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ありがとう、そして、お疲れ様でした

 灯火が、何度も揺らぎながら、昨日、静かに、ついえました。


「最後にしてあげることが、まだあります」に記した、ツヨシです。


 今、これを涙しながら打っています。昨日、あんなに泣いたのに・・・


 やれるだけのことは、みんなでしたけれど、人の死は、やはり悲しい。たとえ、「ここに来て、良かったね」と思えたとしても、居なくなるのは、寂しい。


 高齢者ばかりの環境、普通に暮らしているよりも「死」は、身近にある。最期を支えるのは、私達の仕事であり、そこに至るまで、その人らしい生活をしてもらいたいと、願っている。

 ツヨシは、私達の気持ちを、受け取ってくれたと、そう、思いたい・・・


 前回の続きから


 サチュレーションの低下は、ツヨシの体力・気力を奪っていきました。

 食べる速度が遅くなり、一時間近くかかるようになってしまいました。それでも、なんとか自分で食べているし、姿勢が崩れることがないので、見守っていました。ご飯も、スプーンいっぱいにすくって、美味しそうにモグモグ。でも、かなり体力使うのか、はーはーして、次は、ゼリー粥を……工夫しながら、食べていました。

 でも、これが、ツヨシの望んでいる食事か?と……

 いくら聞いても

「飯」

としか、返って来ないので、パソコンの前に連れて行き、色々見せてみました。(パソコンの前にお連れして、色々見で頂きました……ホントは、こう書くべきなのでしょうけど……)

 選ばれたのは、細かく具が切られたちらし寿司でした。細かくはなっているけれど、飲み込めないといけないと、ネギトロの軍艦も……

 ツヨシは、目を輝かして、見つめ

「いいのか?こんなにしてもらって……」

と。

 もう、抱きしめたい思いです。

「ツヨシさんに、喜んでもらえて、嬉しいよ」

と、みんなで囲み、お誕生日会状態です(*^-^*)

 結局、数口しか自分で食べられず、ゆっくり介助して、それでも半分弱は、食べることが出来ました。


 それが、最後のお好み食になってしまいました。


 その後は、少しずつ食べる量も減っていき、寝ている時間が増えていきました。


 ツヨシは、右の肺に水が溜まっています。なので、空気が入る方の左を下にして寝かされると、とても呼吸が苦しくなってしまう。右の肺の重さで、左が圧迫されて、空気を取り込めなくなってしまう(>_<)

 又、平らに寝かされるのも、横隔膜が重力で下がらない為に、空気の取り込みが、制限される(>_<)

 なので、仰臥位では、かなりベッドをギャッチアップ、左側臥位禁と、申し送りに書いたのですが、訪室して、ビックリ!!!苦しそうに呼吸しています!!!エ~の、左にガッツリ向いています、もう、本人、寝がえりは、出来ません。

 この送りでは、理解出来ない方が居ることに、愕然……いえ、そんな愚痴を言っている暇は、ありません。早速、ベッドの前に、

「お願い:廊下側を向くように、又は、上を。ベッドは、平らにすると、苦しくなります。オムツ交換は、ささっと。すぐに、ギャッチを線まで上げて下さい」

と、張り紙をしました。


 呼吸も、苦しそうになってきました。その頃は、サチュレーション、60台……脈拍数は、90越え。


 医務室では、ツヨシのことで、何度も何度も話し合いをしました。どうしてあげるのが、本人にとって、良いのか?何が出来るのか?


 病院に行って、水を抜く……でも、入院して、返って来れるか?痛いことをされて、拘束されて、それで得るものは?食べさせてもらえないのは、どうなんだろう?


 苦しくなってきたツヨシは、最後の力を振り絞るように、ベッドに端座位になったり、夜中にフラフラ居室から出て来るようになりました。日中も、動くとサチュレーション50%なんて状態でしたので、すでに車椅子対応になっていたのに、です。

 なんとか、ゆっくり寝かせてあげたいと、主治医に電話相談をしました。週二回の主治医が来る日に、上申することはあっても、電話相談は、かなり大胆な、暴挙です(>_<)

 私達としては、張り薬でもと、期待したのですが、酸素を入れない状態では、呼吸抑制してしまうので、出せないということでした。先生のおっしゃることも、もっともなのですが……

 そこで、以前落ち着きがない時に、先生から処方されていた薬を、半分、粉にしてゼリーで、入っちゃいました・・・

 ン~ん。私達としては、ぎりぎりの選択でした。スレスレと言った方が、いいかもしれませんが……

 なんとか、それが効いたのか、それとも、もはや立ち上がるだけの力が無くなったのか、その晩は、穏やかな寝息で、休まれたようでした。それを、二日飲んで、日中の様子から、全ての薬をやめました。


