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聖帝記~聖なる御子の邪神討滅記~  作者: めるりん
第1章 神託の御子
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第9話 旅立ち

 旅立ちの準備も終わり翌日。村長に挨拶をすべく向かいました。


「アフェット、ついに旅立ちか」

「はい、村長。両親共々お世話になりました」

「どちらかというとこちらの方が世話になったがな」

「もう今更止めようとは思わないが、お前の旅路が幸福なものであるといいな」

「旅といいましてもしばらくはダースティアで修行の日々になりそうです」

「では、そのも含めて良きものとなるように祈っていよう」

「村長。ありがとうございました」


 村長との別れも済ませて待ち合わせ場所の村の南門に向かいました。


「もうちょっと感動的な別れになると思ったのになー」

「辺境の村ですしね。村長にとっては出会いと別れは慣れているのでしょう」

「アフェットはどうなの?」

「村を出る話は母の存命時から話していましたしね」

「精神的な準備はすでに整ってたってことね」

「それより皆揃っているみたいですよ

「人数少ない気もするけど」


 すでに南門に集まっていた皆さんと合流します。


「お待たせして、申し訳ございません」

「いや、時間前だから気にするな」

「それにもっと遅れてる連中もいるしね」

「昨日は夜に入る前から飲んでたからな、予想通りと言えば予想通り」

「正式な依頼だったら、アラン達も寝過ごしたりはしない」

「一応アフェットの護衛という仕事ではあるのだけれどね」

「うちのパーティーがごめん」

「ヘスはあんな男所帯でよくやっていけるわよね」

「そういえば[暴風の斧]でヘスさんだけ女性ですね」

「アランとはDランク昇格試験を受けた時の仲間だったのよ。深酒こそするけど酒で問題起こすわけでもないし、ちょっと熱くなりやすい点を除けば良いリーダーだしね」

「寝てるのを起こしたりはしたりはしないのですか?」

「男女でパーティー組んでる時って色々難しくてね。間違いが起きないようにお互いの部屋には入らないようにしてるのよ」

「ドアを叩いて起こすとかは?」

「やっていないとでも?」

「起きないのですか」

「まあアラン達が深酒してたのは知ってるし、のんびり出発の準備でもしましょう」

「馬車に乗るのは初めてです」

「そういえば村から出たことないんだったな」

「馬車はお尻殺しだから気合いれておきなさい」

「あれは気合でどうにかなるのか?」


 そんな調子で雑談をしていると宿の方からアランさん達がやってきました。


「悪い。完全に寝過ごした」

「まあ大仕事の後だし深酒をするのも仕方がないが、アフェットの護衛も一応の仕事なのは忘れるなよ」

「その分仕事はしっかりこなして見せるさ」

「馬車で行くとオースティアにはどれくらいで付くのですか?」

「大体10日ってところね」

「そう聞くと本当にレネット村って辺境だったのですね」

「王国内だと一番の辺境と言っていいんじゃないか?」

「一番近い街まで1500kmってのは意味わからんしな」

「しかし王国内でもかなり昔からある村って話だ、ダースティアより歴史が古いって聞いたことがある」

「そんな辺境だからこそ引退した冒険者にレネット村を勧めているらしい。実際元冒険者がいなければ滅んでいたところだしな」

「それってそれってもしかすると、レネット村は特別な村ってことなのかしら?」

「例えば聖剣が眠っているとかか?」

「伝承が失われ聖剣が使い手を待っている。とかちょっと浪漫があるな」


 雑談をしつつ出発の準備を整えます。確かにレネット村は不思議な立ち位置の村だと改めて思いました。


 次に私がレネット村に赴く時にその謎が解けるとは、今の私にはわかりませんでした。


「ちょっと調べてみたくなるが、いつまでも話していてもしかたあるまい。ダースティアに向かうとしよう。ついでだ覚えておいて損はないから御者のやり方を覚えておくと便利だから隣にすわれ」

