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聖帝記~聖なる御子の邪神討滅記~  作者: めるりん
第1章 神託の御子
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第5話 聖剣ミスティルテイン

「ローザさん、今ローザさんに支援魔術を使ったら私にターゲットが来てしまいますか?」

「私だけなら大丈夫だと思うがキングと対峙している4人以外に支援魔術を使うつもりか?」

「一人にだけ使える魔術なのでローザさんのみになります」

「あの邪気を突破することが出来るの?」

「村だと使う機会が無かったので実質初めて使うのですが」

「それに希望を託すのは少し躊躇するわね」

「なんの術を使うつもりなのですか」

「マリーアか、確かにマリーアの意見も聞けば確実だな」

「ホーリー・ウェポンです」

「ホーリー・ウェポン? 聞いたとことがありませんが」

「マリーアもしらない術なの」

「過分にして聞いたことがありませんね」

「それをアフェットが使えるのか、確かに現状を大きく動かせるようなら頼みたいが」

「ただ現在使っている剣が少し変わってしまうと思いますがよろしいですか」

「使い勝手が大きく変わらないなら構わないわ」

「わかりました。聖なる力を司りし女神イシュタルよ、我が魔力を代価とし邪なる者を打ち払う力をその剣に宿したまえ!『ホリー・ウェポン』」


 私の呪文とともにローザさんの構える剣に聖なる力が宿りうっすらと光始めた


「アフェット。顔色悪いけど大丈夫?」

「ちょっと魔力を使いすぎただけです。問題はありません」

「ってどんだけ魔力込めたのよ何か凄い聖属性宿ってるわよ」

「失敗するよりはと思って頑張りすぎました」


「この剣なら確かにあの邪気も突破できそうね。早速斬ってみるわ!」


 ローザさんが斬りかかった瞬間一撃でゴブリンキングを斬り捨ててしまいました。


「えぇぇぇぇ」

「俺たちの苦労はなんだったんだ」

「私の盾ボコボコ」

「槍の穂先ボロボロだよ」


 これまでゴブリンキングを押さえ付けていた4人からは何故か不満のような声が上がっていました


「なにこの斬れ味。なんか怖いんだけど、この魔術の効果はいつまで持つの?」

「え?」

「アフェット?」

「永続ですけど」

「えええええ、これってもしかして聖剣ってことよね」

「ええ。聖剣を作る魔術ですので」

「これって人数分頼むとかいうわけにはいかないのよね」

「生涯で一度しか使えない術なので」

「そ、そんな術使ってしまってよかったの!」

「生涯と言っても死んでしまっては使えませんし」

「それもそうだけどね。よし切り替えてゴブリンキングの調査と周辺の調査。後ははぐれゴブリンの討伐よ。アフェットは気づくこともあるかもしれないからゴブリンキングの調査よ」

