どこから、自由になりたいのでしょうか?
私は、小説 「新党」立ち上げました の中で、「加藤家」というグループホームを作りました。自分の家として、安心して暮らせることが、高齢者の、特に認知症の方にとって、大切だと感じたからです。
しかし、どんなに安心して暮らせる居住空間で、ある意味、至れり尽くせりであったとしても、不満は尽きません。
先日も、施設の中で、「キ~」となってしまった方。お茶の入ったコップは投げるし、大きな声で、
「嘘つき!!」
「悔しい~」
「馬鹿にして!!」
と、周りにいる入居者さんも、おちおち食事が出来ない状況……
荒れた理由、夜中、コールを押してもすぐ来なかったとか、汚れた服を着替えさせて欲しいと頼んだのに、そのまま連れてこられた(着替えていました)とか、勘違いだと、言われたとか、色々……
でも、ここまで興奮してしまったのは、
「家に帰りたい」
と、急に思ったからでした。
その方の場合、月に3~4回は、娘さんが美味しいものを持って、面会に来てくれたり、介護タクシーを使って、外食にも行っています。素敵な服だって、買ってきてくれます。
この施設の半数近くの方は、単身者。又、家族がいたとしても、ほとんど面会に来てくれない方もいます。ですから、他の入居者さん達からすれば、羨ましい存在なのですが、ここに居ることに、納得されていません。もう、五年以上居るのに、ここは、家になっていません。
あまりにも、うるさい?ので、みんなから離して、医務室前で話を聞くことにしました。
「私は、家に帰りたいと言っているのに、○○子が、ここに閉じ込めたんだ!お母さんをこんな目に遭わせていいはずない!育ててやったのに!キ~」
「ここは、そんなにも嫌な所ですか?」
「○○子は、家で好きなものを食べて、私がいないからって、好きなように暮らしている。私には、自由がない!」
「お好み食で、特上寿司食べたでしょ、こないだは、外食したし……○○子さんが、連れて行ってくれたでしょ?」
「私を家から追い出しておいて、キ~」
立ち上がりどころか、寝返りすら出来ません。車椅子乗車も、全くの介助、自走は、ゆっくりと数メーターのみ。食事は、なんとか一人で食べられるも、セッティングなどしてもらわなくては、無理。オムツ交換に、ストレッチャー入浴……それらを、どうやって家に帰ってから、やってもらうのか?
ヘルパーさんを入れるとしても、一日一回のオムツ交換という訳にはいきません。すべて、娘さんにやらせる訳?いくら、赤ちゃんの時、オムツ交換をしたからといって、
「今度は、お前がやれ!」
は、無理があると、思います。
「○○子さんも、仕事をされているし、家庭もあるから、○○さんの事ばかり、付きっ切りで介護するのは、難しいと思いますよ。○○さんにとって、ここに居た方が、快適だと思いますけれど?」
「私は、一人でトイレに行きたいのに、何で出来ないの!立てないのが、悔しい~」
と、言われましても……
「体が思うように動かないのは、お辛いですね」
「私は、立ちたいと思っているのに、出来ないのよ!やってもらいたいと思っているんじゃないのよ!何で出来ないの!嫌だ!!!!」
もしかしたらば、「介助してやっている」という風な態度で接しられていると、感じたことがあるのでしょうか?でも、少なくとも、「出来る癖に、ズルしてる」なんて、思っている人は、おりません。
「痛い脚に、軟膏を塗りましょうか?」
「うん」
ここが、終の棲家だと、諦めて下さることは、たぶん、ないでしょう……
脳梗塞をおこして、急に言葉を失ったり、体が動かなくなったり……それを受け入れることは、並大抵ではないと、想像は、出来ます。
認知症を患い、新しいことを記憶できない、出来ることがどんどん少なくなってしまう……自分に対する不安。どんなに心細いことでしょう。
では、残された時間、どのように過ごしたいか?
私は、まず、楽しくない人生ならば、終わりにしたい。けれど、そこまでに時間がかかるというならば、せめて、愛する人に迷惑を掛けたくない。金銭的にも、時間を使わせるという負担も、そして何より、心の負担になりたくない。
「いい所に入れて良かった。なんか、気楽に過ごせているみたいだし」
と、家族に思ってもらいたい。そして、願わくは、家族のために働いていた頃の記憶のままに、そのイメージを保ったままで、終わりたい。
介護が必要になってしまったのは、諦めるとして、その後どう生きるか?生きなくてはならないとしたらば、どう生きたいか?どうなりたくないか?
考えておかないと、そこからの人生、意外と長い!
基本、痛い・痒いのは、嫌。怒鳴られるのは、嫌。無視されるのも、嫌。
「ありがとう」
「おかげで、助かったわ」
「お上手ですね」
とか、言われていたいな。
ここで暮らしている方々を見ていると、
「ああ、私、無理」
と、思うことが、多すぎます。
「よく、我慢しているな~」
と、感心してしまう、というか、選択筋が無いのですから、、慣れるしかないのかもしれません。悲しいですが……
終わりに出来無いのですから、少しでも楽しく暮らして頂きたい、笑ってもらいたいと、日々思うのですが……難しいですね……




