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第二話「真律霊石・弐」

「若様!お待ちくだされ!」

「だれがまつか!」


 こんにちはこんばんはおはようございます。先ずは初めまして真律霊石です。5歳です。転生者です。現代日本の知識バリバリ持ってます。え?突然すぎるって?それに赤ん坊の時の話をしろって?嫌です。何で自分じゃ何も出来ない頃の黒歴史を言わなければいけないのか。絶対に言うもんか。俺は忘れたいんだ。

 ……気を取り直して。俺は何か遊牧民族と中国を足して割ったような国に生まれました。そしてその国の皇族。これは勝ち確定ですね。……そんなわけないか。

そして今俺がしている事は教育係兼子守り役のジィことマスラから逃げています。


「いい加減にしてくだされ!一人で歩いてはあぶのうございます!」

「ならジィが早く走ればいいだろう!」


 俺がしている事は何の事はない自宅の散歩。しかし、ジィは追いつけていない。それもそのはず、ジィは片足がないのだ。詳しくは知らないが昔敵兵に切り落とされたとか。それ以来武官だったジィは文官になりこうして俺の教育係を任されている。

 ジィは杖を使いながら必死に追いかけてくる。……そろそろ走るのは止めた方がいいかな。


「ジィ」

「はっ!何でございますか?」

「そろそろべんきょうの時間のはず。もどるぞ」

「はっ!かしこまりました」


 俺は頭を下げるジィを背に部屋に戻る。勉強は大切だ。この世界の文字は当然ながら日本語じゃない。俺が話している言語も日本語じゃない。最初は焦ったけど流石に5年も経てば滑舌の問題以外では特に苦労なく喋れるようになった。だからと言って気を抜く事はしないけどね。

 今はまだ無理だがいずれは中国語も習うつもりだ。この時代、には限らないが他言語は知っていて損にはならない。こういう事の積み重ねがいずれ自分を救うのだからな。


「あら、霊石。お散歩?」

「母上!」


 俺は角から現れた女性、母であるシェンフェンに声をかけ飛びつく。母はまだ二十代にも満たないうら若き女性だ。……恐らく十三、四には俺を妊娠ないし出産した事になる。よく無事だったな。まぁ、今は親子という事で合法的に美女の体を堪能させてもらうか。


「あらあら、霊石は甘えん坊ね」

「奥方様、お久しぶりです」

「マスラも元気そうね。霊石はきちんと言う事を聞いていますか?」

「はい、むしろ聞き分けが良すぎるほどです。これほどの子は見た事がありません」

「まぁ!霊石は賢いのですね。将来が楽しみです」


 そう言って母は俺の頭を撫でてくれる。俺は将来よりも今の方が楽しいです。このパラダイスをもう少し味わっていたいけどそうも言っていられない。勉強の時間が迫ってきているのだ。すごく、凄く名残惜しいが離れるとしよう。


「母上、そろそろべんきょうのじかんです」

「あら、そうなのね。なら終わったらまた来るわね」


 母は頭から手を離し俺は地面に立つ。……ぶっちゃけもう少し味わってもよかったな?そう思いつつ俺は去っていく母の後ろ姿を眺めるのだった。













 勉強は楽しい。本の内容を一つ覚える事で自分が賢くなっていくと感じるからだ。同じ理由で体を動かす事も好きだ。鍛錬をすれば筋力と技術がつくのを感じる。流石に5歳の俺が出来る事なんて限られているがな。


「おぉ、若様。もう読み終えたのですか?お早いですな」

「それほどでも」


 ジィの言葉に俺はそう返す。俺は集中して次の本の読解を始める。どれもこれも日本語では書かれていない。故に読みづらいがそれを読み解くのも勉強の一つだ。べんきょうの時間だけで俺は一冊と半分を読み解いた。流石に全てを完璧に覚える事は出来なかったが問題ないだろう。

 最初に呼んだのは政治に関する本で今は戦術に関する本を読んでいる。この国、加泰(カタイ)帝国で作られたものだ。次は南部の中国の様な国で作られた本を読もうと思っている。


「若様は本当に大人しいですな」

「ジィにはまだまだ元気でいてほしいからな。むりはさせたくない」

「何と……。お優しきお言葉ありがとうございます」


 ジィは何かめっちゃ感動しているが今のは別に本心じゃない。5歳の俺では家から出る事なんて不可能だし家の散策は大体終わった。ならやる事は勉強ぐらいしかないだろう。

 しかし、前世の大震災の時を思いだすな。あの時は小学生だったからな。スマホもないしゲームも飽きてかと言って外にも出られなかった。結果好きじゃなかった勉強を頑張ったな。あの時から嫌いでなくなったのはまさに不幸中の幸いか。

 まぁ、今はそんな事より次の本に目を通すか。


「おお!もう読み終えたのですか!若様は神童でいらっしゃいますな!」

「(……ジィ、うるさい)」


 俺は密かにそう思った。


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