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男装女子と恋愛してます!!  作者: 楠木湊
第一話 『暖かな優しさ』
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プロローグ~序章 『入学式での一目惚れ』

普通の女子高生であった美奈穂が、『男装女子』として生活している女子への恋心をどう感じて、

その『想い』をどう伝えて関係が発展していくのか…。この物語で『同性への恋心』が世間への批判を受けながらも、幸せな未来へと繋がっていくように、2人の運命の恋が動き始めていく。

現在の『同性婚』や『同性愛』をテーマにした、ラブストーリーになっています。

私の名前は、豊川美奈穂とよかわみなほ。現在、都内の女子高に通っている、高校2年生。

皆さんは、『男装女子』って知ってます?女の子だけど、男の子みたいな感じっていうか、本当の男の子よりも、とてもイケメンで、しかも女の子の心を察し易いというか…。とにかく、とっても素敵!!

そんな『男装女子』に憧れる女の子は世の中結構居る訳でして…。私もその一人ではああります。

今の世間で知られている『男装女子アーティスト』とか、『男装モデル』とかって、本当にイケメン。

だけど、私は…『男装アーティスト』とか『男装モデル』の人へ憧れを抱いているわけではないんです。

私が憧れているのは…———


私が当初、まだ女子高に入学したばかりの頃。中学の時から勉強が苦手で、成績もあまりよくも無く

両親からは『そんなんじゃ、良い高校行けない!!』って言われ続けていた。そう言われて、努力はしていたけれど、結局は第一志望の高校へは合格できなかった。でも、第二志望の女子高への合格が決まって、両親は少し不満気にはしてはいたが、『まぁ、合格できたなら良い』と渋々納得。

私も、別に第一志望の高校を自らの気持ちで行きたいとは思っていなかったので、多少ラッキーかなとも思っていた。

そんな感じで、入学式当日を迎え、私は女子高へと向かって行った。両親は、海外への出張で入学式には行けないと言われていたので、それはそれで、別に構わなかった。そもそも、私は両親が来てくれるとは思ってもいなかったし、勿論、小学校も中学校も、入学式・卒業式共に顔を見せてくれた事など、一度も無かった。だから、期待も何もしていなかった分、別に寂しくも無かった。

家にはいつも、『一人』でしか居なかったし、私の当たり前の日常生活だと思っていたから。


「せめて、入学祝位してくれても良いのにな…」

私はそう呟きながら、入学式の会場の案内を見ながら、歩いていた。

周りは同じ制服の女の子達とその親御さんが一緒だった。チクリと痛む心もあったけど、私にはそんな光景なんか今後も来るわけがないと思う。

「別に、寂しくなんかないもん…!」

そう自分に鞭を打った発言をした瞬間だった。


――ドンッ!!!!

「キャッ!!『あ…!』」

私はよそ見をしながら歩いていたので、誰かぶつかり、反動でこけてしまった。

尻餅をついてコンクリートの上に座り込んでいた私に覗き込むような影がかかった。

「ごめん、大丈夫か?」

「あ…すみません…。私がよそ見していたか…ら?」

私はそう言いかけて、視線を止めた。目の前には、とても素敵なイケメン男子が私の事を心配そうに見下ろして、手を差し出してくれていた。

「(うわぁ…カッコいい…)」

「あ、大丈夫かな?どこか痛い所とかあるか?」

「い、いえ!!だ、大丈夫です!!!」

私がその手を取ると、その人は私の手を引っ張って立たせてくれた。そして、ふ…と微笑んで

『大丈夫そうなら、良かった』と言ってくれた。


「あ、すみませんでした…。」

「ううん。良いんだ。じゃあ、俺もう行くから。それじゃあ。」

そう言って、その人は軽く手を掲げて、そのまま去って行ってしまった。


「あんなにイケメンな人初めて出逢ったかも…」

私は一瞬で、その人に一目惚れをしてしまった。でも、取り敢えず私は案内通りに入学式の会場へと急ぎ、危うくギリギリな時間に到着した。

校長先生の長い挨拶と説明がやっと終わって、私は自分のクラスの確認をしに行った。

「私のクラスは…C組か。新しく友達が出来るか不安だな…」

私は学校生活に慣れていくかどうかの不安で一杯だった。その時は、不安な事しかなかったけど、生活していく内に友達が増え、友達と遊ぶことも多くなっていくようになった。


そんなある日、私の同じクラスの角沖さんが、『今男装女子が大ブームなんだって!!!』という話をされるようになった。『ダンソウジョシとは何だろう?』という疑問を浮かべた私の表情を角沖さんは不思議そうに見つめて言った。

「あ、美奈穂ちゃん知らないの??」

「あ…うん…」

「今ね、すっごいカッコいい女の子が『男装』っていう男の子ファッションとかをしたり、グループで活動をしてたりとかしてるの!!うちの女子高にも、そんなイケメンな人居るんだって!!!」

