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どうしたらば、良かったのか?死より切ない・・・

 救急車を呼んでしまったにも書いた、

 脳再梗塞から、人工呼吸器装着となり、施設退所された方のことを、書きます。


 私、大好きでした。話すことも出来ませんが、それでも、「心が通っている」と、感じさせてくれた・・・「こんなお母さんが、欲しかった」と・・・


 娘さん二人に付き添われて入所された時、すでにリクライニング車椅子で、脚はまっすぐに突っ張ていました。指はなんとかスプーンを掴めるのですが、それを口に持って行こうとしない。キョトンとした目で、表情がなく、お人形さんのような方でした。すなわち・・・意思を感じられない。

 けれど・・・二人の娘さんは、繰り返し

「お母さんは、こちらの言うことはちゃんと理解出来ています。ただ、話せないので、戸惑っているようです、可哀想・・・」

と・・・

 食事介助している間も、動く人を目で追っているばかりで、口を開けようとしない。スプーンを持たせて、手を添えて口に持っていくと、なんとか口を開けてくれるのですが、とっても時間がかかります。そして、その内に疲れて眠ってしまう。

 そこで、壁に向かって座ってもらい、一対一で食介をすることにしました。施設の雰囲気に慣れてきたこともあるでしょうが、少しずつ、少しずつ、食事量も増えてきて、やがて立派な(笑)お腹に成長しました。

 初めのうちは、スプーンを持ってもらおうと、自助食器を工夫したりしたのですが、すでに食べ物を認識できないのか、自分から口に持っていくことは、ありませんでした。美味しいのか、嫌いなのかも、微妙。介護員さんによっては、

「甘いものならば、次も口を開けようとするけど・・・茶系の物入れると、ダメだわ」

とか、

「べたべたしたものが、嫌なんじゃない、つるっとしたものは、いけるよ」

とか・・・まあ、その時々でした。


 入所された時には、中指だけが、伸ばせない、開かない状態だったのですが、やがてすべての指が曲がって自分の掌を傷つけてしまう。爪も水虫で、掌、臭く、黄色いねばねばが・・・

 お風呂の時だけでは、良くならない。毎日手浴をしたいのですが、それ、対象者が多すぎ(>_<)

 で、拭いて、薬を塗って、ガーゼをかませる。拘縮した指の爪切りは、大変です。声は出ませんが、指を伸ばすのは、かなり痛い様子ですし・・・


 朝、私が早番の時、もうホールには食事を待つ?入居さん、集められています。自分で動く事の無い、ほっといても大丈夫な方から。夜勤者二名でほとんどの方をオムツ交換して、離床させて、トイレ介助もしているのですから、ホール、見守りの方がいません。

 なので、キーちゃんは、もう初めからスタンバっている状態(笑)、そして、通路側を向いているので、朝一番に、ご挨拶(*^-^*)

 表情の無いキーちゃんを、私、面白がってm(__)m、いじって?ました。それが、私の早番勤務ルーティン。


 変化が訪れたのは、キーちゃんが入所される前から居た、「人差し指の思い出」の方が、亡くなったころだと思います。私、寂しくなっていたのでしょうね。キーちゃんに、それ、慰めてもらいたいたいと、心のどこかで思ったのかな~キーちゃん、それ、気付いた?

 声をかけると、なんとも「困った顔」するのです。眉間にしわを寄せて、目じりを下げて・・・

「ありゃりゃ、困らせちゃった」

と、こちらも困っていると・・・

 面会に来た娘さんが

「これ、お母さんの嬉しい時の顔です」

と、(笑)

 そう思って、眺めると、今にもこの後、笑い出しそうでした。



 時々発熱するも、ちょっと鼻水出すぐらいで、特に内服することなく、とても健康でした。それが、少し食事量減って来たかな、と思っていたらば、突然大量に吐いたのです。ベッド上でしたが、かなりの量でした。今までそんなことがないので、とにかく吸引して、バイタル測定していると、サチュレーションがやや低い。「誤嚥したのかもしれない」と、病院に受け入れ可能か連絡し、施設の車ですぐに行きました。それと並行して、ご家族に連絡。次女さんと、連絡がつき、病院で待ち合わせとし、私が付き添いました。