「わかりました、しかし魔物があんな邪気を放つなんて」

「昔読んだ書物で力を蓄えたキング級の魔物が魔王に進化するとか見た覚えあるわね」

「つまりは、このゴブリンキングは魔王へと進化していたということでしょうか」

「そうみたいね」

「しかし魔王化したとはいえ魔物が邪気を放つのは聞いたことないわね」

「邪気を放つのは悪魔だけと聞いていますが」

「私もその認識ねつまりは普通の魔王ではなく悪魔が関わっている可能性がある?」


「いいよ、いいよ。その話はいいねー」

「メロウどこにいたのですか」

「新たな英雄譚が生まれそうだったから安全な場所からじっくり見てたわ」

「英雄譚?」

「神の祝福を受けし御子から聖剣を授けられ、目覚めたばかりの魔王を打ち取るって話」

「大分話が盛られているみたいですが」

「まあ英雄譚なんてそんなもんよ」

「では私は授ける側の英雄ということですか」

「私はもらう側ね」

「ローザさん嫌じゃないのですか」

「冒険者にとって名声は武器よ、いささか大げさな話ではあるけど、聞く者も話半分で聞くから問題ないわ。それよりゴブリンキングを調べるとしましょうか」


 授与する側ですが英雄譚に紛れこんでしまいそうです。取り敢えずは戦闘が終わってなによりです。


 しかし私達が調べる為に向っている、ゴブリンキングからは未だに邪気を放っているようで油断はできません。


 ゴブリンキングは綺麗に袈裟懸けに両断されていました。しかし未だにゴブリンキングの体からは邪気が立ち上っていました


「流石にここまで近づけば私でもわかるが凄まじい邪気だな」

「ローザさん、ゴブリンキングの魔石は体の中央ですか?」

「その通りだが何か気づいたことがあるか?」

「両断された魔石が残っていない側からは邪気が出ていませんね」

「つまりは魔石に問題があるということか」

「浄化しますか?」

「それだと原因が判明しない可能性があるな。」

「オーラコートを使えば邪気をある程度無視して作業できますが」

「そんな便利な術があるなら頼みたいな。邪気を発しているだろう魔石を持ち運ぶ良い考えはあるか?」

「聖布を使えば運べそうですが」

「聖布?」

「邪気を退ける効果を持っています」

「それはすぐ作れるのか?」

「聖水に数日漬け込んでから乾かすという作業を数回繰り返すと作れます」

「今すぐ使えそうなのはないか?」

「家に戻れば何枚かあります」

「わかった、一応キャスを護衛に付けるからオーラコートを掛けた後急いで取りに行ってくれ」

「わかりました。聖なる力を司りし女神イシュタルよ、我が魔力を代価をもって邪なる気からお守り下さい『オーラコート』」


 私の詠唱が終わると共にローザさん達が清浄なオーラを纏いました。


「じゃあ。アフェット行くわよ」

「はい、キャスさんよろしくお願いします。」


 キャスさんとメロウを連れて駆けること2時間半、ようやく村に到着しました。


「アフェット、キャスさん。良く戻った」

「村長。心配をお掛けしました」

「それは構わん。結果はどうなった?」

「ゴブリンキングを始め上位種は討伐しました」

「これで枕を高くして眠れそうだな」

「もー、村長ったら、私たちはまだやることがあるの!」

「確かに後始末もあるだろうしな、わしが足止めするわけにもいかんな」

「それでは一旦失礼いたします」


「アフェット、なんだか家に帰るのも久しぶりな気分ね」

「確かにそうですね。えっと聖布は確かここにしまっていたはずです」

「それが聖布か?」

「パット見は普通の布なのですが魔術耐性もあるんですよ」

「ほう、じゃあ軽い防具は私も欲しい所だし詳しい話は移動しながらするとしよう」

「えー、もう行くのー?私は疲れちゃったよー」

「お前はアフェットの肩に乗ってただけだろ」

「それでは、キャスさん行きましょう」

「ちょっと、あたしの抗議無視しないでよ!」


 聖布を無事確保出来た私達は再びゴブリンキングがいた場所に向かっています。まだ夜には早いですが森の中はすでにかなり暗いです。


 キャスさんを付けてくれたのはこうなるのが分かっていたからなのでしょうね。


 足元が暗くなってきたこともあり再びゴブリンキングとの戦場に到着するまで3時間も掛かってしまいました。

 オーラコートのかいもあり解体はほぼ終わっているようです。


「戻りました。」

「ああ、よく戻ったわね。足元が暗くて大変だったでしょう」

