調査地戦線異常ナシ・上
みなさまお久しぶりです。
テラはなんとか卒論の初稿を出し終わり、研究室でシカ焼肉パーリーナイツをしていました。赤身肉はうまいですよねぇ、私はジビエ肉だとシカが一番好きですよ。
さて……実は私、WEBアマチュア小説大賞の特別賞なんてものをいただいちゃいました。これは更新せねばなと思っておりまして、続きを書くことにした次第であります。気まぐれ更新万歳。
さて、今日は山道という名の調査地戦線における必要装備についてのお話です。
調査地戦線の環境は常に変化します。倒木、落石、川の増水、砂利が流され大陥没。
道を塞ぐ障害物をなんとかどけなくては、機材を担いで歩くはめになる。私は持ち歩く機材が相当に重いので、そんなのはごめんなのであります。
よって、道の整備は自力で行ってきました。まず倒木。小規模なものであればナタやのこぎりが使えますが、今年は例の連続台風でなぎ倒された倒木が多すぎて、対処しきれない。
私は調査時の車の運転が禁じられているというのと、調査同行者さんの車が軽だった……というワケなので、ロープで牽引し道外に引きずり落とすという事も出来ませんでした。
はい! そこで取り出したるは……チェーンソー!
といっても私は取得講義の都合上、ひとりでチェーンソーを扱う事ができません。ならばどうする。人手を借りました。
通りかかった地元のAさん(70)さんにチェーンソーで倒木を全てぶった切っていただき、非力な乙女テラはぽいぽいと丸太を投げ捨てる。これで対倒木の陣地構築は完了しました。
倒木の件は、地元のAさんと名刺を交換しておいたお陰で助かりました。余談ですが名刺を山用カバンに入れとくとへろへろになってしまうので、ジップロックに入れて置くことにしてます。
これで通れるわーい!と喜ぶじゃないですか。今度は落石があって通れませんでした。ちくせう。
実を言うと、山道での落石自体は珍しいものじゃありません。山道で車の助手席に乗る人は、落石除去係というのをやります。落石が多いエリアに来たら車を降りて、タイヤに接しそうな落石を片っ端からどけていくんです。
ジムニー、サンバー、ランクル……まぁその辺りの山乗り車なら基本的に大丈夫ですが、街乗り用の車高が低い車だと、これをやっても山道が通れない。
テラがまっさきに車の車高を見てしまうクセは落石で鍛えられた悪癖ですね。でも車の性能は山屋にとって死活問題ですから覚えざるを得ない。
話を戻しますと、どでかい落石。これは私一人の力でひっくり返すことはできませんでした。明日も引いてもビクともしない。全然ダメ。
はい、ここで取り出したるはバールです!
ひと言にバールといっても、腰丈くらいまである長いやつです。これを落石の下に挿し入れ、体重をかけて持ち上げる。そして持ち上げた隙間に石を挟んで向きを調整していく事によって、論理上は落石を移動させる事ができる……
──そう、論理上は。
何が問題になったかって? 単純です。ええ、単純なんですよ……。
私の体重が足りませんでした。
岩を動かす事自体はできたのですが、半日かけて、一個の岩をたったの半メートル動かした程度です。どうにかして岩そのものを小さくしようと、割れ目に別の落石を投げつけて割ろうとしてみたりもしたのですが……ダメでした。私は女性平均に比べれば力がある方だと思うのですが、それでも岩を砕くには至らない。
という事で、男子諸君を本国より召集しました。
男の子ふたりに落石を持ち上げて貰い、私は隙間に石を置く事によって岩の傾く位置を調整し……という作業を繰り返したらあら不思議。
私が岩を半メートル動かす時間で、四つの落石が片付いてしまいました。
テラが失敗しまくった落石投げつけチャレンジも難なく成功し、岩を半分に砕いた上で作業ができちゃったりして……
己の非力さを悟り嘆きながらではありますが、落石はとりあえずどかせることができましたと。
さて、道を塞ぐ最後の関門は土砂崩れ。不幸中の幸いで土砂に落石は混ざっておらず、粘土質に固まった土をシャベルでどかしていけばなんとかなるだろうとタカをくくってました。
シャベルはやはり地元の人にお借りするつもりでいたので、私の所持品はアナグマのうんこにまみれた作業用手袋のみ。
んで当日。地元の方から、祖父の持ち物だった、というシャベルを借りしたところ……
どう見ても、軍用の塹壕用シャベルでした。
いや、軍用かどうだとか旧日本軍装備か?とかそういうのは別にどうでもいいです。問題は、そのシャベルが持ち運びと塹壕掘りに特化した柄の短い形状をしていた事。
土砂崩れをつき崩すには、あまりにリーチが足らないのです!
理系蛮族たる我々は、シャベルで自分の墓穴(違う)を地下ニメートルまで掘り下げるという経験をした事があるので、土いじりする事自体は慣れています。なんなら破傷風菌の予防接種だってばっちりやってます。
しかし、一次大戦の塹壕戦の真似事をする羽目になるとはカケラも思っていなかった。腕の長さほどしかない塹壕シャベルひとつを手に、水で練り固まった土砂の山を相手にする事になったのです……
次回、調査地戦線における塹壕戦の話に移ります。待て次回!