ハーデース
「最近はハリウッド城の周辺も、魔物が現れたり、少し治安が悪くなっているのかもしれません。」
ハリウッド探しに、10司教の一人、元守護女神のアテーナー司教もセーラ姫と俺に同行してくれた。
「アテーナーと一緒に旅ができるなんて、楽しいわ。」
セーラ姫はアテーナーと旅ができるのが嬉しかった。
「俺はアテーナー先生がいると気を使って疲れるわ。」
アテーナーたち司教は子供たちに勉強を教えている。セーラ姫はお姫様なので怒られたことはないが、アーサーのような問題児は毎日怒られていた。
「幽霊が気を遣うな。それとも、ずっとスケスケのままでいるつもりか?」
そう、俺は幽霊だった。
俺の問題点は3つ。
1、幽霊なので普通の人には俺の姿は見えない。
2、セーラ姫の側から離れることができない。
3、会話はできても、俺とセーラ姫は体を触れ合うことはできない。
4、セーラ姫意外、戦闘は相手に攻撃ダメージを与えることができる。
「それは困る! 俺は生き返らないといけない! 生き返って、姫と結婚するんだ!」
ついつい俺の本音が出る。
「キャー!?」
いきなりの告白にセーラ姫はキュンキュンする。
「アーサー、そういうことは教師のいない二人っきりで雰囲気のある所でやってもらえないかな。」
アテーナーは少し照れて困っている。
「すいません。」
俺は反省する。
「どうして反省するのよ! 素晴らしい愛の告白よ!」
女性のセーラ姫の方が堂々としている。
「すいません。セーラ姫。好きです。」
「好きなら謝るなー!」
俺とセーラ姫は仲良しだった。
「痴話ケンカは後にしてもらいましょうか。敵です。」
アテーナーは魔物の気配を察知した。
「な、なんだ!? この気は!? なんて禍々しいオーラなんだ!?」
気配は魔物でもモンスターでもなく、もっと強大なものであった。
「あ、あなたは!?」
現れた男にアテーナーは絶句した。
「冥王ハーデース!?」
なんと現れたのは冥界の支配者、冥王ハーデースだった。
「あれが冥界の王!?」
「綺麗な人ね。キュンキュン。」
俺は恐怖からビビり、セーラはイケメンにときめいた。
「久しぶりだな。アテーナー。」
「どうして!? 冥界にいるはずの、あなたが地上に!? もしや!? 最近、魔物が活発な行動をしているのは、あなたの指示ですか!?」
「違う。私は天界の異変を伝えに来ただけだ。」
「天界の異変? それはどういうことですか?」
「今、天界には神が不在なのだ。」
「なんですって!?」
天界に神がいない緊急事態なのだった。
つづく。