「わかりましたアルニスさん」

「じゃあそっちの馬車は男馬車ね。ヘスこっちにいらっしゃい、こっちは女馬車にしましょう」

「そういった呼び方があるんですね」

「ねーよ。ローザが適当に言っているだけだ」

「大丈夫よアフェット。あたしが一緒にいてあげるから」

「何が大丈夫かわかりませんが、助かります」


 14年間過ごした村から旅にでます。寂しい気持ちもありますが、新たな旅路への期待感の方が勝ります。


「御者は単純に馬をコントロールするだけではない周囲の警戒もする必要がある」

「立場の低い人がやるのかと思っていました」

「確かに冒険者でも下っ端が務めることが多い。だがそういう場合は馬車内にいるベテラン達が周囲に目を光らせているもんだ。実際にアモス達が口数少ないだろう」

「そんなことまでいちいち教えるなよ。初心者が油断してるところを恰好よく助けるところまでがセットだろ」

「今更アフェットに、そんな冒険者あるあるをする必要もないだろ」

「恰好よく助ける俺達にアフェットが憧れるかもしれないだろ」

「それでも無理だ」

「無理ってどういうことだよ」

「聖剣を使いたくてしかたがないローザがお前以上に周囲を警戒してるからな」

「わ、私はアモスさんも尊敬していますよ」

「言わされたって感満載だな」

「それよりアフェットよ、あの聖剣は使い手を凶戦士に変えてしまう効果とかあるんじゃないだろうな」

「そんな効果はないはずですが」

「アモス。お前が聖斧を手に入れたら使いたくないか?」

「なるほど、子供がおもちゃを手に入れた感覚か」

「まあ、そういうことだ。俺ももっと腕を磨いてアイリーにある聖弓に認められたいと思っている」

「アルニス、聖斧の現在の所在地って知っているか?」

「ドワーフの国であるドライラントにあるっていう噂を聞いたことがあるが、ドワーフ以外に使わせるかは謎だな」

「このロンデリア王国にはあるのですか?」

「聖剣パシフィスと聖剣アロンダイトがあるはずだ」

「アフェットはレイピア使いだしもしかしたら使わせてもらえるかもな」

「正直私の立場を考えると聖剣より聖杖が欲しい所ですが」

「聖杖が聖国にあるって聞くが誰も見たことがないらしいな」

「アフェットのような御子に使わせるために眠らせてるとか?」

「それだとしても隠す必要はないだろ」


「アルニスさん、そろそろお昼休みにしようとローザさんからの伝言です」

「わかったぜヘス」

「まあそろそろ昼にするのはいいかもしれないな」

「食事というと干し肉と魔物も殴り倒せるパンですね?」

「は、何を言っているんだ?」

「まあ新人冒険者ならそんなのを食べている者もいるかもしれないが」

「状態保存の魔術を掛けた柔らかいパンに腸詰を挟んで簡単なスープやシチューで食べるって感じだな」

「食事は活力だからな、手を抜く冒険者はあまりいないさ」


 冒険者は硬い干し肉と硬いパン、今はそんな時代ではないみたいです。


 ちなみに状態保存の魔術を開発した人は大金持ちになったそうです。


 昼食時は私は全く気が抜けていたため、アルニスさんから少し怒られてしまいました、


「周りの連中が警戒してたからいいもののソロでそれだとすぐに命を落とすぞ」

「はい、気を付けます」

「知らん顔してるがメロウもだぞ」

「こっちに飛び火した!」


 少し怒られてしまいましたが、旅程時代は順調に進みました。


「この辺まで来ると村もありますが、寄らないのですか?」

「アフェットを旅慣れさせる目的もあるからな。わざと野宿にしているのさ」

「それにしても魔物が出ませんね」

「ローザがあれだけ殺気を振り撒いているのと、討伐部隊が通った後だからな、街道に近づきそうな魔物は討伐済みなのさ」


 順調に旅が進み残り三日でオースティアに到着するというところまできました。


「アフェットにメロウ。二人の探知能力はかなりのものだここからは二人とも探知魔術を常に使っていろ」

「常にですか?ちょっと大変ですね」

「常時なんて面倒くさいー」

「二人は後の先で戦えるわけではないからな。今後の為には常駐で探知を行う癖をつけておけ」

「でもなんでこんなタイミングなの?」

「すでに道程の7割を過ぎた。ベテランだろうと素人だろうとこの辺が一番集中力が切れがちになる。ローザ達もアモス達も油断が見えてきた、その分お前達でフォローしろ」

「わかりました」

「まあ、あたし達ってお客様状態だったしね。いっちょ頑張りますか」


 探知を開始はしましたが何事もなくオースティアまで残り一日の距離まできました


「最後まで気を抜かないようにな」

「はい、常時探知していると流石に魔力の消費が多いですね」

「ほんとよね、寝ながら探知なんてしたことなかったし魔力が大分減ったわ」

「凄すぎて言えなかったんだが、普通の術士は一日中探知をしたり、更に寝ながらも探知を使うなんて無理だからな」

「え、そうなの?はやく言いなさいよ!」

「メロウの場合は伝えたらサボりそうだからな。しかしメロウまで規格外だとは思ってもみなかったな」

「アルニスさん北からきてます!」

「数は20以上速いわよ!」

「ローザ!北から魔物が来るぞ警戒しろ!」

「残り1日ってとこなのに面倒ね」

「魔物はオオカミ型のようです!」

「数は26匹でボスっぽいのが1匹いるわ」


 馬を守るために陣形を構えた瞬間に敵と接敵しました。その瞬間ローザさんが一気に敵の中に突っ込んでいきました。


 私を含めて皆が少し茫然としていると、ローザさんが敵のボスを含めて周辺を一気になぎ倒していました


「ローザ強すぎだろ」

「まさに一騎当千だな」

「援護した方がいいのではないのでしょうか」

「といってもあのスピードで斬って回っていると手が出しにくい」

「ありゃ英雄病かね?」

「というかさっさと帰りたいんだろう、ローザも女性だしな。風呂に入りたいだろうよ」


 ダースティア到着の最後の難関なのかと思いきや、聖剣を使いたいローザさんにまさに鎧袖一触と言った感じに倒されてしまいました。


 死んだ魔物の解体をしながら、明日には到着するであろうダースティアに思いをはせます。


時速でいうと、早馬:40km~50km。馬車:10km~15kmになります。

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