「私自身の未熟を感じます」

「気にすることはないわ、年齢を考慮すれば十分走れてるわよ。それより魔石を見て」

「これは凄まじい邪気ですね」

「あなたの言っていた聖布でどうにかなるかしら」

「作り置きを全て持ってきたので多分大丈夫だと思います。直接触るのは嫌な予感がしますので。聖布を広げるのでその上に聖剣で魔石を転がしてください。」

「せっかくの聖剣をこんな使い方していいのかしら」

「使える物は聖遺物でも使えと母からは教わりました」

「流石に聖遺物はいかんだろ」

「まあそれは冗談として見てるだけでも精神にくるのでさっさとくるんでしまいましょう」


 1枚でくるんでも邪気が漏れてたため結局持ってきた聖布全てを使い魔石を包むことにしました。

 それも終わると時間がいよいよ夜になり、この場で夜を明かすことにしました。


「そういえば、アルニスさんもアランさんもローザさんも皆さんお知り合いだったのですね」

「アランとローザはダースティアでも有数のパーティーだからな、それに手数が足りない時に俺みたいなソロを一時的にパーティーに入れたりするのさ」

「パーティーの上限人数ってのは決まりはないが多くても8人ってとこが普通だ。そうなると手数が足りない時にアルニスのような優秀なソロ冒険者がいると助かる」

「うちは女性のみって縛りをつけてるからね、スポット参戦のソロ冒険者はたまに入れたりするわ」

「ソロ冒険者ですか」

「アフェットお前の今の実力でソロ冒険者になりたいとか抜かすなよ」

「それにメロウもいるからソロじゃないだろう」

「え、妖精族もギルドは登録ができるのですか?」

「妖精族も人種認定されてるし、確かSランクにも妖精族の人がいたな」

「Sランクって10名もいないはずでは」

「まあ取り合えずアフェットは聖以外の属性術も覚えることと、最低限の近接戦闘力を身に着けることだ」

「そうですね。メロウがいなかったらゴブリンキングに確実に殺されていましたし」

「ねえねえ、そんなことより重要なことがあると思うのよ!」

「割と重要な話をしていたのですがメロウは何が言いたいのですか?」

「その聖剣よ聖剣! 聖剣には名を付けないと」

「確かに重要だな」

「言われてみると重要だ」

「ではアフェット、君が名前を付けてくれ」

「ローザさんの武器なのに私が名前を付けていいのでしょうか」

「アフェット、君は生涯に一度しか使えない魔術を私の剣に使ったのだ命名する権利は君のものだろう」

「わかりました。考えます」


 考え始めると悩むまでも無く自然と頭に名前が浮かんできました。


「ローザさん、その聖剣の名前はミスティルテインです。聖剣ミスティルテイン」

「そうか、私の聖剣はミスティルテインか。何か由来があるのかな」

「古代ノルド族の言葉でヤドリギをさします」

「[六華の絆]のリーダーである私が彼女たちのヤドリギになるということだな、良いな気に入った」

「ああもう、ローザのおバカ!パーティーどころか国を守るくらい言わないと英雄譚としては微妙になっちゃうじゃない!」

「と言われても大言壮語は嫌いだしね。だが私はこのミスティルテインと共にメロウが言った存在になれるよう努力するとするわ」

「いいわね、いいわね。冒険者は英雄を目指してこそよ!」


 メロウがはしゃぐ声聞きながら見る夜空は数日前とは別物のようです。


 最初の夜の見張りは私とメロウとアルニスさんでした。


「一仕事やり遂げたって感じだな」

「すみません大した役にもたってないくせに」

「聖剣を作るなんて大仕事をしたじゃないか、それにいい顔してたから話しかけたくもなる。絶望の夜を乗り越えたんだ一仕事終えたって気分にもなるさ」

「アルニスさんが間に合わなかったらもっと前に壊滅してたんでしょうね。」

「そうかもしれないな、しかし運命ってのはどこに転ぶかわからないもんだ。俺が間に合わなくても偶然近くにいたSランクが助けてくれるかもしれんしな」

「流石にそれは運頼みすぎますよね、運に翻弄されなくなるためには強くならなければいけませんね」

「それについてなんだが、後始末が終わったらダースティアに来ないか?」


 満点に輝く夜空の下、私は今後の運命を左右することになる言葉を言われてしまいました。


 運命の歯車というのが本当にあるなら実際に音を伴ってカチリとはまった気がしました。

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