表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/299

簡単には、死ねません。悪しからず

  「死にたい」と、面と向かって言われたことが、ありますか?


 私は、何度となく、あります。それは、お世話をしている高齢者から。この、「お世話をしている」と、介護者が思うこと、それが、このような言葉になってしまう……そう、最近思えてなりません。


 勿論、痛い所がある、思い通りに身体が動かない、食べたい物が食べられなくなった、行きたい所に行けない、等々の不満から、愚痴として「もう、死にたい」と言われることも、あります。そんな時は、

「ごめんなさいね、順番が回ってくるまで、もうしばらくお待ちください」

と、伝えます。

「只今、大変混雑しております。もうしばらく、この世を楽しんで頂けるように、こちらも努力致しますので」

と。一時的でも、笑ってもらえれば、大成功です。

 人間、痛みを抱えて生きていくことは、辛いものです。ただ、痛み刺激は、意識しなければ、ほとんど感じません。何かもっと、気になることや、楽しみがあれば、忘れることも出来ます。痛みを紛らわす……です。

 その反対に、「どこか悪い所はないだろうか?」と、暇に任せて心配すれば、どこかしら不調の箇所を見つけることとなります。何にもすることなく、ポツンと車椅子に座らされていては、自分の身体のことばかり考えてしまいます。痛い、痒い、痺れる……仕方がありません。


 でも、ぼそっと、「死にたい」なんて言われると、ほんと辛いです。

 夜中、10分と間を開けずに、ナースコール。

「体の向きを変えて下さい」

「腰がいたいので、痛み止めを塗って下さい」

「体の向きを変えて下さい」

「足が冷えてきました」

「体の向きを変えて下さい」

「背中が痒い」

「体の向きを変えて下さい」

「頭が痛い」

等々。

 やっと、朝を迎えて、こちらも疲れ切っている所で、

「死にたい」

と、つぶやかれる。

「なんで~、こっちのセリフじゃ!」

と、言いたくなる気分。いくら、要求されたことをこなしても、その方の何の助けにもならないなんて、悲し過ぎます。

 生きている意味を、見いだせないでいるのです。

「なんで、こんなに体が辛いのに、生きていかなくてはならないのか?」

「私は、生きていても、何の楽しみもない。私に生きていて欲しいという人は、いるのだろうか?」

「介護されなければ、もはや生きていけない身体。お世話されるだけ……それって……」


 「死にたい」と言える方は、まだいいのかもしれません。意思を伝えることも出来ないで、横たわっている方々も、たくさんいらっしゃいます。意思そのものが、もう「無い」と、みなされて……


 「死にたい」と言わさない介護。考えていくことは、とても大切ですが、「出来る」なんて、思ってはいけないと……それは、そもそも、介護されるところから、始まっているのですから……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