表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ポリシーイスティックな衝動!

作者: 野田莉帆

 

「カレに接触して何分たったァ?  ア・リ・スゥ。ローズたん、もぅ待てなァ〜い」


 アタシが崇めてる闇組織の“いちおう”上司、ローズの甘ったるい声、携帯から聞こえてきた。

 レースやらリボンやらがいっぱいの服。それ着てる40代(ローズ)の姿。思い浮かべちゃったアタシ、喉の奥に込み上げたナニカを慌てて呑み込む。

 アタシはすぐさま電源オフった。


 そ、アタシの名前はアリス・ヴァスカヴィル。

 もちろん偽名。

 20××年の夏、アタシ16歳で。新種ウイルスの数少ない感染者になった。

 で。

 常軌を逸した力と殺人衝動を得たかわりに、ヒトの心を忘れちゃったんだ。

 まッ、日本政府(バカ)はそんなウイルスなんて存在しないって言い張ってて——佃煮ができるほどの死体、目の当たりにしても——断固として認めなかった。


 ありがとッ!! 助かってるッッ!!

 アタシ、殺りやすい!!! ……まあ、そんな感じってわけ。


 研ぎ澄まされた雑踏の奥、ヒール鳴らして流れてるとツインテールが長すぎて、身体に当たってちょっとウザったい。

 そろそろ切ろっかな〜って、手の中で銃弾——アメ玉——転がしながら、制服姿でチュッパチャップス舐めながら、獲物(ターゲット)んとこ戻る。


 木更津 蒼、20代男性。しょうゆ顔でわりとイケメン。バルーンアートを作るお仕事してて。ここんとこ、ハウジングセンターのイベント会場飾り付けてる。

 っていうのは、仮の姿(大ウソ)

 アタシ、知ってる。この人は、闇組織を探ってる新種ウイルスの研究員だって。


「おかえり。そう言えば、今日はどうしてここに?」


 凛とした声。タバコを片手にスーツ姿。長身でスラリとした感じもやっぱり、カッコイイ。


「ちょっと、蒼に会いたくなって。キミがここにいるの知ってるのは、アタシだけでしょッ?」


 冗談を交わせるくらいには、親しくなってから死体(コレクション)にするのが、アタシのポリシー。

 一層“()()()()()()()”のが、たまんないでしょッ?


「ア、そうなんだ。ボクに何か用でもあった?」


「大したことじゃないし。用事入っちゃったし。もう帰るー」


 アタシ、クルッと背中を向ける。

 振り向き様に相手の瞳を見つめながら撃ち抜くのも、アタシのポリシー。特に理由はないけど。

 アタシ、直ぐに振り向くつもりだった。

 が、3秒遅れた。

「ボクを殺しに来たんじゃなかったの?」って、蒼がはっきり言ったのが聞こえたから。


 蒼の瞳の中には、確かに恐怖があった。

 けれど。

 アタシが蒼に銃口を向けた次の瞬間、蒼は、アタシのこと抱き締めるみたいに両手を広げて。そして——、カレ、笑ったの。

 甘ったるく。


 バアアァァアァァン!


 大きな銃声が鳴って。

 アタシ、衝撃を腕に感じながら、ずっと、——この笑顔の意味——考えてた。

 蹴飛ばしても、悲鳴を上げない死体のくせに、笑ってんの。

 この笑顔はなんか忘れられない。

 アタシ、最期にだって笑えちゃうヒトはちょっとだけ好きかもしれない。


 この時のアタシ、まだ気づいてなかった。アタシがヒトの心、取り戻しつつあるってこと……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 序盤ちゃらんぽらんとしていながらも、中盤きゅっとしまって、終盤じわっと来るところが良いですねー (表現雑(笑)) これだけ短い文の中に、窮屈に感じることなく、内容が盛り込まれているのは、…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