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クルクル……パー!

  病院に入院されていた入居者さんのご家族から、亡くなったという知らせがありました。


 80歳代ですが、すでに会話は出来ないし、食事も介助が必要。でも、心が通じ合えていたと……早番の時は、ホールに座っているアイちゃんの目ヤニを拭いて、笑わせるのが、私の楽しみでした。


 過去に何度も、食事量が減ってきて、もうそろそろかな~と、思われたことがありました。月に三回ぐらい、ご家族が好きなものを持って来ては、食べさせて下さいます。はた目では、家族と分かっているのかも、怪しい……それでも、面会に来ていらしていました。

 ご家族には、内緒ですが、

「クルクル……パー!」

と、目の前で手をまわしてから、開くと、

「ケタケタケタ」

と、笑ってくれます。その後は、ご機嫌がよく、少しは食が進む。アイちゃんの「ツボ」でした。


 まだ、しっかりしていた頃は、気が強くて、とても難しい方だったと聞きます。そのせいか、話が出来なくなってからも、嫌がっているというのは、一目瞭然、態度で、分かります。特に、食事。嫌いなものは、べーと、舌で押し出します。というか、ぺっと吐きかけて来ます。なので、

「あ~もう、ダメだ」

と、介護者は諦めざる負えません。

 今思えば、そのおかげで、生き延びていたのかもしれません。それが、認知症、老化が進み、だんだん、拒否することが、出来なくなってしまいました。

「食事介助が、楽になってきた」

なんて、言われるようになり……

ついに、その日が、来てしまったのです。



 その日まで、嫌がらずに食べていた。それは、介助のスピードについていけなくとも、口を閉じれなかったから……そして、ついに、対応しきれなくなった……



 医務室に連れてこられた時には、いつも目を半ば閉じているのに、両眼を見開いて、アップアップしていました。吸引をしたのですが、誤嚥しているソフト食を取り切れない。入れ歯を長い間外しているため、舌が肥大化してしまっていて、吸引の管が入っていかないのです。鼻から入れれば、首が拘縮していることもあり、なかなか入らず、出血してしまう……本人は苦しそうで、このままでは落ち着きそうもないため、病院受診することになりました。


 やっぱり、誤嚥性肺炎。たぶん、今始まったことではなく、かなり前から、誤嚥していた、という、診断でした。


 なんとか、肺炎は落ち着き、今後のことを、医師と相談する場で、ご家族は胃瘻を望まず、食べることのリハビリを始めました。

 一日一回のゼリー食、これが、三回になったらば、施設に戻ってくるという、家族からの連絡でした。

「そろそろかね~」

と、待っていたのに……


 食べられなくても、戻ってきてほしかった。

 病院で、アイちゃん、笑うことはあった?「べっ」とゼリー食を吐き出して、みんなを困らせてやった?ちゃんと、目ヤニを拭いてもらっていた?


 「こりゃあ、無理かも」

と、思った時点で、帰してほしかった。


 病院で亡くなるのは、寂しいだろうし、待っていた者としても、やるせなくて……

 あの時、バイバイして、頭を撫でた……もう一度、会いたかったな~

 

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