角沖さんは大興奮しながら、キラキラした笑顔で私に力説してきた。

『男装女子』…。私は一度もその世界を知らなかった。というより、きっと周りよりも出会遅れた感じになっていたのかもしれない。イマドキ、雑誌にまで載るくらいの『カッコいい男装モデル』のファッション雑誌や、音楽番組は山ほど見ていた気もするけど、私は理解出来てなかったんだと思っていた。角沖さんは、私に男装のあれこれを色々と教えてくれた。私はその時までは、何も感じてはないかったんだけど、私の高校生活も学年が一つ上がって、勉強に身を浸す事が多い中でも、幸運にも同じクラスへと上がれた角沖さんとも『男装女子』の話題で盛り上がれるようになっていた。私は、1年遅くにはなったけど、『男装女子』という存在を理解出来るようになった。


角沖さんと話す時には、必ず裏庭で昼食を摂りながら夢中に話したりもしていた。そして、今日も角沖さんと男装女子の話題で話が弾んでいた時…。私の視界に不意に入っていった姿があった。それは、入学式以来、会う事が叶っていなかった『あの人』の姿だった。

「(あ…れ?あの人…うちの制服だけど…)」

「どうしたの?美奈穂ちゃん?」

「え?…ううん、何でもない。」

「? そう?」

角沖さんが私にそう問いかける言葉に私はそう答えた。少しして、又目を向けてみたけど、その人の姿はなかった。きっと気のせいだと、私はそのまま気にしないようにもしていた。

そうしている内に、昼休みが終わるベルが鳴り響いて、私と角沖さんは教室へと戻っていった。

『(あの人…どうしてるんだろう?)』

私は不意に忘れる事も無い、あの柔らかな微笑を浮かべた人を考えていた。


―――そして、放課後になり、私はクラスの代表として日誌を書いて提出をすることになっていた。私自身、日誌を書くのがとても苦手だったし、教室で書いているのも外が気になってしまい集中出来ない性格だったので、図書室へと向かって終わらせることにした。


図書室に入ると、他に本を読んでいる人も居ない雰囲気で、図書委員の係の人ももう帰宅していて不在らしかった。

「よし、日誌終わらせて早めに帰ろう…」

――早めに帰っても、一人だけど…

私は心の隅でそう思っていた。でも、頭をぶんぶんと振り、『今は日誌!!』と思い、日誌を書いていた。そして、次第に眠気に襲われてしまって、書き終える頃には少し夢の中へと入っていた。

「…こんな所で寝てたら風邪引いちゃうな。」

頭の上からする声に薄っすらと目を開けようとしていた私に、何かフワっと掛かる暖かい感じがあった。それでも、夢の中から脱出が出来ず、少しばかり眠気に襲われた。

それから、どの位眠っちゃってたのかは分からないけど、気が付くと、時計はもう既に17:30を廻っていた。私は思い切り勢いをつけて起き上がった。すると…———


「やぁ。起きたんだね。」

「…へ?

私が起きた瞬間同時に私へ声を掛ける人が居た。その人は、私が忘れた事のない微笑を浮かべて、私の前の席で足を組みながら、本を片手に微笑していた。

「あ…!!」

そう、私が目の前にしている人は紛れもないあの時の人だった。でも、その人がどうして私の目の前で、そして同じ図書室に居るのか、何故この学校に居るのかさえ分からなかった。


