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理系蛮族日誌  作者: Thera
9/15

調査地戦線異常ナシ・下


 さてさて、前回の続きです。


 たかが土砂崩れ、されど粘土でガチガチに固まって縄文土器か? と言いたくなるような土砂崩れ。

 しかも持ち物は各自のきったねぇ手袋と塹壕シャベルがひとつだけ。


 この状況で三人いるわけですから、シャベル使えない民は手を使うしかないわけです。


 たいてい、土は一緒に落ちてきた植物の根っこに絡まって固まってますから、『おおきなかぶ』の真似事をすればでかい塊が引っこ抜けます。


 というわけで私はシャベルを友人に預け、引っこ抜き作業に専念!


 なぜここで友人に預けたかというと……


 彼が!植物屋の理系蛮族だったからなのです!


 ──説明しましょう。

 テラは見ての通り、大型陸上哺乳類を専門とする理系蛮族です。

 しかし我が研究室には、植物や昆虫を専門にする同志が存在しています。


 動物屋の理系蛮族は、基本的には脳筋です。冷蔵庫に怪しげな何かの足とか何かの頭とか突っ込んでカビさせます。

 n数の少ない不確かな研究をやらざるを得ないため、実行力と度胸は人一倍……かつ、異臭騒ぎの常習犯です。


 昆虫屋の理系蛮族は、緻密な作業が得意な人が多いです。机の上にジップロック入りのG(チャバネ)とかを置いて怒られたりしてます。

 見分けつかねぇよ!みたいな細かいのをさらさらと見分けるし目敏いです。糞虫を集める為には、自分の体から誘因餌を作成しけふんけふん。


 植物屋の理系蛮族は、たぶん一番理系っぽいです。蛮族感は一番薄くてまともかな。蛮族行為とは違うところで何かズレたものを感じる事があります。

 話す速度に考える速度が追い付いていない傾向はあるようですが、数字を扱う事に長けていて、なにより……


 根っこを掘るのが、ものっっ凄く上手なんです。動物屋が歩兵だとしたら、植物屋は工兵みたいなものなのです。これは植物屋蛮族にシャベルを渡すしかないでしょう。


 というわけで、無手になったテラ。最初はおおきなかぶの真似事をしていたわけですが、もうガチガチに固まってると引っ張っても抜けないんですよね。


 となれば、根元を手で掘るしかない。しかし手だけでは掘るのに時間がかかりすぎて、どうもイライラしてきました。


 そこで最初に取り出したるは、泥の中から見つけた粘板岩です。


 平らでかつ鋭利な割れ目を持つこの石を突き立てて掘る、そうすれば効率よく根を切り崩せます。


 この時点で、私の技術レベルは近世から先史時代まで一気に逆行しました。


 さてさて、しかしここでも問題が。粘板岩、自分の手に食い込んで痛いんです。縄でもありゃ良かったんですが、石器作る想定なんてしてないから、ふつうに置いてきてしまいました。


 面倒くさくなってきたテラ、ここでとある動物のことを思い出しました。


 それはキツネです。キツネってのは、前足を使ってざかざかざかーっと素早く穴を掘るんです。ちょうど私が穴を掘ってたあたりの標高で、同じ事をしていました。


 というわけでキツネの真似をして、ざかざかざかーっと両手を交互に動かす方向性にしたら早い早い。原始的かつ最強でした、キツネ掘り。


 近世から先史時代、先史時代から類人猿になったくらいの時代まで退行してしまいましたが、わりと原点ってのは合理的なものなのかもしれません。

 華のJDが四つ足で土をざかざか掘ってるっていう雑な絵柄になりさえしなければ、の話ですがね。


 さてさて、そんなわけで道を塞いでた植物の根を全部切り崩し、崖下に落としきれない泥は道全体に薄く広げる事によって段差をなくしました。これで車が通れるようになったわけです!


 下山したテラは、理系蛮族の同志諸君と顔を見合わせ、どや顔で報告を上げるのでありました。


 ──調査地戦線・異常ナシ、と!


 理系蛮族テラの調査フィールドは、こんな感じの努力で維持されています。


◇◇◇



 そうそう、これは余談ですが。

 帰り道、同い年くらいの男子学生たちに三度見されたんで「?」って自分を見下ろしたら、膝から下が泥だらけでした。

 うんこ付いてないし獣を触ってない分臭いはないと思うんですけど、ここまで服を汚すのが久しぶりなんで着替えるのを失念してましたね。この件以降、調査地には着替え一式を持って行くようになりました。


 そんなわけで、今回はこれにて終了です。


 

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