20 ありがとう
20 ありがとう
留置所での朝
出入口カウンター前
ガチャ!
ジャララ!
「・・・最後に・・・
こ、こちらが、レイ様が
携帯なされていたナイフです!」
と僕とミーアの持ち物を
かなり緊張した面持ちで
衛兵のオジサンが返してくれたが
僕は目の下に真っ黒なクマを作り
(あ~・・・眠い~・・・なんで朝から
領地所で豚を解体なんてするんだよ!)
と朝早くから豚の悲鳴で寝れなくて
起こされたのをブツブツ言いながら
カウンターの上のヒヨコと
僕の魔法ライトの真似のつもりなのか
今朝から
ピカッ・・・ピカッ・・・と
青く光るスライムを横目に
僕は魔法でフワフワと浮いていた。
カウンターの向こうのオジサンも
後ろの衛兵のお兄さんたちも
カウンターの上で
信号機のように様々な色に光るスライムに、
まるでアスリートのように
屈伸運動する頭の上に赤い角が生えたヒヨコ
そして、魔法で浮く1歳児を見て
かなり驚きつつも、直立して
ジッと見ているだけだった。
だが、僕はそれより、目の前のペットが
(・・・こいつら、魔力注ぎ過ぎたかな?・・・)
今朝、あまりに早くに起こされ
暇だったので日課の魔力消費を
この、まだ寝ていたスライムとヒヨコに
注ぎまくったらこうなったのだ!
カチャ!カチャ!
ミーアが浮いてる僕の腰に
返して貰ったナイフの
ベルトを付けて貰っている間
ふとッオジサンの方に目をやると
(・・・この人・・・昨日の人だ・・・)
と広場での事を思い出していた。
昨日 広場で
僕が白金貨を持って現れた途端
あの変な闇金が僕から白金貨を引ったくり
僕に魔法契約書を渡してきた・・・
その瞬間!
ビカ――――――!
と目を開けていられない位の光が
その契約書とその場にいた
元獣人農民奴隷の人たちの奴隷紋から
放たれ、
光が収まると同時にギルド長が
「き、貴様・・・レイ様に何をする!?」
と闇金に飛び掛かるが
「うるせー!」
と闇金がギルド長の顔面に拳を
ドカッ!
「ぐあッ!」
とそのままギルド長はレンガの床に
倒れ込んだ!
「はははッ!俺様の商売の邪魔するから
そういう目に会うんだよ!
それにしても、どこのボンボンか知らねえが
筋肉信仰の獣人なんかに子供の世話させるとは
どこのバカだよ!ははははははッ!
しかし、頭が悪い獣人は金になるぜ!
ははははははははッ!」
と闇金が地面に倒れたギルド長を
他所にミーアと僕を見て高笑いしていると
「みんな!退いてくれ!退いてくれ!」
とこの衛兵のオジサンが一番に来て
闇金を見るなり
「・・・ま、また、貴様か!捕らえろ!」
「「「「ハッ!!!」」」」」
と今度は騒ぎを聞きつけた
衛兵団の人たちが
現場に駆け付けてきた。
「なんだよ!コイツが悪いんだって!
へへへッ!」
と闇金がなぜか気持ち悪くニタニタとして
連れ去られていく姿を見て
(うわ~・・・なんか凄い事になってきたぞ!)
と思っていると
ガシャーン!
「きゃー!」
「う、うわー!」
と広場の反対から悲鳴が聞こえてきた。
「くそッ!また、やられたぞ!
闇ギルドの連中め~!
こっちの騒ぎは囮だったか!
おい!こっちの罪人と関係者はとりあえず、
全員、留置所に入れておけ!行くぞ!」
「「「「「おおおおぉ~!!!!」」」」」
と部下らしい人たちと別の騒ぎの方に
突っ込んで行ったが
(・・・んッ?全員?・・・)
カチャ!カチャ!
「着けましたよ!」
とミーアがナイフを付けてくれたので
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
先程から無言のままの冷や汗を垂らした
衛兵のオジサンを
ジーと見ていたが
(ちょっと可哀そうかな?)
と思いミーアの耳元で
コショ・・・コショ・・・
「えッ?私がそれを聞くんですか?」
ヒソヒソ!
「・・・はい・・・はい・・・畏まりました。」
と話すと
ミーアが少しカウンターに近づき
オジサンに向かって小声で
「・・・レイ様があなたに聞きたい事が
あるそうなので人払いを・・・」
「・・・え・・・ひ、人払い?・・・
あ~いや、人払いだ!下がれ!全員下がれ!」
と後ろにいた若い衛兵さんたちを
全員下がらせた。
するとミーアが
「まず、レイ様は今回の事は気にしてないそうです。
むしろ、あなたは実に、迅速にそして、的確に
対処してくれて感謝していると・・・」
「・・・あ、ありがとうございます・・・」
と戸惑いながらも僕を見て言うオジサンだったが
続けて
「・・・・・・・・・・・・・・
それは、それとして、一つ質問が・・・」
「な、なんでしょうか?」
「少し・・・闇ギルドに・・・
ついて話して下さい・・・」
「や、闇ギルド・・・ですか・・・」
とオジサンは最初はビックリしてはいたが
戸惑いながらも
最近、闇ギルドが活発になってきている事を
坦々(たんたん)と話してくれた。
僕はバレるとイヤなので、ミーアに頼み
「・・・なるほど・・・
楽市が当初の予定より
かなりのスピードで流行り始めた頃
昨日のような事が起こり始めたと・・・」
「はい・・・ご領主様は温和な方ですので
領内に住む者には等しく、お優しいですから
あまり、厳しくはできなかったので・・・
密かに潜入している部下に調べさせたのです。
すると、どうやら他の領から
羽振りの良くなった領民から
巻き上げようと闇ギルドの連中が
次から次へと来ているようです。
・・・ですが、これからは・・・」
とオジサンは色々と
自分の意見や適格な情報を話してくれ
僕は浮いたまま再度、
ヒソヒソとミーアの耳元で
「・・・はい・・・わかりました・・・
場所は?」
「ば、場所?・・・ひ、貧困街です・・・」
「貧困街の?」
「最奥です・・・あの辺りは・・・
貧困街の住人でさえ、近づけないので・・・」
とオジサンは下を向いた。
それを聞くとミーアは
ゴソゴソと金貨の袋から
ジャララ!
と数枚カウンターに置き
「・・・この事は人には言ってはなりません!
それでは・・・」
と浮いてる僕を抱っこして
外へと出て行こうとすると
オジサンが後ろから
「あ、あの・・・今回は・・・
大変申し訳ありませんでした・・・
部下は私の命令を聞いただけなのです。
ば、罰するなら私を・・・
そ、それと、お気が済むかは
分かりませんが
一応、ご報告までに申し上げますと
・・・レイ様をハメたあの闇金は
今朝方、手足を縛ったまま
餓えた犬に生きたまま、食わせる拷問の末、
豚のように悲鳴をあげながら、死にました!」
それを聞いたミーアは
僕を抱っこしたまま振り返り
満面の美しい笑みで
「・・・ありがとう・・・」
20話終わり