「その顔だと…俺の事覚えてない感じかな?」

「え…い、いえ!!お、覚えてます!!!!」

私は裏返った声でその人にそう言うと、その人は、クスクスと笑っていた。

「そっか、覚えててくれたんだ?ありがとう。」

もうその人の微笑に私は黙り込む以外の術を知らないくらいだった。

「自己紹介、してなかっただろ?」

「え…?あ!そ、そうです…ね?」

「ははは。面白い子だな君ってさ。俺は、佐々野紫音ささのしおん。この学校の3年だよ」

「え…!!えぇぇぇぇぇ?!?!?!」

「君は、確か…豊川美奈穂ちゃんだよな?」

私はその人を…佐々野先輩を知らなかったのに…。佐々野先輩は私を知っていた。しかも、同じ女子高に居るって事は…————


「あ、あの!!先輩…って、この女子高の生徒…だったんですか??」

「うん。そうだけど?」

…唖然としている私を、凄く面白がって見つめている佐々野先輩は不意に本を閉じて、スッと立ち上がった。そして、私の手の下の日誌を指差して言った。

「それ、書き終わったなら、帰ろうか?」

「へ??あ…そ、そうだった!!!」

「早く出さないと、先生に怒られるしね。行こうか。」

佐々野先輩はそう言って、私の手を優しく握って、図書室を出た。

『(何だろう…この優しさが温かい感じがしてる…)』

私はいつもと感じる事のない優しい温もりに、少し安心している気持ちになった。

そして、提出の日誌を『遅くなりました』と一言添えて先生に提出をして、職員室を後にしようとすると、職員室の側に、佐々野先輩が立っていた。


「女の子の一人歩きは物騒だから、俺が途中まで送ってあげるよ。」

「え?だ、大丈夫ですよ!!私、何もないですから!!!」

「良いから、黙って人の好意は受け止めたほうが良いと思うぜ?」

佐々野先輩にそう念を押されて、私は渋々と先輩に送ってもらう事にした。


道中、何も話さないで無言で居た私を気にしながらも、2人で帰路を辿る事は凄く嬉しかった。

多分、凄く緊張していたのと、ビックリだったからだと思う。佐々野先輩は私の憧れの人で、

しかも『男子』の様なカッコいい容姿で…。最早、『イケメン』というものに値する位だった。

「あの、佐々野先輩…?」

「ん?何だい?」

「先輩は…同じ女子高に通っていても…制服が違うんですね。」

私は何を問いかけているのか意味不明な気がした。でも、疑問点が其処ばかりではなかった。

「俺、女性制服好きじゃないんだ。パンツの方が、凄く着易くてね。」

『意外かな?』と私に言う先輩に、私は首を横に振った。

「美奈穂ちゃんはさ、俺の事『男』だって思ってたんだろ?」

「あー…いやぁ…そのぉ…」

「ははは。良いよ、俺もそういう容姿だから、分かってるし。」

「す、すみませぬ…?」

私は謝罪の言葉が意味不明な言葉しか出てこなかったが、それを可笑しく感じたのか、先輩は笑っていた。そんな先輩の笑顔に私も釣られて笑った。

「へぇー、笑顔、可愛いんじゃない?」

「え?!な、何を言ってるのでごじゃりますか…!!!!」

「何だよww『ごじゃる』って!!はははは」

「だ、だって!!!先輩が変な事言うからですよ!!!」

「俺、変な事言ったかな?可愛いって言ったんだから、変な事じゃないよ。」

「そ、それが変な事ですー!!!」

私の赤くなった顔を見て、先輩はより一層笑っていた。そんな楽しくじゃれ合っている時間はあっという間に過ぎて、私達は別々に帰る岐路が見えてきた。


「じゃあ、私、こっちなんで。」

「あぁ。俺も反対だから。気を付けて帰れよ?」

「あ、はい!」

「後…、これ。」

そう言って、先輩が私に手渡してきた「1枚のメモ」。先輩はそれを私に手渡したのを確認して、

頭をそっと撫でて『またな』と言って、帰っていった。


私は先輩の背を見送って、自分の家へと帰り、部屋に入るなりメモを見た。そのメモに記されていたのは、携帯番号とLINEのIDだった。明らかに、先輩の物だと分かった。

「先輩の…連絡先?」

そう呟きながら、先輩のメモの最後にメッセージがあるのに気付いて、それを読んだ。

『寂しい時とか何も無くても、連絡してくれて良いよ。待ってるからさ』

「先輩…。」

私はその記されたメッセージに涙が溢れてきた。「寂しい」とか「辛い」とか言った事なんか一度も無かったし、誰にも言い出せなかった。そして、そんな私の心を気付く人も居ないんだと思い込んでいた私は、物凄く嬉しくなって、初めて泣いた。

先輩は…私の心の事いつから気付いていたのか分からないけど、初めて私が『寂しい』とか『辛い』とか言っても良い相手なんだって、確認できた。先輩の手の温もりも、頭を撫でる手つきも、言葉も…何より私に笑いかけてくれた人だった。


私はもう強がらなくて良いんだろうなと思えた。それが何の感情からなのかまでは分からないけど、でも…私は先輩に居てもらう事で、元気にも素直にもなれる気がしてた。

私は…先輩に『憧れている』んだと思った。


私は早速、携帯に番号とIDを登録した。そして、緊張してしまう指に勇気を入れて、LINEを送ってみた。少ししてから、私のLINEに先輩からのメッセージが届いた。


『ありがとう。送ってもらえないかと思ってたよ。』

『そんな事無いです。本当に嬉しかったです。ありがとうございました。』

『良いよ。俺が好きでしてる事だから。嫌だったら言ってくれて良いから。』

『嫌じゃないです!!!寧ろ、感激しました。』

『そっか、それなら良かったよ。』

そんなLINEのやり取りをし始めて、30分位経ってから、お互いに次の日から、一緒に登校する約束をして、眠りについた。



かつては、認められなかった『同性愛』。これは世間の『同性愛』という形を世に受け止めてもらえる様に、又、『同性愛への批判』を改善していける様に『同性愛』をテーマにした物語を書きたいと思い、投稿しました。『同性愛』も一つの『恋愛』なのだと、『同性同士の恋愛』を認めてもらいたい居、そして、堂々とレナイ出来る世の中になって欲しいという思いを込めました。

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