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理系蛮族日誌  作者: Thera
11/15

土地を知るには博物館へ

  

 山で、破局しそうなカップルに会いました。


 いや、山と言ってもたいした山ではないんですけどね。鳳来山っていう、地形地質ヲタにとっては有名な場所にある山寺です。石段とかが整備されてて、樹齢500年以上のスギなんかがごろごろ生えてるパワースポット的な場所っていえば良いんでしょうかね。


 足場が悪く、スニーカーでもつるつる滑るんで、「山靴かスタデットブーツ欲しいわー」「ここは地下足袋だろー」みたいな話をしながらわいわい登ってるときにね……


 おしゃれ靴の超不機嫌なお姉さんと、お姉さんを気遣いながら隣を登るお兄さんがいたんです。


 ……いや、いくら低い山でもおしゃれ靴はきついでしょう。スニーカーで滑るんだもん。なんならスニーカーにしまむらウェアの我々が舐めプ装備で、そのまま山の稜線越えて行く気満々なガチ山装備の人だっていましたよ。


 ってなわけで早々に引き返してあげないと、あれはお姉さんがかわいそうだなって思いました。男性諸君、このシチュエーションの場合、スニーカー履いて来ないのが悪いとか言っちゃ多分ダメですよ。

 女性の服装ってのは、足元もちゃんとした靴にしないとおしゃれ着に合わないようにできてるんですわ。距離を歩くデートコースなら、ちゃんとスニーカーで!って事前に彼女に通達すべきなのです!


 え? そもそも彼女がいな……けふんけふん。


 ま、前置きはこの辺にして今日の本題入りますか!今日の話題は土地巡り前の博物館見学についてですよ!



〇〇〇



 みなさん、博物館って行かれます?

 地元の資料を収集しているような小さいものから、観光客が立ち寄るような大きなものまで、いろいろありますよね。


 テラは調査地で飛ばされた先の博物館は、前日入りして調べるようにしています。まだ二、三年生の時、教授について行くと地元の博物館に連れて行ってくれたので、そっからはまって自分でも行くようになりました。


 当然っちゃ当然ですが、その土地を知るには博物館に行くのが一番手っ取り早いです。


 たとえばさっき例に出した鳳来山は、シダやコケのサンプル数が尋常じゃないんですよ。あまりに多すぎる。

 展示を調べると、谷間という地形で湿潤気候な上に、地質も非常に複雑。石灰岩を含む土壌は、植生が通常とは変わるという特性を持っていまして、そういう特殊な土壌と火山性の土壌が混ざり合ってたりとか、湿潤な気候であるがゆえにシダやコケなんかが豊富に育つというわけだったんですね。


 そういう視点を得たうえで山を見回ってみると、なるほど確かに水が多い土地なんだと分かりました。

 まず、先に述べた通りコケやシダの種類が多くて、森全体が深い緑色に染まっています。


 それからスギの木が大きく成長していました。スギってのは、水が多い土地に強い木なんですよ。ヒノキなんかをスギと一緒に植えると、ヒノキは病気になってしまうってくらいです。


 それから、山寺までの道に敷かれた石段ですね。湿っていて歩きにくいってのもあるんですが、平らな場所に踏み石が用意してあるってのと、一定の間隔で水路がわざわざ作ってあるんですよ。踏み石は神様用って説もワンチャンありますが、わざわざ石段に水路が用意されているのは珍しいです。降水が多い時期の対策なんでしょうね。


 山を下りて街路樹を調べてみたら、これまた地衣類の多いこと。また、複雑な地形であるがゆえに石の種類も豊富で、敷石や庭石に統一感がまるでない。むしろ、石の色のバラバラさを活かして、敷き石に彩りをくわえているおしゃれ具合でした。


 ……とまぁ、こんな感じで、博物館を最初に見て知識を入れておくと、街を見て回る時の楽しみが増えるんですよ。信仰されている神様や土地の名前なんかも、その土地に多い災害の影響とかを受けやすいですから、先に知識を入れておくと理解が早まります。


 ただ、前提知識が無いと博物館の展示内容を見ても意味が分からないってこと、ありますよね。

 私の場合、地形地質学は単なる趣味技能に過ぎません。その土地で落石が多いかどうかくらいを判断するってのと、ブラタモリみて楽しむ程度の技能です。だから石を見ても、火山由来かそうじゃないかを判別するのが関の山。


 コケやシダについてなんかも、湿気が多いとうれしいね!ってくらいの知識幅しかありません。歴史博物館なんかは、行っても半分以下しか理解できてない。一部女子が大好きな刀とか、まじで分かんない。長さ以外の差が分からない。


 ですがね、そういう知識を得るための取っ掛かりとなる基礎知識を付ける場はどこなんだろう?っていう問いに答えるのは簡単です。ええ簡単。


 ──義務教育、ですよ。


 義務教育の範囲って、世界を楽しむに十分な知識量を網羅してくれているんだなぁって、博物館めぐりをするたびに思います。中高時代の歴史とか23点しか取ってなかったけど、もうちょっと真面目に勉強しておけばよかったです。


 義務教育は、世界を見て楽しむための勉強だったんだなって、大人になった今なら分かりますから。


 そんなわけで、中高生諸君はしっかり義務教育の範囲内を履修して、大人の皆さまは昔の勉強内容を思い出しつつ、博物館と土地めぐりを楽しんでほしいです。

 

 本当はこのまま「我々を楽しませるだけが目的ではない、博物館の本当の存在意義とは」という話に持っていきたかったんですが、読まなきゃいけない論文がちと溜まっているので、今日はこの辺で失礼します。卒論の直しも帰ってきましたから……ふふ……


 というわけで待て次回ッ!

 

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