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それって、認知症?わがまま?天然?

  まだまだ、寒い日もありますが、施設では、もう、春になりました。とても賑やかです。

 特に賑やかなのは、みんなの集まるホール。

「もう、死んじゃう~」

と、ハイトーンの声で、叫んでいる方。コップでテーブルを叩きまくって、奇声を上げている方……秋から冬にかけては、表情が硬くなり、ほとんど話さなくなるのですが、この時期になると、叫びだします。そう、季節なのです。

「今は、何の季節?」

と、聞いても答えられない方々が、春を感じて、一斉に賑やかになります。日照時間が増えたせいなのでしょうか?ほんと、不思議です。


 先日は、くしゃみと共に、鼻水が飛び散ったという理由で、熱を測られ、微熱にもかかわらず、一人、隔離されてしまいました。咳をしている訳でもなく……スタッフにはそんな人いっぱいいるのに、入所者さんは、くしゃみ一つ許されません。

「春だから、花粉も飛んでいるし~」

「さっきまで、布団を首まで掛けてたし~」

と言っても、入所している高齢者は、完璧な健康状態を要求されます。別に、お元気そうだし、食事も完食、問題ないと思うのですが、介護員さんたちは、病人を作りたがる傾向にあります。感染症:インフルエンザやノロウィルスが流行ってしまえば、体力のない高齢者、死者も出るかもしれません。もしものことを考えて、隔離することは、間違っていないと思います。だったらば、です。体調が悪いのを押して仕事に来て、咳き込むのは、やめて欲しい。マスクしているからいいというものでは、ありません。

「熱が出て来たから、帰りま~す」

って、手遅れじゃ!!

 でも、何故か入居者さん達、うつらないんですよね~ウィルスも、宿主を選んでいるのでしょうか?


 施設では、入居者さん達にとって、より良い環境、より良い介護を提供出来るようにと、各部署から問題を持ち寄って検討する、ケース会議を、一人一人に対して、開きます。特に変化の無い方は、半年や一年ごと、問題が出れば、その時点で開きます。先ほどの叫びだす方の場合、

「車椅子で、少し外をお散歩してくる」

「手や足にクリームを塗って、マッサージ」

「エプロンたたみ等、出来ることを促して、感謝する」

「他の、興奮気味な方の傍に座らせない」

等々、検討されました。本人の安心安楽、危険の回避の為ではありますが、問題となっているのは、介護者にとっての、リスク。どのように環境を整えれば、介護者の負担が減り、リスクを負わされないで済むか?ケース会議の開催は、介護員さんからの不満、そこから始まります。では、最近の例を……


 前にいらした施設から、なんとか引き取って欲しい?という、押しが強く、こちらとしても、お断りする材料に欠け、入所された方です。本人としては、前の施設に居たかったらしく、とても帰りたがっていらっしゃいました。家族に言い包められて来た?そんな感じです。

 何かにつけて、自分の主張を曲げないで、根拠の無いこだわりを通そうとする。故に、可愛げのない、めんどくさい方でした。

 たとえば、眠前薬を飲む、水の温度。微妙なぬるま湯を要求してきて、なかなか希望に添えない。居室で、水とお湯を調合して、希望に合わせるなんて、やってられません。本人曰く、

「この温度でないと、せっかくのお薬が効かなくなります」

と……まったく、意味不明です。何℃という指定ならば、何とかなるのですが、その時々の本人の感覚なので、対処の仕様がありません。ただのわがまま、自分に注目して、特別扱いしてもらいたいだけ!!と、なってしまいます。

 その方が、最近急に、活気がなくなり、言葉少なくなりました。いつも不安を訴えられ、特にご飯前、「看護師さん」と何度も呼ばれ……

「お薬を下さい」

「便が、出ていません」

「動悸がします」

「トイレの回数が多くて、困っています」

等々、傾聴させられていたのが、嘘のよう、ボロボロこぼしながら、黙々と食べています。

 トイレに座れば、コールを押さずに自分から降りて、転んでいます。夜間も、ベッドからずり落ちて、転んでいます。眠前薬の飲み過ぎで、昼間もボーとしているのか、眠前薬が効かなくて、動き回るのか?わかりませんが、身体中アザだらけ。頭を打った時には、整形受診をしましたが、特に問題なし。上手く転んでいるようです。

 そこで、ケース会議を開き、本人も前々から受診を希望していることもあり、服薬調整の為、行くことになりました、精神科。まあ、認知症にも、対応していますが……



 思うのですが、ここで暮らせるということは、すでに健常者ではない?ボケていないと、無理です。

 時々は、季節の催しなどもありますが、ただ、見ているだけ、食べるだけ。介護者の自己満足でしかないような、そんなのもあります。とにかく、何にもすることがない!毎日、決まった時間に起こされて、出されたご飯を食べて、出して、寝て、又食べて。ただただ、それの繰り返し。季節感も何もあったものじゃない。

「ボケろ~ぼけろ~」

と、促されているようなものです。出来上がってしまっている方にとっては、安心安楽な環境で、穏やかな経過を過ごしていける、そんな所かもしれません。でも、まだまだ、身の回りのことが出来て、自分の意思があるのならば、もっと、刺激のある所、何か役目を持てる所に居るべきだと思います。

 もったいない!


 みんなから、可愛がられている?と言うと、語弊があるかもしれませんが、要するに、「愛されている」方が、います。

 認知症からか、動く意欲もなくなってきて、なんとか自分で食べられのに、訴える様な視線で、食事介助を求めてきます。でも、そこで負けては、手が動かなくなってしまうからと、そばで応援!

 話しかけると、チョット間をおいてから、お答えが返ってくるのですが、それが、実に面白い。とんでもない言葉が飛び出してきたり、それってわかってて言ってるのか?と、感心してしまうお言葉、返事を待っているのに、ため息で終了、とか……多種多様です。まるで、ガチャポンを待っている心境です。ただ、残念なことに、その時大笑いした言葉でも、かみ合っていない話というのは、なかなかこちらの記憶に残せない。不思議なもので、ランダムな数字を覚える様なものなのでしょうか?可笑しかったという、記憶しか残りません。そんな中、筋が通っているので、覚えている会話を……


「ああ、そうそう、今日は上手に食べてますね、頑張れ」


こちらを振り向き、ウルウルした細い目で見つめられて、五秒後……


「ん~ん、そんなに褒められると、太っちゃう~」


って、もう、十二分に太っていらっしゃいますから!


 愛されている理由は、どんなに疲れている時でも、癒してくれるから……です。


 


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