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聖帝記~聖なる御子の邪神討滅記~  作者: めるりん
第1章 神託の御子
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第2話 戦闘中

「こちらの姿が一方的に見えてしまうのは不利になるが、やむを得ないな松明に火を灯せ」


 やはり、人間というのは太陽と共に生きる生物なのでしょう。松明の灯りだけではどうにも頼りなく思えます。


「村長私とメロウは夜目が利きますのでお役に立ててください」

「そういえばアフェットとメロウは夜目が利いたな。よし、敵が近づいてきたら知らせてくれ」

「わかりました、メロウ頑張りましょう」

「あたしは実はすでに眠かったりして」

「ふふ。悪いですが頑張ってくださいね」


 暗くなってもゴブリン共はすぐには総攻撃はしてきませんでした。


「恐らくこちらの集中力が切れるのを待っているのだ」

「上位種とはそこまで考えれるのですか」

「ゴブリンは多少鍛錬を積んだ一般人でも倒せる程度の魔物だ。だが上位種というのは熟練の冒険者すらやられかねないほどなのだ。同じ魔物ではないのだ」

「アフェット、村長。ゴブリンが動いたよ!」

「メロウ、動いたゴブリンはなんだ?」

「向かってきてるのは普通のゴブリンだけかな」

「まずい。皆盾を掲げろ!矢が飛んでくるぞ!」

「普通のゴブリンの突撃に合わせて味方ごと撃つということですか」

「上位種にとって普通のゴブリンはただの囮だ」

 

 その会話の直後に矢の雨が降り注いだ。


「メロウ! 私の盾に隠れて下さい!」

「ひゃー、怖い怖い。それより村長ゴブリンが門に張り付いたよ!」

「ゴブリンが矢をそれほど持っているとも思えんが、この状況だと門の守りに入れん」

「ゴブリンアーチャーの数が多すぎますね、上位種はキング級なんでしょうか」

「その可能性も考慮する必要が出てきたな」

「村人を逃がしますか?」

「キング相手ならそれも考慮しなければいけないが、そもそも逃がせるか難しいな」

「矢が止んだよ村長!」

「罠の可能性もある様子を伺うのだ!」


「つってもこのままじゃ門が持たないぜ村長!」「一度討って出る必要はあるよ、村長」「よし門前のゴブリンを片付けるぜ!」


 そう言って何人かが塀を超えようとした途端に再びの一斉射撃がきてしまいました


「やばいやられた!」「いてえよクソが!」「誰か手を貸してくれえええ」


 レネット村防衛戦の局面は悪い方に大きく動いてしまいました。


 時間はまだまだゴブリン達に優位に働いています。


「大盾持ちと力があるものは負傷者を下げろ」


 矢の雨が降り注ぐ中、大盾持ちと力自慢の手によって負傷した3名が私のところに連れてこられました。


「アフェット後は頼んだ、アフェットが治療に集中できるよう1人護衛に付け」

「聖なる力を司りし女神イシュタルよ、我が魔力を代価をもって傷を受けし者たちを救いたまえ!『エリア・ヒール』」


「よっしゃ、これで戦えるぜ!」「迂闊すぎた、すまんなアフェット」「感謝するぜ!」


 負傷者の治療は問題なく行えましたが、戦況が好転したとは言えません。門に対する攻撃も激しくなりこのままでは門の破壊も間もなくでしょう。


「門を破壊されることを前提に考えるべきか」


【アローレイン】


 その言葉とともにゴブリン達に無数の矢が降り注ぎました。


「戦闘中だから手短にいう。俺はアルムの森のアルニス。この村からの早馬に偶然出会い救援にきた冒険者だ」

「わしは村長のドルだ、かなり危険なところだった。感謝する」

「辺境防衛は冒険者の仕事でもある気にする必要はない。それより敵の上位種はなんだ?」

「まだ確定はしていないのだが、敵の賢さを考えるとキング級の可能性もあり得ると思っている」

「キングかゴブリンとはいえキングは大物だな。ところでそんな少女まで戦えるのか?」

「少女・・・? ああ、違う違う少年だ。彼は優れたヒーラーなのだよ」

「少年だったのか、それはすまないことを言った。出来るのは回復だけなのか?」

「学ぶ機会もなく、聖属性なら回復以外も使えます」

「よし、なら俺に出来る限りの付与魔術を頼む。一気に雑魚を蹴散らす」

「わかりました。聖なる力を司りし女神イシュタルよ、我が魔力を代価とし彼の者に力を与えたまえ『エンチャント・ウェポン』」

「この上昇率は一体なんなんだ。まあいいとりあえず雑魚を掃討してしまうぜ【シャイニングアロー】」


 思わず目を瞑ってしまいそうな眩い光と共に無数の矢がゴブリンの群れを襲いました。眩い光が収まった後には立っているゴブリンは1匹もいなくなっていました。


「アーチャーも一気に倒したのか?」

「とりあえず目についたのは全部倒したはずだ」

「現役はやはり凄まじいものだな」

「たまたま得意な戦場だったというだけだ。それにエンチェントが凄まじかったからな。それよりも上位種が見当たらないが」

「態勢を立て直しに引いたのか」

「取り合えず夜の森を追うのは危険だな」

「順番に休憩を取り朝を待つとしよう」

「領都からの援軍が到着すれば俺たちの勝ちだ。迂闊に動かない方がいいだろう」


 こうして強力な援軍を得ることが出来た私達は無事に夜を越せることになりました。


 しかし森にはゴブリンの大群が未だに目をひからせていることも事実であり、解決にはまだ時間がかかりそうです。


「取り合えずアフェットは俺の近くにいてくれ。エンチェントが必要な時に言うから頼む」

「はい、わかりましたアルニスさん」


 それから数日経ちましたが散発的なゴブリンの攻撃はアルニスさんに一方的にやられて村には被害がでませんでした。

 ちなみにアルニスさんは時属性のインベントリを使うことが出来るので矢が尽きることがなさそうです。待機時間にアルニスさんにお願いしたところ教えていただくことが出来私とメロウもインベントリを習得できました。


