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聖帝記~聖なる御子の邪神討滅記~  作者: めるりん
第3章 ペンテシア戦役
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第71話 グラットセン攻城戦 奇襲部隊殲滅戦

 アフェット考案の作戦を元にグラットセンに向かった連合軍は作戦通りの位置に布陣しました。正門を担当する獣王は副官のドライセン将軍と戦いに関して会話をしていました。


「さてと聖下の策は当たるかな」

「見事な策だと思いますが」

「あくまで敵が伏兵をしているという考えの元にした策だからな、敵が伏兵していなければ無駄な策だ」

「その場合は普通に城攻めすればいいだけですし問題ないのでは?」

「聖下の策が外れるということが問題なのだ、聖下の威信が低下するのは避けたい」

「確かに今後の邪神戦争を考えると聖下の威信が下がるのは避けたいですね」

「それもあるが我が国から久しぶりに枢機卿を出せたのは聖下の肝いりだからな。聖下の威信の低下は我が国の国威の低下にも繋がりかねん」

「なるほど、政治的にも避けたいと」

「まあその辺は我ら以上にノーフェラント公爵が胃を痛めてそうだがな」

「確かにロンデリアは聖下との繋がりが深いだけにそうでしょうね」

「聖下の威信を抜きにしても城外で戦える方が楽だから策が成功してほしいものだ」



 グラットセンを囲む連合軍を城内から眺めている宰相代理モルゲン侯爵とピョートル公爵は意見を交わしていました。


「想定通りの布陣ですね。これは作戦が上手くいきそうですね」

「しかし、獣王軍が城門から離れすぎているのではないか?」

「確かにやや遠いですね。兵糧攻めをするつもりだから城から距離を取っているのではないですか?」

「ふむ。確かに他の城門も結構離れているか、問題はあれだけ離れられると場内から奇襲して獣王軍を混乱させてジューコフ侯爵の帰還を助ける計画だったが、ジューコフ侯爵が獣王軍を突破して城内に戻ってこれるかが難しくなるな」

「しかし夜に挟み撃ちにすれば、いくら獣王軍とはいっても混乱するのではないでしょうか」

「そうだな、もう賽は投げられたのだ後はいい出目が出るのを期待するしかないか」

「アフェットかメロウを捕らえた後は私にお任せを」

「うむ。外交を有利に進める為の条件を整えるのが儂の仕事だな」


 同じく連合軍の布陣を見ていたジューコフ侯爵はモルゲン侯爵とピョートル公爵と違い俯瞰で布陣を見ることが出来ない為連合軍が想定通りの布陣をしているように見えていました。


「想定通りの布陣だな、これは奇襲が上手くいきそうだ。馬を鳴かせたりするなよ」

「それでは夜を待って攻撃ということでよろしいですか」

「布陣した初日に奇襲を受けるとは思うまい、ましてや聖国軍は後方に陣取っているから尚更警戒してはいまい」

「暗闇でアフェットやメロウの区別が出来るでしょうか」

「一番守られていて神具を着ているのがアフェットとメロウだ、まあ目立つだろうよ」

「崩剣のラッシュが護衛に付いているかもしれませんね」

「確かにその通りだな、ラッシュなら顔を知っている者も多いからラッシュを目標にするとしよう」

「危険では?」

「奇襲を受ければラッシュとはいえ混乱するだろうよ」


 戦況がもう少し有利な状況であればピョートル公爵やジューコフ侯爵も策が見破られている可能性を考えていたかもしれませんが追い込まれていたこともあり冷静さを失っていました。


