄る。


「オルセラを死なせたら私達全員を敵に回すわよ! 雑にはならない!」

「わ、分かった。……ざ、雑にはならない」


 治癒と防御の魔法道具を手に入れて改めて思う。

 ……私、よく生きて今日を乗り切ったな。

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― 新着の感想 ―
[良い点] マスコット人気は色々と直結するから良いことですばい [一言] 実戦で役立つ袖の下を送る当たり、しっかりと配慮も含まれてヨシ!
[一言] もふもふには勝てない。(人気では)
[一言] オルタヌは人気者だな 頑張っても毛皮もなければ二足歩行じゃあ、負けても仕方ない
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