「上位種は頭がいいと思っていたのですが、何を考えているのでしょう」

「上位種は俺を警戒しているのさ、俺の射程距離・攻撃間隔・攻撃力などを雑魚ゴブリンを犠牲に調べている」

「では迂闊に手を出さない方がいいのでしょうか?」

「そんなわけにもいかないからな、だからこそアフェットにエンチェントの強さをコントロールしてもらい向こうにわかりにくいようにしてるのさ」

「そんな狙いがあったのですね。頭脳戦ということですか」

「アルニスが一気に倒しちゃうのはダメなの?」

「キングの居場所がわかるならそれでもいいがな。それに硬直状態にするのがこちらの目的だからな。それに付き合ってしまってる時点で向こうの負けさ」

「それはなんで。あ、領都からの援軍」

「そういうことだ、もう一日とせず第一陣が到着する。そうすればひとまずは仕事完了だな」

「ひとまずですか?」

「その後は山狩りをしてキングを潰さないといけないからな。アフェットは俺についてこい、森狩りのイロハをついでに教えてやる」

「アルニスさんにはお世話になりっぱなしで申し訳ないです。」

「今後村を出るのだろ、教会に行くにしろ冒険者からの要請で同行することはあるからな。覚えておいて損はないさ、それより気を張れよ。向こうだってそろそろ時間的に危ういとわかっているはずだ」

「強引にくるってことですか?」

「今夜が山になるな」


 アルニスさんの言葉の後から強い風が吹き始めました。まるでアルニスさんの矢を防ぐように


 今夜の防衛が少し不安になります。


「む、メロウ半鐘を鳴らさせろ、凄まじい数のゴブリンだアフェットはエンチャントを全力でしてくれ」

「了解すぐいってくるわ」

「聖なる力を司る神イシュタルよ、我が魔力を糧に彼の者に力を与えたまえ『エンチャント・ウェポン』」

「アフェットのエンチャントは流石だな、ゴブリン共よ吹き飛べ【アローレイン】」


 アルニスさんの言葉と共に空高くに放たれた矢が雨の如くゴブリンを襲います

 

 これらの【スキル】を使いこなすのが一流の冒険者です。


「もうすぐ夜になるし、数が多すぎるな全力のアローレインで1割も減らせないとは」

「どう動きますか?」

「俺は敵の数をこのまま削る。お前はヒーラーとしての仕事もあるから一旦安全圏にいけ」

「私も前線で戦いたいですが・・・」

「気持ちはわかるがスキルもないんじゃ許可できんな。俺を信じて一旦下がれ」

「わかりました」


「アフェット戻ったか、お前は回復を任せるぞ。お前の回復があるから前線の連中は安心して戦えるということを知っておけ」

「私はそんなに戦いたそうにしてましたか」

「あたしからは自分を戦士と勘違いしてる神官に見えてたわ」

「じゃあ、言ってくださいメロウ」

「あたしが言っても効かなそうだったしねー」

「ふう、気を付けないといけませんね」


 アフェットを送りだした前線ではすでに戦闘が始まっていました。初日の戦いで門がかなりのダメージを受けてはいましたが、それでも最果ての村を守る門は伊達ではなかったのです

 初日との大きな違いは敵のアーチャーをアルニスさんが確実に潰してくれていることから比較的安全に戦えてるということでしょう。


「流石に矢がかなり減ってきたな。最後まで持てばいいがな」

「アルニス。大した鏃は使っていないが、俺たちの矢も使ってくれ」

「正直助かるがいいのか?」

「辺境に生きる者は近接戦闘もこなせるもんだ。とりあえず門に殺到してるゴブリン共を掃討する」

「じゃあ、アーチャーと接近するゴブリンをターゲットにしておくぞ」

「頼んだ。それじゃあお互い生き残るぞ」


 アルニスと村の元冒険者がグーにした手を合わせているのを見て、まるで英雄譚の一幕のように見えました。私もこのように素晴らしい光景の一幕に立ち会うためにも負傷者の治療に全力をつくします。


「ああいうのいいわよねー」

「うん、私もああなれるように頑張ります」

「まあさっきからピカピカ光ってるあんたもいい勝負だけどね」

「聖属性は使うと何か光ってしまうのです」


「負傷者だ通せ通せ」「アフェット右腕の欠損だがいけるか」


「大丈夫です。死んでさえなければ回復しちゃいますよ!」

「あんたも大概化物よねー」


 夜が近づく中、負傷者も増え始めて不安感が増してきています。


 対ゴブリン戦は佳境へといたっているようです。

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