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第十一話「謁見・壱」

 加泰帝国の帝都である中都の中心地に立つ立派な建造物。中華風の城であり初代皇帝が建造させた城らしい。加泰帝国の繁栄を象徴する偉大な城だ。

 そんな城に俺は父と共に登城した。周囲を近衛兵がぐるりと囲んだ状態で皇帝の下に進んでいくがこれでは重罪人と変わらない。護衛と言っているが実際は抵抗させないように監視しているのだろう。どれだけ皇帝は疑い深いんだよ。若しくはそれだけ危険な目に遭ってきたいという事なのか……。

 城の内部は結構デカい。俺が住んでいる屋敷だってデカいと感じるのにここはそれすら比べ物にならない程だ。恐らく全体の把握だけでも数日は確実にかかる。隅から隅まで把握するのは多分生涯かかっても無理だ。

 城の中をグルグルと歩き続けて凡そ30分ほど。漸く目的の部屋に着いたようだ。……いや、これは明らかにこの部屋までの位置を悟らせないための動きだったな。絶対直通なら半分以下の時間でつけただろうから。で、部屋の扉の前に立つ近衛兵が一言。


「ここからはご子息お一人で向かわれるように」

「何だと!?」


 近衛兵の言葉に驚きの声を上げたのは父だ。どうやら知らされていなかった、と言うよりもこの言葉の意味がどういうことなのか知っている様で真っ青とも真っ赤とも言える表情で近衛兵に近寄ろうとして周囲を囲む兵たちに抑えられた。


「陛下はご子息と1対1での対話を望んでいるのです」

「だからと言ってそのまま行かせる父がどこにいる!? 息子はまだ幼いのだぞ!」

「……それは理解しているつもりです。ですが、貴方とて理解はしているでしょう? 陛下の性格を。ご子息を言い聞かせることが出来なかった貴方の咎ですよ」

「……」


 今にも殴り掛かんと言わんばかりの表情を見せる父に周囲の近衛兵が警戒を見せている。……聞く限りこれは粛清とかの意味合いが強そうな事は理解した。確かに俺は幼いがだったら親がきちんと手綱を握っていろと言いたいのだろうな。父には迷惑をかけてしまったな。生きて帰れればいいが……。


「父上、私は大丈夫ですので落ち着いてください」

「霊石……」

「そもそも私達は釈明をしに来たのです。つまり態々こちらから時間を作ってもらったのです。多少の要求は受け入れるべきでしょう」

「……分かった。ただし、霊石が戻るまで私はここに居るぞ」

「構いません。ですが部屋に許可なく入る事は出来ませんので」

「分かっている!」


 そうして俺は部屋の中に入る。部屋はそれなりに広いが物は少ない。部屋の中央には二つの椅子と一つの机が置かれており、二つの椅子の内一つは60代くらいの男性が座っている。その反対側に空席の椅子が置かれている。

 机は椅子から椅子まで5メートル近くあり、幅も大人が両手を伸ばしても届かないくらいに広い。恐らく謁見者が襲い掛かって来るのを防ぐため、部屋に物が少ないのは部屋の中で隠れられないようにするためだろう。本当に暗殺を恐れているのか。

 俺が部屋に入った事に気付いたのだろう。反対側を向いていた男性はこちらに視線を向けた。見るだけで分かる歴戦の強者と言った目力だ。少なくとも実力でこの地位にいる事をうかがわせる人物だ。


「よく来たな。朕が加泰帝国皇帝真律蓮怒じゃ」

「……真律風苑が子、真律霊石と申します」


 俺は両手を合わせ、その場に左ひざをつき最上級の礼をする。親族とは言え相手は皇帝。きちんとした態度を示す必要がある。ここで礼を欠いたゆえに殺されるのは嫌だからな。まぁ、明らかにガキの俺がきちんとした礼をするのを見て殺そうと決意する様なら、皇帝は無能の可能性が高いとして諦めるしかないがな。さてはて、この皇帝は一体どちらなのやら……。


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