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特化した、施設です。

  看取りの研修を考えていて、思った事が、あります。


 そもそも、ここは、終の棲家。皆さん漏れなく、ここで、亡くなるべきだということです。


 もちろん、治療が必要な病にかかれば、病院に入院しなくては、治りません。けれども、治らないのならば、又は、老衰といい勝負ならば、もう寿命と考えて、ここに帰ってきて欲しい。ここで、亡くなって欲しい。

 苦しい我慢ばかりを強いられて、一日中寂しい思いをしながら、寝かされているのならば、ここで、馴染みの声を聞きながら、いつもの介護を受けながら、亡くなる方が、いいような……そんな気がします。


 けれども、ご家族には、入所を決める時に、その覚悟がありません。

「お母さんは、永遠に不滅!」

とでも、思っているのでしょうか?その時が近づくと、皆さん一様に動揺されます。

「死なせるために、ここに入所させたのではないのですか?」

と、お聞きしたい。もちろん、言えませんが……


 私達は、もうここでしか介護出来ない、ここにしか生活の場がない方に対して、より良い環境を提供するように、努力はしています。けれど、生活を充実させるという機能は、持っていません。

 言葉は、とても悪いのですが、

「生かしておく」

だけです。

「寿命が来るまで、安全に安楽に、その時まで、生かしておく」

だけです。

 だから、生活を楽しめる能力のある内は、ここに来ては、いけません。テレビをつけられているままに、ボーと見て、与えられた塗り絵をして。時間はたっぷりあるのに……もったいない方が、たくさんいます。


 ここに入ってしまえば、刺激のない生活、役目の無い生活でボケさせられて、ぐるぐると廊下を歩いているだけで、身体機能も落ちてきます。便秘にもなるでしょう。

 なんとか、家で過ごして、日中はデイサービスやデイケアに通う。ちょっと、幼稚園ぽいのはゆがめませんけれど、肩こりや腰痛予防の為の運動、脳トレや、いっぱい笑えるゲームとか、体や認知機能に良いことをやってくれます。そして、なにより、褒めてくれます!

 入所してしまえば、そのようなサービスは、受けられません。生活の場?これって、生活?まあ、一人暮らしや、ほおっておかれている高齢者は、こんなものでしょうか……


 入所してしまえば、介護度は、良くなりません。下がらないのです。入院中に、5を取ってしまえば、そのまま……たとえ歩けるようになっても、もう家に帰ってもいい感じになろうとも、5のままです。金銭的には、家族も施設も恩恵を受けるのかもしれませんが、当の本人は、本来居るべき場所ではないので、可愛そうなことになります。イライラしなくてはいけないし、厳しい視線に遭遇します。

「なんで、こんな人が、ここに居るの?」

と。

「もっと、ここに入るべき方が、待っているのに。共倒れになってしまいそうな家庭が沢山あるのに……なんで、こんな人が、ここに居るの?」

と。


 桜の季節になりました。

 ここに就職した春、玄関の桜がとてもきれいな事を、車椅子の入居者さんに話すと、

「見に行きたい」

と、言われて、お連れする約束をしてしまいました。ほんの、数分、エレベーターに乗るだけなのに……介護スタッフの方に、大目玉を食らいました。

「皆行きたいと言うでしょ。そんな時間なんて、私たちには、無いの。あなた一人で出来ないでしょ、勝手な行動は、慎んでもらわないと!」

 じゃあ、なんで玄関に桜が植わっているの?誰が見る為の物?桜を見るのは、無駄な時間?

 時間、作れないのかな~楽しんでもらえるのに……


 ここでは、楽しんでもらうということは、無駄な時間です。


 ここは、穏やかに低空飛行をして、苦しむことなく亡くなれるように、お看取りをするための施設です。生きてきたことの集大成、

「お疲れ様でした」

と、お見送りをする。ここに、入所させるということは、

「では、どうか穏やかに亡くなれるように、よろしくお願いします。なるべく、面会に来て、一緒に見守らせてください」

が、正解かな~

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