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ここは、お家になったのかな~

 先日、続けて亡くなった、もう一人の方を、紹介いたします。 


 この方も、スタッフにとても好かれていた方でした。


 一人暮らしが、難しくなっていき、かなりの荒れ果てた部屋からの、入所でした。


 入所して、まず、介護日誌に書かれたこと、

「夜間帯不穏で、ベッドから出ようとすること、頻回」

でした。

 穏やかな人だし、環境に馴染めないからかな~と、心配していたらば、なんと、オムツをされていたのです!

 面接の時に作られた資料には、「伝い歩き、時に、這うようにして、トイレに行っている」と、なっていました。それが、何故か昼夜オムツ!日中、オムツに排便が出来ずに、夜間帯、そりゃあ不穏になります……

 紙パンツに変更してもらい、日中トイレ介助することで、夜間は良眠と落ち着きました。認知症は、かなり進んでしまっていて、「どうして欲しいか?」を、的確に伝えることが出来ません。苦しかったと、そして、悲しかったと、思います。


 入所して、三ヶ月ぐらいたった頃、スウィーツ外出のメンバーに選ばれて、もう一人の入居者さんと、介護員さん、相談員さん、私で商業施設へ行きました。

 その頃には、何となくですが、お話も出来て、時々笑顔も見られました。でも「問いかけに反応がある!」それだけ……何考えているかは、さっぱりわかりませんでした。


 二人共、常食ではなかったので、サーティワンアイスの動物の耳が付いているカップにしようと、メニューを見せても、反応ありません。もちろん、何味が好みかも、わかりません。

 こちらが選んで渡すも、食べようとしてくれません。もう一人は、隣で秒殺なのに……

「嫌い?○○さんの為に買って来たんだよ、食べて欲しいな~」

と、表情を伺うと、困っている様子……

「美味しいんだけどな~」

と、再度促した時です!

「こんな高そうなもの、もったいなくて食べれない」

と、言われたのです!

私としては、意味のあることを言われたので、ビックリです……

「お金はあるから、大丈夫、このおじさんが、おごってくれたのよ」

と言うと、ペコンと、お辞儀をして、これまた秒殺でした。


 帰りの車の中で、すでにアイスのことは忘れてしまいました。でも、色々お話が聞けて、楽しかった……旦那さんは、素敵な方だったようだし、子供もいるようで、いい子だと言っていました。


 それから数日後、娘さん達数人が面会に来てくださいました。アイスの話を伝えると、

「そうなんですよ、母は何でももったいないって言うんですよね~でも、アイス好きだから、良かった。ありがとうございます」

と、言っていただきました。面会中、ホントに楽しそうな笑顔で、

「ああ、帰りたくて、不穏になっちゃうかしら」

と、心配していましたが、あっさり、面会があったことを、忘れてしまいました。



 ちょうど、数人がバタバタと入所された頃で、新人四人が同じテーブルに着くことになりました。それが、大変なテーブルでして……


 皆さん、車椅子、話すことは出来るのですが、たぶん、日本語なのですが、時々、いえ、かなりの確率で、使い方間違えている。言っていることは、何となくその雰囲気でわかるのですが……

 そして、食べることに積極的!誰のお盆なのかは、知ったことではない!

 なので、せーの!で、四つ置かないと、大変です!!

 一つだけ、先に置かれようものならば、三方から手が伸びて、あっという間にお皿が消えていきます。スプーンなんていりません。手もまだるっこしいと、口から行く有様です。

 ほんとサバイバルなテーブルでした。食べている脇から、手が伸びてきます……コップもグルグルシャフトされて、誰がどれだけ飲んだか?誰のお茶が床にこぼされてしまったか?不明……

 それでも、何故か大きないざこざは起きません。何というか、けんかにならないのです。



 半年ぐらいすると、かなりおしゃべりになりました。誰かが傍を通ると、手をあげて呼び止めます。

「ちょっと、あんた、え~と、だから、ほら、○△□……」

いっつも笑っているので、こちらもつられて笑ってしまいます。又、時には困った顔をして、

「どうしよう?何で怒られるかな~わかんないよ~」と、ホールで衣服を脱ぎだします……だから、それだって……


 とにかく、一緒に居ると、楽しい人でした。面会中も、ホントに楽しそうでした。亡くなってから、娘さんに聞いた話だと、

「お前も、ここにおいで、楽しいよ、泊まっていけばいいのに」

と、言われたそうです。また、弟さんには、

「いい風呂だよ、今度一緒に入ろうよ」

と……ここ、好きだったのかな~嬉しいな


 とってもお若く見えたのですが、もう90過ぎていました。


 一か月ほど前、いっつも元気いっぱい、食欲旺盛のクニちゃんが、食事中元気がありませんし、食事も進みません。他の人ならば、

「まあ、そんな時もあるさ」

と、様子を見る所ですが、あのクニちゃんです。みんなして心配しました。それが、段々と、頻度が増えて……

「若く見えても、高齢なんだから、疲れている様子が見えたらば、横になってもらおう」

と、なりました。四人組、一人が抜けて、ちょっと寂しく……


 その内、食事に手を出さなくなってきました。促すと、何とかスプーンを握ってくれるのですが、口に持って行こうとはしてくれません。

「あらら、認知症、急に進んだのかしら」

と、思いました。又、飲み込むときに、何とも苦しそうにします。口の中を見るも、特に問題なく、水分は取れていました。


 そういえば、最近面会に来てもらっていないな~と、ご家族に食べられなくなりつつあることを伝え、今ならばまだ水分取れているので、お好きなジュースとか、持ってきてくださいと連絡しました。


 それから、食事が全くとれなくなり、もう一度連絡。主治医からも、今の状況を説明してもらう機会を作りました。


 あまりにも急に食べれなくなったため、血液検査をしたところ、ガンのマーカー値が高く、どこだかはわからないが、ガンという結果が出ました。


 それもあり、ご家族から、「苦しめたくはない」と、お看取りになりました。


 水分も取れなくなり、口腔ケアだけでしたが、それでも、元々ため込んだ栄養のおかげか、四日間頑張りました。その間、沢山の親戚の方も見え、苦しんでいる様子もなく、声掛けに目を開けられたり、手を握り返したりと、おもてなしをしていました。そう、そんな感じでした。


 発熱して、最後のエネルギーを使い果たし、足の裏にチアノーゼのサインを出し、呼ばれた家族や、スタッフに看取られて、静かに亡くなりました。

 亡くなってから、ご家族には、ベッドの上に乗ってもらって、後ろからクニちゃんを抱きしめてもらいました。それまで、我慢していた涙が、一気に流れ、涙の川を、クニちゃんは流れていきました。


 「愛する人に見送られて死ぬ」


 「痛い思いをしたくない」


それらが、どういう死に方をしたいか?の上位の答えならば……


  いいな~クニちゃん……

 

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