 処置室に入って行くキーちゃんを見送り、廊下の椅子で待っていると、次女さんがやって来ました。

「お母さんは・・・」

今日の様子を伝え、これから先生から説明があるので、と言うと

「一緒に居て下さいね、姉と連絡取れない・・・どうしよう」

と、動揺している様子で、思わず、腕に手を添えました。


 先生からの説明では、

「胆のう、膵臓に炎症があります。中に溜まったものを出さないと、命の危険があります。このままだと、明日まで持ちません。同意書を書いてください」

というものでした。

 次女さんが、ガタガタと震えているのが、わかりました。

「どうしたらば、いいんでしょうか?お母さん、そんなことしたらば、痛いんじゃないんですか?お腹に穴を開けるなんて・・・そんなことしたらば・・・」

「姉に連絡が取れるまで、待ってもらえませんか?どうしよう」

 急を要すること、麻酔掛けるから、痛くないこと、穴はすぐ塞がること、今、ここに来れて、ラッキーだったことを伝え、

「大丈夫、傍にいますよ」

と・・・


 幸い、排液からは、炎症酷い様子はなく、どうやら胆石が詰まったらしいということで、少しの入院で帰ってくることが出来ました。

 それにしても、ガッツリ吐いて、体の不調を知らせてくれた、キーちゃん、偉い!



 ちょっとスリムになって帰ってきましたが、その後は順調に回復(し過ぎという声も・・・)


 そして、笑うようになったのです。そう、声を上げて(*^-^*)


「ね、笑っているでしょ」

と、みんなに言うと

「ん~何か音を立てているけど・・・これ?」

と、言われてしまいましたが、確かに口元も引きつっている(笑)こっちを見てくれているのは、確かです!

 娘さんに面会の時伝えると、

「そうです!最近笑ってくれるんですよ、食事介助している時、私の話を聞いて。噴出されそうになる(笑)、お母さん笑わないで、って、ご飯も、ほら、全部食べました!」

 交互に来る娘さん達の笑顔も増えました。



 そんな中、あの日を迎えてしまいました。



 その日は私が早番。いつも通り、キーちゃんに挨拶、目ヤニを拭いて、笑わせて・・・いつもの一日が始まるはずでした。


 胃瘻さんを看て、上の階の薬配りに行こうとしていたらば、介護員さんがキーちゃんを医務室に連れてきました。

「なんか、口開けないし、ぐったりしているんだけど」

と。

初めは、「さっきいつも通りだったのに・・・眠いだけじゃない?」

と、思ったのですが、なんか、様子がおかしい。薄っすら開いた目が・・・

声をかけると、戻ったのですが、バイタル測定しているうちに、けいれんを起こしてしまいました。

 救急要請、声が震えてしまいました。

 救急車に乗り込むと、又、けいれん・・・今度は長く・・・

 行き先が決まった時点で、介護員さんと交代。ご家族も病院に向かうので、そこで介護員さんは帰るという段取り。ほんとは、私が付いて行きたかったのですが、まだ日勤が来ていないので、施設を、看護師不在にすることも出来ず(>_<)


 前の病院での出来事が、頭をよぎりました。心配で心配で・・・お姉さん、来てくれているかな~二人で考えれば、きっと、大丈夫だよな。


 お昼過ぎに、自歯が何本あったかという問い合わせがありました。挿管、した・・・・


 二週間ぐらい、様子をみます。とい連絡があって、そこから、一か月、ここには帰って来ないと・・・



 ご家族の想いを聞いていないので、これで良かったのか、わかりません。でも、キーちゃん、どうなんだろう?生かされていること、辛くないかな~苦しくないかな~寂しくないかな~

 二人の娘さんにとって、お母さんは、黙って自分の話を聞いてくれる、食事介助すると、一生懸命食べてくれる・・・自分のことを分かってくれる、そんな存在だったんだと、思えます。私がそうだったように・・・


 あの時、私には、搬送しないという選択は、出来ませんでした。きっと、自宅で、ご家族も、救急要請しないで、看取ることは出来ないことでしょう。

 私が、救急車に乗っていったとしても、同じ結果になっていたかもしれません。でも、でもって、考えてしまう。考えてしまうんです・・・


 





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