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第7話 採取依頼を受けました

 あれから手頃な薬草の採取依頼をいくつか受けた私は、ガザムスの西側にある市壁の外周付近に来ていた。


 今回受けた依頼は、ニムル草とペルアの葉と実の採取が目的である。

 ニムル草は、数は多いものの雑草に似た見た目をしており、葉にあるギザギザとした刻み目と日に透かしたときの透明度で判断をするらしい。

 逆にペルアは見た目こそわかりやすいが、とくかく数が少ないという話だった。


 とはいえ、私はそんなしち面倒くさいことをちまちまやるつもりはない。

 今を生きる冒険者にとってはズルに見えるかもしれないが、私は私のやり方でやらせてもらうとしよう。


 「ディテクション」


 今使ったのは、魔力波を用いた探知系の魔法だ。

 私が呪文を唱えるとともに、術式により特殊な加工を施した微弱な魔力が周囲に放射される。

 ややして、周辺から反射してきた魔力を波形として捉えると、脳内でイメージしておいた地形にその反応を当てはめていく。


 「ニムル草の条件を満たす反応は三つもあるな。幸い時間はあるのだし、実際に目で見て確認していこう」


 この魔法は、広域を調べられてなおかつ逆探知もされにくいという優れものではあるのだが、その分探知自体の性能が抑えられているのが特徴だ。

 確実に安全が保障されている状況ならともかく、現状はこの魔法を使っていくのが無難だろう。




 そうして、ほどなくしてニムル草とペルアを規定数確保した私は、さらにいくつかの薬草を採取してから、行きと同じ市門へと戻ってきた。

 冒険者見習いという身分や年齢的にも、本来であれば通行許可など下りるはずもないのだが、そこはこの街で最も権限のある領主家と繋がりがあるという伝手を利用させてもらう。

 出てきた衛兵にミアに用意してもらった通行証を見せると、にっこりと笑って私の頭を撫でてきた。


 「おや? おつかいはもう終わったのかい。こんなに小さいのにえらいねえ」


 ……解せぬ。




 そんなこともありつつ、冒険者組合に戻ると、何やら中から騒がしい音が聞こえてきた。


 「おい、回復薬はどうした?! これっぽっちじゃどうにもなんねぇぞ!!」


 「んなこと言ったって、そんなすぐに用意できねぇんだよっ!」


 中に入って少し進んだところに十数人の冒険者が床に寝かせられていた。

 どうにもケガをしているらしく、応急処置はされているようだが、包帯の至るところに血が滲んできていた。

 これは早いうちに適切な処置をしないといけないのだろうが……はてさてどうしたものか。


 私が悩んでいる間にも病状は悪化の一途を辿っているらしく、何人かが苦しそうに呻き声を漏らし始めた。

 周囲の冒険者はそれに動揺するばかりで使いものになりそうにもない。


 「すみません、どいてくれますか!」


 仕方なく人混みをかき分けて前に出てきた私を見て、ケガ人の周りであたふたと騒いでいた冒険者の何人かが目の前に立ち塞がる。


 「おい! 素人が近づくんじゃねえ!!」


 「お嬢ちゃん、いい子だから後ろで待ってておくれ」


 「私っ! 薬を持ってます!」


 私が声をあげて薬を掲げると、前にいた冒険者たちが脇にどいてくれた。


 この薬は、街の外周でいくつか薬草を拾い回ったときに作っておいたものだ。

 この世界の薬草が私の知識通りに薬になるかを実験していたのだが、狙い通りに調合はできた。あとは効果のほどを検証するだけなのだが、奇しくもその機会が巡ってきたといったところだろう。


 私がケガ人のそばに近寄ると、近くで様子をうかがっていた冒険者の一人が手を差し出してきた。


 「ありがとう、助かる。それは俺が預かろう」


 「いえ、私がやります。これでも前に似たような治療を手伝った経験があります。それに、症状によって薬を使い分けないと」


 そう言いながらも、私は手を動かしてケガ人の患部に浅緑色で粘り気のある薬を塗布して、素早く包帯を巻き直していく。


 これは依頼の採取対象であるニムル草と、ほか三種類の薬草に少量の魔力を混ぜ合わせて作る簡単な塗り薬だ。

 即効性があり、止血と殺菌効果があるという優秀さにもかかわらず、使う素材がどこにでも生えている植物なので、入手のしやすさから非常に重宝する塗布剤として人間たちの間で有名な薬だったはずだ。

 魔法の技術だけでなく、この薬さえも失伝してしまったのだろうか?


 そんなことを頭の片隅で考えつつ手当てをしているうちに、ここにいる全員分の処置が終わったようだ。

 最初に手当てをしたケガ人の症状が快方に向かっているのを見て、近くで様子を見ていた冒険者の一人がいきなり私の手を握ってきた。


 「あんた……いや、あなた様のおかげで、俺の仲間はみんな無事にすんだ。本当にありがとう。この恩は一生忘れねぇよ。あなたはこんなどうしようもねえ俺たちにも救いの手を差し伸べてくれる女神様だ」


 そう言って泣き崩れる冒険者を前に、戸惑う私へ周囲から歓声があがる。


 「よくやった嬢ちゃん、見直したぞ!」


 「奇跡だあ! 奇跡が起きたぞぉぉーっ!!」


 「ありがたや、ありがたや」


 ある者は私の肩に手を回し、ある者は叫び声をあげ、またある者は膝をついて私を拝み始める。

 大勢の冒険者に囲まれて、揉みくしゃにされながら私はふとこう思うのだ。


 どうしてこうなったのだ、と。

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