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リンゴ売り?いえ、四つ葉のクローバーでした

  同じ日に、二人亡くなり……


 一人は、水分も取れなくなり、私の二日連休前、もう会えないと、覚悟はしていました。まだ、追視も出来、声はかすれていましたが、何とか聞き取れました。ジャブもくり出してくれて、グータッチ出来ました。そして、これが最後だと、一杯関わって、帰りました。

 残念ながら、亡くなったのが早い夜だったので、見送りの少ない夜に、寂しく出て行かれたそうです。


 もう一人は、施設から帰る時、毎回お別れを言っていた方でした。

 何度も、亡くなりそうなことが、ありました。その度に、野生の生命力!持ち返してきた方です。

 今日は、その方の記憶を、お伝えします。


 入所された時、凄い状況でした。何しろ、パンツを履いてくれない。勿論のこと、ズボンも……

 後で、ご家族に教えてもらったのですが……

 元々は、高齢?になってきて、冷えるからと、何枚も重ね履きをしていたそうです。そんな中、腸閉塞を発症して、その時の医師から

「そんなに、いっぱい履いているから、詰まったんだ!」

と、言われたそうです。それが、トラウマ?認知症が進んできてから、パンツ拒否!いくら言い聞かせても、聞き得れてもらえなくなってしまったとか……

 で、車椅子に、直!

 問題は、毛が見える……一日に何度も、車椅子を洗わなくてはいけない。水たまりの清掃も……

 そして、うんこ!

 そりゃあ、お尻の下にあれば、気持ちが悪いのだと思いますが、それを掴んで、なぜか、食べている食器に、ポン。まるで、アイスみたいに、ポンです。

 たぶん、食べるという刺激で、排便していまい、置くとこ見つけて、ポン。何個食器を捨てたことか……で、ディスポの食器になりました。

 匂いに感覚鋭くしておかないと、えらい目に合います。投げるのですから……どこに落ちているか?踏んでしまった方も、いました。

 毛が見える問題も、本当に、問題でした。ショートステイを利用の方、その家族がいる前に、車椅子自走、なぜか、寄ってきます。おっとっと、で、回れ―右。長期入所の男性陣は、慣れてしまいましたけれど……


 入浴の後、紙パンを履いて、ズボンに靴下……介助して、次の方をやって、振り向くと、もうノーパン!早業でした。


 そんな彼女が、皮膚疾患で高熱を出してしまい、動けなくなりました。


 食事も取れなくなり、生死の境をさまよい、その間、オムツ着用。で、復活したらば、何と、履いてくれるようになりました。

 もう一つ、それまでは、手掴みで食べていたのが、スプーンを使えるようになりました。介助している時、スプーンを使用していたのですが、それが気に入ったのか、自分からスプーンを持ってくれたのです。


 それからも、色々あって、何度も、ご家族に「もうそろそろ」と、お話をしてきました。そう、もうそろそろ100歳でした。


 最後まで、食介を拒んだ方です。あの高熱の時も、二口ぐらいは口を開けてくれるのですが、それ以上は、

「いや、もういい!」

と、頑として、口を開けてはくれませんでした。


 二日ぐらいは、ほとんど何も食べないこともありました。でも、それで体調を戻しているらしく、復活します。なので、本人に任せて、無理強いはしないと、決めていました。彼女の身体は、彼女に任せていました。


 風貌は、まるで、リンゴ売りの魔女……でも、みんなからすっごく愛されていました。なぜなのか?見た目も、やらかすことも、全然可愛くないのに……


 私的には、「凛としたところ」かな~とっても働き者で、厳しいお母さんだったそうです。そして、とても優しい……


 入所されてからも、人を頼りにすることは、ありませんでした。出来ないことは沢山あるけれど、ある意味、自立していたと、思います。自分から話すことは、あまりないのですが、そのたまにで、

「ありがとう」

なあんて、言われると、まるで、四つ葉のクローバー見つけたみたい……みんなに自慢したくなるような、そんな感じ……


 最近は、心臓にも、肺にも、腎臓にも問題を抱えていて、手足が尋常じゃない程、浮腫んでいました。皮膚と言うか、膜の中に水を溜めているような、水風船のように、パーンと言ってしまいそうな、そんな感じでした。それでも、一人で食べていました。


 その日の朝、いつものように車椅子に移乗して、ホールへ。朝食の準備をしている時、テーブルに伏せているので、まだ眠いのかしらと、何度か声を掛けたそうです。その時は、反応あったそうです。が、食事に向けて、姿勢を正そうとした時、呼吸が止まっていることに、気づいたとか……


 ほんとに、日常の延長で亡くなりました。きっと、いつもの介護員さんたちの声を聞き、いつもの匂いの中で、亡くなっていったのだと、思います。


 連絡を受けて、ご家族が来た時には、まだ温かく、娘さんにギュッと抱きしめてもらいました。誰もが、

「よく頑張ったね、寂しくなるよ~」

と。


 ご家族に

「○○さんが調子が悪い時に、「私帰るよ」って言ったらば、「いや」って、言われたのが、思い出されます。みんなのいる時で、良かった、寂しい思いをしなくて、きっと……」

と、伝えた看護師に、ご家族が、

「ここにお世話になれて、良かった」

と、言ってくださいました。


 そろそろ亡くなることは、わかっていました。でも、心にぽっかり穴が開く……記憶を残すことしか……ごめんなさい、恥ずかしいことも、暴露しちゃって。でも、愛すべき方だから、許してくれるよね……

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