 布陣したのが夕方近くということもあり、その日は特に戦いらしい戦いは無く日没を迎えました。


「来るとしたら今夜でしょうね」

「何でそう思うのですか?」

「いつまでも伏兵を隠せる訳がない。と相手も思うのではないですか?」

「なるほど、じゃあ奇襲に備えさせないといけませんね」

「あくまでも気付いていない素振りをお願いします」

「畏まりました」

「それでは私達は右翼の中程に移動します」

「はい、フェイ殿、ラッシュ殿、オラヒリス殿。聖下をお願いいたします」

「安心していいこのフェイ・ローズが命に代えても二人を守ってみせるわ」

「危うくなったらアフェットとメロウを逃がすぜ」

「聖下達の命はこのオラヒリスが守ります」

「では、移動しますね」

「では獣王軍にも今夜にも夜襲が来る可能性が高いことを伝えておきます」


 私達は大将旛だけを中央に残して右翼の中ほどに移動しました。




 そして夜になり予想通りにジューコフ侯爵が奇襲を仕掛けてきました。


「よし今だ中央を開けて中央突破させろ!」

「左翼軍も中央を開けるんだ!」


 聖国軍が意図的に中央突破をさせたことによりジューコフ侯爵が率いるペンテシア軍があっさりと中央突破に成功しました。


「閣下中央突破に成功しました」

「そうか、アフェットとメロウはいたか?」

「アフェットもメロウも護衛をしていると思われるラッシュもいません」

「何だと、しまったぞ」

「閣下?」

「いくら奇襲が成功したとはいえ簡単に中央突破できすぎだ」

「どういうことですか」

「奇襲が読まれていたということだ、皆止まれ! 止まれ!」

「先頭集団が待ち構えていた獣王軍とぶつかっています」

「このままだと包囲されるぞ、突破した穴から後退するのだ」

「伝令、後方に突破されたはずの聖国軍が布陣しており攻撃を受けております」

「これは壊滅するぞ」

「閣下指示を!」




「上手くいったようですね」

「ああ、分離した聖国軍がペンテシア軍の背後に回って獣王国軍と共に包囲を成功させるか」

「聖下の軍才は素晴らしいですね」

「いえいえ、実際の運用は獣王とダグラス将軍とノーフェラント公爵ですから」

「後は城内からの援軍が来るかどうかだな」

「城外のペンテシア軍は数少ない正規軍ですからね。見捨てるというわけにはいかないでしょう」

「またしても予想的中だな城門が開いたぞ」

「では城門を攻撃しましょう」

「よし、魔導師を敵に回している恐怖を与えてやろうではないか」



 タイミングを合わせて獣王軍を攻撃しようとしていたピュートル公爵はジューコフ侯爵の奇襲が見破られ包囲されているのを見てすぐに救援の為に出陣しました。


「獣王軍を攻撃しジューコフ侯爵を救出するぞ」

「ピョートル閣下お下がりを!」


 その瞬間にアフェットとメロウとミリーによる遠距離魔術が炸裂し城門付近は吹き飛ばされました。


「閣下、閣下。ご無事ですか」

「なんとかな」

「閣下右腕が」

「今の攻撃で右腕の被害だけで済んだのは僥倖といえるか」

「それより早く城内にお戻りを」

「援軍に出る瞬間を待っていたのか、やむを得ん生存者を連れて城内に撤退するぞ」


 援軍が撤退した状況はジューコフ侯爵からも見えていました。


「援軍も見込めないか」

「ジューコフ閣下どうなさりますか」

「今の魔術は恐らくアフェットとメロウのものだろう。今の魔術が発動した地点にアフェット達がいる。そこに突撃するぞ」

「わかりました。全軍突撃だ!」



「やはりこちらに向かってきましたね」

「しかし残りは2000人もいないように見えるが」

「魔防陣形も無しに魔導師がいる軍に突撃する無意味さをしれ!」


 アフェットとメロウとミリーの魔術攻撃により、残っている兵力も数十名になりましたが突撃を続けてきます。

 私達の周囲も臨戦態勢に移り私もパシフィスを抜き放ちます。


 副官も戦死し、自身も馬も失い満身創痍のジューコフ侯爵は自身の最後を飾るのに相応しい相手を求めました。


「我が名はペンテシア王国がジューコフ侯爵だ。我が最後を飾るに相応しき者に相手を希望する!」


「我が名は妖精姫フェイ・ローズ! 敵ながらここまで進撃したことに答えて相手をしよう」

「妖精姫が相手ならば不足はなし、我が命を掛けた一撃を食らうが良い!」


 最後の力を振り絞って繰り出されたジューコフ侯爵の槍の一撃をフェイは槍で受け流し返す刃でジューコフ侯爵の首を跳ね飛ばしました。


「敵ながら見事な一撃よ。妖精姫フェイ・ローズがペンテシア王国ジューコフ侯爵を討ち取った!」


 その一言で生き残っていた十数名も戦意を喪失して武器を捨て降伏しました。


 これによりグラットセン場外戦は連合軍の勝利に終わり、ペンテシア軍は正規兵のほとんどを失い残りは民兵が中心となってしまいました。その民兵達も魔術攻撃を恐れて士気が大きく下がってしまいました。



 翌日兵を休めつつ兵糧攻めを行っていた為戦況は大きく動きませんでした。そんな中ダヌスティカ守備隊から連絡がありました。


「死後かなりの日数が経つ死体が見つかったと」

「はい。服装は立派で法王や枢機卿と見間違うような神官のような服装でした」

「法王や枢機卿に被害が出ているとは聞いていませんが」

「私達もそのような情報が無かったので捕らえていた邪神教徒に確認をさせた所、邪神教の大主教だとのことです」

「ニムギスはいましたか?」

「いえ、大主教の死体のみでした」

「恐らく逃走するのに大主教が邪魔になったのではないか」

「私達もそう考えております」

「邪神教は壊滅させれそうですが闇に潜ったニムギスを捕えるのは難しくなったみたいですね。報告していただきありがとうございます」

「それでは、失礼します」

「問題はニムギスの居場所ですね」

「聖都から離れれば離れるほど警戒は薄れている可能性はあるな」

「終戦したらニムギス捜索を更に本格的にしてもらうようにしましょう」

「そうだな」




 その頃ポリシア公国の西のバタリー王国の更に西に位置するウラジー共和国の郊外にニムギスは潜んでいた。


「そろそろペンテシアが終わる頃か、聖下は厄介すぎるわね。それよりも私の置き土産を喜んでくれるか楽しみだわ。直接ペンテシア王に手を掛けるのが躊躇いそうな聖下達が喜んで戦えるようにしてあげたんだから感謝してほしいわね。ただその瞬間を見れないのが残念だわ」


 ペンテシア戦役の終わりが見えそうな中、帝国では内部が不穏な状況になっており、それが周辺国に波及しそうになっていました。

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