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老衰による死は、だれかに殺された?誰に?

  もう一方も、紹介いたします。


 こちらは、バルーンタイプの胃瘻なので、三ヶ月に一回の交換です。バルーンタイプというのは、胃に入っている側のチューブの先に、抜けないようにと、水の入った風船が付いているものです。ですから、その水を抜けば、引き抜けますし、新しいのを入れて、膨らませれば、完了です。去年までは、日帰りだったのに、というか、施設でもできることなのに、二泊三日の入院をしなくては、やってもらえなくなりました。なんで?バンパーという、胃の側にストッパーが付いていて、手術っぽいことする方が、日帰りなのに、です。

 胃瘻は、病院にとって、金儲け?と、疑ってしまいます……


 この方も、全く言葉を発することは、ありません。お名前を呼ぶと、視線を合わせて下さいます。とっても可愛いお顔をしているのですが、見つめていると、

「うぇ~ん」

と、泣き出してしまいます。涙は出ないのですが、なぜか決まって、

「うぇ~ん」

です。


 たぶん、もう、胃が小さくなり、消化吸収能力が落ちてきたのだと思います。よく吐かれます。ほんとに苦しそうに

「おえ~おえ~」

と。


 吐き始めた頃、とにかく色々工夫しました。

 ベッドの角度、体勢、流す速度、次との間隔。栄養の後、白湯ではなくゼリー状の物にしたり、量の少なくて済む、濃い栄養にしたり、薄めたり……と。それでも、誤嚥してしまったのかもしれません。肺の機能的には、低下は見られなかったのですが、発熱してしまいました。

 主治医と娘さんと相談して、解熱剤を注入し、吐き気がある時は、白湯だけで様子を見ることになりました。

 もう、命が終わろうとしている。後は、苦しくないように、と、みんなそう思って、関わっていました。

 そんな中、長男が現れ、

「お母さんを殺す気か!」

と、病院入院が決まりました。

 まあ、胃瘻交換でお世話?になっていますので、そこは、入院OKです。


 お支払いにのみ来て、ろくに顔を見ないで帰る長男でした。


 退院してしばらくしてから、長女さんが、私達に申し訳なさそうに、

「あの子は、ろくに母のことを見てこなかったのに、いざ亡くなるとなって、騒ぎだして……ほんとに、こんなに良くして頂いているのに、罰当たりな子です。申し訳ありませんでした。嫌な思いをおかけして、ごめんなさいね」

と。


 あれから、もう、二年がたとうとしています。一日の摂取量は、減らしてきています。が、まだ、時々吐かれます。とても苦しそうなのですが、なんていうか、「おえ~おえ~」にも、慣れてきてしまいました。

 相変わらず、長男さんの面会は、支払いの時だけ、それも、部屋まで行っているのかどうか……気が付かないほどに、ささっと……


 最近、気になることがあります。それは、彼女の手です。

 吐かれるので、顎の下に、タオルをひいておくのですが、その下に手を入れておくと、段々上がっていくのです。そして、喉仏を、親指の付け根で圧迫しています。タオルの上に手を出している時には、そうならないのですが……


 朝、まず、タオルをまくって、確認します。


 言葉が話せれば、何とかなった?


 私は、「美しい心」と言ってくれた という本の中の、小さな恋のメロディ に、胃瘻の方の言葉を書きました。

 きっと、言葉ではなく、メロディなのかしらと。

 とにかく、生きている限り、外に向かって何らかの感情を発信している。快、不快はもちろん、何かを望み、何かを悲しんでいるはず。

 それがわからなければ、切り捨ててしまわれがちです。メロディとして、誰かの心に響くことが出来れば、少しは安らかに生きていけるのではという思いで、書きました。


  聞いているからね、繋がっているからね



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