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透析室より  1

  私が透析のクリニックで働いていたのは、もう、十年以上前のことです。今、よく駅前に看板を見かけますが、その頃とは色々変わっていることでしょう。ですから、その当時は……という視点で、お読みください。


 まず、人工透析とは、何ぞや?から


 ごくごく簡単に説明すれば、「尿を作る腎臓に問題が出た時、透析システムに、代わりをしてもらうこと」です。


 人間が食べたり飲んだりすると、それを分解して、身体を作る栄養や、身体を動かすエネルギーを作ります。しかし、その過程で、副産物として、毒素を作ってしまうのです。又、血液の流れによって、吸収した栄養を動脈血に溶かし、隅々の細胞に運び、今度は、細胞から出る老廃物を、静脈血に取り込んで、腎臓へと運ばれます。それらを、余分な水分と共に、尿として、体外に捨てる。これが一番の、腎臓の役目です。だから、腎臓に問題が出ると、浮腫ふしゅむくんでしまいます。そして、尿毒症という、毒が溜まった状態……生死に関わる病になります。

 そこで、弱った腎臓で浄化出来ない血液を、身体の外に出して、「ダイアライザー」と言う、「透析器」に通して、拡散、濾過、吸着……とにかく、毒抜きと不要な水分を取り除いていきます。これが、人工透析です。

 ただ、腎臓の働きは、それだけではなく、こないだNHKでもやってましたが、大切なメッセージを身体中に出しています。透析システムだけでは、とても担いきれず、薬や、食事制限などの生活管理が重要になります。


 さて、腎臓が、どうやって血液を綺麗にして、不要なものを尿として捨てるのか……腎臓ってどういう構造の臓器か?


 これまた、ごくごく簡単に説明すると、「腎臓は、とても細い血管の塊です。その中を心臓の圧、つまり、血圧を使って血液を流します。すると、その血管壁の穴よりも小さいもの、水分などが押し出されて、大きな赤血球など、大切なものだけが残って流れていきます。その後、ここが凄いのですが、人体に必要なものを再吸収して、ほんとに要らないものだけを、尿とします」かな~

 余談ですが、透析している方に、糖尿病の患者さんが多いです。これは、糖尿が、血管を痛めつけるから。腎臓は、とても細い血管の集まりですから、ひとたまりもありません。


 人工透析に使う、ダイアライザーは、極細かい繊維の詰まった筒です。この中へ血液を流すことで、血液を綺麗に、毒素を取り除いていきます。

 勤めていた時、バイト君が、ワゴンに山盛りにしていたダイアライザーを落としてしまい、慌てて拾い上げました。それに気づいた臨床工学士

「周りにキズが無くても、中が破損していたらば、役に立たないんだよ!これって、一本一万円近いんだから、大切に扱え!!」

と。

 透析一回につき、お一人様、一本使用。それを、週三回。そこに、人件費やら、薬代、施設経費……人工透析は、大変です。


 でも、大変なのは、経費だけでは、ありません。


 人工透析は、週三回、一回につき3~5時間血液を回します。それに比べ、健康な人の腎臓は、24時間、休みなく働き続けています。つまり、24×7を、3~5×3で、やってのけるのです。一回につき四時間で計算すると、なんと14倍のスピードです!

 これで身体に無理を掛けないはずは、ありません。


 人工透析は、とても疲れるのです。


 理由は、いっぱいあります。

 とにかく、急速に身体から水分を強制的に抜きます。そして、電解質バランス(いわゆる、カルシウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウム等々)の劇的な変化……身体がついていけなくなるのです。

 血圧の変動、筋肉の痙攣けいれん、痺れ、強い吐き気やめまい、頭痛。そして、寒気、反対に、暑くてたまらないなど、人によって、辛さは様々です。

 

 あの頃、看護助手としての仕事の中に、

「希望者へ、アイスノンやお湯を入れた湯たんぽ、温タオルを、布袋に入れて渡す」

が、ありました。透析の用意から、止血まで、患者さんは、長い時間じっとしていなくてはなりません。途中、温タオルが冷えてきて、交換を希望される方が出てきます。当然の権利とばかり、私達に「変えて下さい」と言える方はいいのですが、辛い中、「いつ言おうかしら」と、我慢している方もいらっしゃいます。で、交換用の温タオルを、バスケットに入れて、御用聞きに行ってしまったのです。そしたら、先輩の看護助手さんに、大目玉を食らいました。

「そんなことして、仕事が増えるでしょう!あの人たちは、つけあがるんだから!!」

私は、

「あのさ~座ってガーゼ折っているだけでしょうが」

とは、言えませんでした。


 どういう訳か、看護学校からの実習先でも、透析患者さんたちは、

「気難しくて、自分本位で、扱い難い人」

と、悪く言われていました。そんなことないのにな~と、いつも思ったものです。それは、あのクリニックでお会いした、沢山の患者さんとの思い出、生き様を見て来たからだと……今でも、お顔や声を思い出し、励まされています。


 ここからは、そんな皆さんのことを、書いていこうと思います。

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