 亡くなった四日前、お風呂に、シャワーですが、入れました。特浴では、ギャッチをあまりあげられないので、シャワーチェアで、ささっと。右の大腿骨転子部、褥瘡のなりかけがあり、治療シートを貼りました。着替えの為、ベッドに横になると、かなり辛そうで、三人がかりで、みんな汗だくです。


 亡くなる前日、お風呂日、朝訪室すると、呼びかけに開眼しない(>_<)なので、今日の入浴は難しいと、送りました。

 お風呂開始する前に、もう一度確認しに行こうと、看護師を一人誘っていくと、彼女が

「おい、ツヨシ、今日お風呂なんだけど、入りたい?どうよ?」

と、耳元ででかい声を上げ・・・目を固く閉じているのに……

ツヨシ、わずかに首を振り

「え~どうするのさ?」

と、更に追い込むと(笑)

「疲れるから、いい」

と、かすれるような声で、言ったではありませんか(*^-^*)


 その日の、帰り、丁度オムツ交換をしていて、排尿があったことを、確認。

「明日来るからね、待っててね」

と伝えて、医務室に戻り、荷物をまとめていて、急に、不安!

「あの子が、オムツ交換……どんな姿勢にされているか?ヤバイ(>_<)」

と……

で、見に行ってもらったらば、案の定・・・


 その日の遅番看護師が

「ツヨシ、夜に逝っちゃだめだよ、寂しく逝っちゃだめだよ、朝まで待っているんだよ、おい、分かった?聞こえているの?」

と言ったらば、頷いたと、聞きました。


 その日、私は、日勤だったのですが、かなり早く、出勤。

 取りあえずの仕事を済ませて、ツヨシのそばで過ごせる時間を作りました。


 ツヨシは、眠っていました。呼吸数が減っていました。でもまだ、規則的に・・・

 昨日遅番の看護師から、夜間帯、特変なく、朝もゼリー100㏄取れたと聞きました。

 そして、

「朝だよ、おはよう!」

と言ったらば、なんとなく、瞼を動かしたと・・・


 タオルケットまくって、昨日、手浴して、爪を切った手を握ろうとした時、臭いが……

 おっと、ストマ漏れて、シャツが汚れています。

「もう、最後まで手のかかる子なんだから~」

と、温タオル沢山持って、ストマパウチ交換。赤ちゃんのような、黄色い軟便と、血性の塊が、入っていて、あんなに大きくなってしまっていたのが、とっても小さく縮こまっていて、まるで、ツヨシの生命の終わりを告げるかのようで……でも、

「あら、ツヨシ、お腹綺麗になってるよ、可愛いストマ、プチトマトみたいだよ」

と、声をかけました。認めたくなかったのかな~


 その後も、呼吸が乱れることはなく、少し薄めを開いていることもあり、なんとなく、こちらを見てくれているのかな~と、そんな感じでした。


 お昼休みに、医務室に電話。ツヨシ、亡くなったと・・・


 オムツ交換で訪室した時に、もうすでにこと切れていたそうです。


 そばで看取れなかったことに、みんな嘆きました。でも、あんなに声を掛けて、あんなに擦っていたのだから、きっと、きっと、ツヨシ、夢の中でみんなに囲まれていたよね、そうだよね


「朝が来たこと、教えちゃったからな~」

と、

 ほんとに、良い方でした。最後に、約束を守ってくれました(笑)



 今まで、亡くなったことを、他の入所さんには、告げないでいました。送り火の時に、その名前を見て、「ああ、やっぱり」ということもあるし、なんとなく、気付いても、話題にしなかったり……

 でも、いずれはやって来る「死」です。ここに居れば、こんなにも穏やかに亡くなれることを知ることは、悪いことではないのでは?と、亡くなった時に、彼を知っている方に(記憶のある方に)声を掛けることにしました。


 着る物は、ボロボロで、入所され、ホームにある適当な服を着ていたので、亡くなる数日前に、新調した服を着て、四日前に、髭を剃ってたのを、少し手直しして、ツヨシ、男前です!


 声を掛けた方達は、皆さん快く、手を合わせて下さいました。そして、ホームを出て行く時にも、お別れしたいから、教えて欲しいと言って下さいました。

「この人、私のことを、おばちゃんって、言ってたのよ、私にだけ……穏やかな顔ね、きっと、苦しくはなかったね、良かった、向こうに行ったら、お茶いっぱいもらうんだよ」


 葬儀屋さんが来た時も、ツヨシさんではなく、ツヨシです!


 玄関で、職員に混じり、入居者さん8名、見送りました。

 亡くなってすぐに、会ってもらったおばあちゃん、「起きるぞ」っというほどに、肩を叩いていました。で、最後は、優しく、肩を擦っていました……


 ツヨシ、ここに来て、良かったでしょ


 私達は、ツヨシを最後まで看れて、嬉しかったよ


 ありがとう、そして、お疲れ様でした・・・合掌


 


 


 


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