天才みたいですが、それ借り物ですよ? ~とあるスキル取立人の一幕~
第四回なろうラジオ大賞参加作品第一弾!
借り物は返す。
それはどの世界だろうと当然の事柄。
というか返さんと、場合によっては貸し手からの信頼度が大幅に下がり、次からは貸してくれないどころかそれ相応の報いもあり得る。
そしてそんな借り物をした者がここに、一人。
俺は、冒険者ギルドから出てきた一人の男を追う。
相手の名前はリオ。元々ある貴族の令息だったが、六男坊なため家督を継がず、成人後に冒険者になった男。
貴族の中には道楽で冒険者になる奴もいるので、おかしくはない。
堅苦しい貴族社会で生きず、それなりの自由の下で金を得て生きるには冒険者になるしかないしな。
とにかく調べた限りじゃ、相手はそういう奴だ。
そしてそこまでの情報を、俺は数日かけて調べ上げ……ついでに言えば奴の周囲に群がる連中を見て、確信する。
「ちょいと兄さん」
相手に群がる様々な種族の美女達の後ろから、俺は声をかけた。
「いい加減、転生者としての使命を果たせ。果たす気がないなら神が授けたスキルを返せ」
俺は所謂、取立人だ。
以前は借金している奴を追ったりしてたが、何の因果か。
今は、異世界転生者や転移者相手に神が授けたスキル――天才と呼ぶべき才能を取り立てる仕事を神から頼まれている。
なぜなら現在、数多の異世界に日本人を異世界の事情――魔王の復活などの理由で呼ばにゃならん状況らしいが、その時に授けるスキルは、あくまでその異世界における問題を解決するためのモノ。
にも拘わらず、異世界に来た連中の中には、その使命――神と結んだ契約を無視し、異性を囲ったりなどの自堕落な道に走る者がいる。自分にある力が、借り物であるにも拘わらず、自分の才能だと勘違いした上で。
そしてそんな連中からスキルを取り立てるために、俺のような存在がいる。
元の世界での情報収集能力に腕っぷし、そして借りた物を返す事の大切さを理解している人間から選ばれ、わざわざ神に頼まれ異世界に行くスキル取立人が。
「お、前まさか!」
今回の標的が即座に反応。
でもってその言葉……知り合いの同類経由で俺達の事を知ってたか?
だが関係ない。
相手の口車に乗せられ周囲の美女も俺に敵意を向けるが……義はこっちにある。
数分後。
相手は俺の持つスキルでスキルを封じられ、俺の一撃で簡単に気絶した。スキル頼りの弱キャラか。ちなみに周囲の美女も気絶で済ませた。
女は殴らん主義だが仕方ない。
さて、まだまだ標的は多い。
さっさとこいつのスキルを回収して次の世界に行くか。
与えられた天才で調子に乗っている転生者・転移者さん。
やり過ぎるとこうして天才を取り立てられますよ(◞≼⓪≽◟⋌⋚⋛⋋◞≼⓪≽)