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私の気持ち、持て余しています 2

  17話、私の気持ち、持て余しています の、続きです。


 え~と、言ってやりたいけれど、やはり、面と向かっては、言えません。なぜなのか?


 たぶん、立場が違うから。


 同じ、入居者としてならば、言えるのだろうけれど、介護する側と、される側。障害を持っている者と、いない者。言ってはいけないことだって、あると思います。それが、たとえ、相手のためを思っての発言であったとしても、どれだけ相手を傷つけてしまうのかなんて、わかりません。私には、その責任が取れないのだから……私のイライラを、闇雲にぶつけることなど、リスクあり過ぎです。


 あの方は、私が悩んでいることなど、夢にも思っていないでしょう。悩んでいる?いえ、悩んでなんか、きっとしていません。ただ、ただ……


 仮想の会話を、してみようかと思います。お付き合い、下さい。


A「あなたは、私のことを、嫌いなようだ」


私「嫌い?そうかもしれませんね。ここにいる限り、私にとって、あなたは、嫌いな人です。私はあなたを、ここの住人として、認めたくありません」


A「それ、どういうことさ」


私「ここは、一人暮らしを続けることが、不可能になってしまった方や、家族が介護しきれなくなってしまった方の、終の棲家です。その身体機能や、認知症が、もう回復の見込みがなく、歳と共に進行してしまう方達。もっと言えば、あと少しで、人生を終える方々に、安心安楽に、その時を待ってもらうだけの場所です。あなたは、そういう方ですか?」


A 沈黙


私「まだ、60過ぎたばかりですよね。この先20年、どう生きていきたいと、考えていらっしゃるのですか?選択筋は、あると思います。ただ不満を言って、あなたにとってのここでの生活を、快適にしようとせずに、生きていくことを、お考えになった方が、いいと思います。今、スタッフに文句を言っていることが、全て叶ったとして、あなたは、それで満足できるのですか?やってもらうだけの毎日で、幸せなのですか?生きていることが、誰の為にもならないことに、我慢が出来るのですか?

 私があなたの事を、嫌いな理由……それは、あなたのようになりたくないから。認めたくないからです」


 ああ、言ってやりたい!



 本日の、楽しい話を一つ


 かなり、認知症が進んでしまった方。お昼ご飯を半分ほど食べて、向かい合っている二人が、会話?をしています。


あっちゃん「ここだけの話だよ。男って、まったくどうしようもない。」

      向かいの、いっちゃんに、身を乗り出して、話しかけます。

     「いい年して、ほんと、ダメ。わかっちゃないんだから、○×△……でしょ?」

いっちゃんは、すました顔で、やはり、身を乗り出して、

     「で、やったの?」

 その後も、話は、どうかみ合っているのか微妙ですが、ガールズトークは続きました。


 こんなことが、あちこちで起きています。亡くなった旦那さんとの、のろけ話や、結婚はしなかったけれど……なんて、武勇伝、いえ、美しい思い出等々。どこまでが、事実で、どこからが、脚色している願望かなど、わかりません。いいんです。話すことは、脳に刺激を与えてくれるし、喉を鍛えて、飲み込みも良くなります。みんな、乙女の顔をされますし……男性も、昔の栄光?を、それはそれは、誇らしげに話してくださいます。恋は、終わっても、恋です!



 私は、A氏に、どう接すれば、良いのでしょうか?考えないことは、簡単だと思います。でも、それでは、見捨ててしまうことになる。けれど……そう感じることは、私のオゴリであり、どこか、自分の方が上、と、思っているから?

 わからないのです。自分の価値観で、人の幸せにどうこう言うことは、いけない事だとは、思います。でも、シカと出来ない。きっと、どうしようもなく、お節介なのですね……

 

 食事を待つ間、広告紙でゴミ袋を折っているお婆さん達がいます。

「いつも、ありがとう」

と、言うと、

「これしか出来ないけど、喜んでもらえて、嬉しいよ、使ってね」

と、言ってくれます。


 食事用のエプロンをたたんでくれる方、隣の人がこぼしたお茶を、拭いてくれる方、同じテーブルの方が、お箸を落としたことを、教えてくれる方……

「ありがとう」

と、言うと、とっても嬉しそうな表情になります。

 人間は、誰かの役に立ちたいと、「ありがとう」と、言ってもらいたいと、それが、生きているということだと思うのです。


 読んでくださっている方、教えてください。


 死は、やがて誰にでもやって来ます。そこまでの過程は、人それぞれですが、死ぬことは、出来ます。が、生きることは、ちゃんと、生きるということは、努力が必要。不満があるならば、ちゃんと生きる努力をして欲しい。


 ああ、やっぱり、言えません。

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