第6話 冒険者登録をしました
「――冒険者に興味がある、ですか? ええ、ええ、もちろんわかりますとも、それでしたら冒険者組合に行かれたらよろしいと思いますよ。あとで紹介状と地図を用意するように言っておきますわ」
いつもの魔法の授業を終えたあと、ミアに冒険者について尋ねた私は、多くの建物が立ち並ぶガザムスの街中でも、特に目立つ大きな建物の前に立っていた。
ここは冒険者組合ガザムス支部。
建物の中は、様々な武具を身に着けた多くの人々でごった返しており、正面奥に設けられたいくつかのカウンターの前には行列ができていた。
私は右側にある一番空いている受けつけの列に並んだ。
少し待っていると私の番が回ってきたため、カウンターの前へと進む。
「すみません、冒険者登録というのをお願いしたいのですが」
「あら、ずいぶん可愛らしいお客様ね。いらっしゃい、ガザムス支部にようこそ」
応対したのは若い女性の受付嬢だ。
開いていた本をパタンと閉じてカウンターの下から書類を取り出した。
「残念だけど、あなたぐらいの年齢だと正規の冒険者登録はできないの。冒険者見習いという形になるけどいいかしら?」
「見習いだと、何が違うんですか?」
私がそう尋ねると、「小さいのにしっかりしてるのねぇ」と言って説明してくれた。
「冒険者見習いだと、あなたたちが憧れるようなゴブリンなどをはじめとした魔物の討伐依頼を受けることはできません。そういったものについては、月に一度ある見学会で大人の冒険者の狩りについていく形になります」
「わかりました。では採取依頼は受けられますか?」
「採取依頼? えーと、薬草の採取でいいのよね? それなら街中の安全な場所でなら認められているわよ」
「では、登録をお願いします」
私の言葉に一瞬きょとんとした表情を浮かべた受付嬢は、すぐ何かに納得したらしく一度うなずくと、優しくほほ笑みながら登録の書類をパラリとめくった。
「わかったわ。ここに必要な情報を書き込んでもらうのだけど、読み書きはできるかしら?」
「はい、一通りはできると思いますが、どこかおかしなところがあれば、教えてもらってもいいですか?」
「ええ、もちろんよ。それじゃあがんばって!」
受付嬢に見守られながら登録書類を記入していく。
この世界の文字については、書庫で調べ物をしていたこともあって、今ではそれなりに把握できているとは思う。だが、読んでいた書物の多くが年代物ということもあり、書き方などが古めかしくなっている恐れがあった。
その点、この受付嬢は私を好意的に捉えてくれているため、何かあってもうまい具合に解釈してくれることだろう。
「できました」
「えーと、どれどれ。……ねえ、エアルちゃん。この使える魔法の属性のところに書いてある『聖属性』って何かしら?」
「えっ。……その、何かきらきら光って不思議なことが起きるんです」
「きらきら光る、ね。それは光がどこかに飛んでいくの? それとも誰かのケガを治したりするかしら?」
なるほど、この世界には神聖魔法がないわけか。
光を飛ばすのはそのまま光魔法だとして、わからないのは神聖魔法とは別に癒す力のある魔法があることだ。
見た目が光属性に近いという情報を手がかりに思い浮かべようにも、少なくとも私が知っている魔法にそのような種類は存在しない。
やはり、かつて私がいた世界とこの世界とでは、根本的なところで何かが違うのだろう。
「たぶん、両方……だと思います」
「それはすごいわね! 光魔法もそれなりに珍しいけど、回復魔法を使える人なんて滅多にいないもの。あとは私のほうで書いておくから、少し待っててくれる?」
回復魔法という名の魔法らしい。
ぜひとも本物を見てみたいものだ。
その後、ミアにもらった紹介状を渡して、諸々の手続きを終えたあと、受付嬢は冒険者についての説明を簡単にしてくれた。
最後に質問がないかと言われたため、薬草の群生地が記載された本がないかを尋ねた。
「それなら、向こうの依頼書が貼ってある場所の横に簡単な地図があるわよ」
「わかりました。お姉さん、ご丁寧に色々とありがとうございました」
私がペコリとお辞儀すると、受付嬢は胸の前でグッとこぶしを握った。
「エアルちゃん、私は応援していますからね。どんなに辛くてもギルドのみんなと一緒にがんばっていきましょう!」
なんのことだかわからないが、彼女の厚意を無下にすることもないだろう。
そう思い、私も両手に握りこぶしを作って「がんばります!」と答えると、周りにいた冒険者たちから拍手が起こった。
……なぜだ。
次話からエアルちゃんの冒険者生活(仮)が始まります。
冒険者見習いがんばれ! 応援してるよ
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