第六話 訪れる別れの刻
ボルドウィン魔導王国宰相、ルーミス・サリナスは、久方ぶりに古巣のアトモフィス自治領の領土――アトモフィス・クレーターを、訪れた。
現在の主君にして妻であるナユタに求婚し、ボルドウィンに移ってからというもの――多忙のあまり年に何度かという頻度でしか訪れることがなかったのだ。
前回に訪れたのは、たしか半年以上前だった。亡くなった、サタナエル一族女子の葬送を依頼されてのことだった。
それが――まさか、今回――。
整備の行き届いたトンネルを抜け、通路を歩く。
かつてのサタナエル「本拠」の要塞の様からはだいぶ明るく広く、開けはしたが、まだ上空からの巨大生物襲撃のリスクをゼロには出来ていないため、壁や天井を取り払うことはできない。しかし、行き交う人々は多く活気があり、アトモフィス自治領の貴重な収入源たる観光客の姿も増えた。
ルーミスの際だった美男子ぶりに、すれ違う女性はことごとく振り返り恍惚の表情を浮かべるが、話し掛けられるような見知った人物はいない。
その後は、サタナエルの取引場を一新した市場や、「宮殿」を改築した伯爵居城と小さな城下町を抜ける。ここも大変な賑わい、往来を見せており、この国の創始者の一人として改めて誇りを感じるルーミス。
だが――今回彼が会うべき人物は、本来いるべきこの居城にはいない。
その人物が待つ別の場所に向けて、かつて「施設」と呼ばれ、今は図書館兼学校となった場所の脇を抜ける。
展開する広場は、彼が仲間たちと共にサタナエル七長老を相手取り激戦を繰り広げた場所だ。その脇に――厳重な警備を施された大階段がある。警備兵は、同盟国の超重要貴人であるルーミスを見るや、最敬礼して鉄格子を開けてくれた。
そこを降りれば――未だ文明とは隔絶された、未開のジャングルが以前と変わらず広がる場所。
ルーミスのような戦闘者でない限り、入門は許されない。
アトモフィス自治領は政策として、人間の領域を広げる開発は推し進めつつも、自然の場所にできるだけ干渉しないことを方針として定めている。よって、人間が自由に往来できる都合の良い道などない。容赦なく、怪物の襲撃を受ける場所。時折威勢の良い冒険者がジャングルに入ろうと警備兵と揉める姿が散見されるが、一切許可されてはいない。
大陸で最も危険な場所と云えるが、ルーミスにとっては、勝手知ったる庭のようなものだ。
怪物に遭遇しづらいルートも熟知しているし、稀にワイバーンロードのような強敵に遭遇したとしても――。血破点開放の更なる高みを極め尽くしたルーミスにとっては、軽い肩慣らし程度でしかない。
程なく、問題なしに目的地に到達した。
その場所は――。
サタナエル大戦最終決戦の地――。同時に運命の始まりの場所。
マイエの、「家」だった。
小川の橋を渡った所にある広場からーー。
懐かしい声がいくつも、聞こえてくる。
「だから、おれの勝ちだって、いってんだろ! なんども、いわせんなよお! アシュヴィン!!」
「そんな……ずるいよ、レミオン……! いまのはいくらなんでも、ないよ……。きみはいつもそうやって、自分のつごうがいいようにばっかり……ぼくは、ぼくは……」
「ああ! まあたやってる、あんたたち!
どうして、仲良くできないのよ! いっつもおとーさんに云われてるのに! どーせいつもどーり、あんたがアシュヴィンをいじめてんでしょ、レミオンのばかやろーが!」
「うるせえな、エイツェルねえちゃんはだまってろよー!」
「あらあら、またケンカ? よく飽きないわねえ。
レミオン。あなたこの前、あれだけシェリーディアさんを怒らせておいて……。叔母さん、今回のことも云っちゃうわよ。同じことになったらイヤでしょう?」
「……うあ……やだ……シェリーディアおばちゃん、ちょーこわいいい……やだあ。
おねがい、あやまるから、なんでもするから、シェリーディアおばちゃんにだけはいわないで……ブリューゲルおばちゃん……」
ルーミスはそれらの会話を聞いて、苦笑しながら広場に入った。
「やれやれ……相変わらずのようだな、お前たち子供は。元気なのはいいことだが。
ブリューゲル姉さんには、苦労をかけるがな」
「ルーミス!!」
「ああっ!!」
「ルーミスおじちゃん!」
「ルーミスおじちゃんだ! ひさしぶりだねー!!」
子供たちは一斉に、ルーミスに飛びつき抱きついた。
10歳になった、エイツェル。
9歳にもう少しでなる、アシュヴィンとレミオン。
いずれも子供ながら――普通の大人を軽く凌駕するパワーを誇る3人の手荒いタックルを受けるのは、血破点開放を使うルーミスでなければ危険なレベル。だが教育されている彼女らは、ちゃんと相手を見てやっているのだ。
「ああ、みんなひさしぶりだな。元気そうで安心したぞ。――エルスリードのやつは、またみんなと遊ばず籠もってるのか。悪いが、呼んできてもらっていいか?」
「うん! まってて! すぐ呼んでくるから! エルスリードーー!!」
云うと、3人の子供たちは一斉に家に向かって駆けていく。
ルーミスは、残ったブリューゲルの横顔を見つめた。
ブリューゲル・フォルズは――サタナエルが滅亡した9年前の直後から、まるで呪縛から解き放れたように、幼児の精神状態から奇跡の回復の兆しを見せた。
そして失った時間を取り戻すように、急激に精神の成長を成し遂げていったのだ。
その様子に、シエイエスとルーミスは涙を禁じ得なかった。そして孤児院院長のサディに手厚く礼をし、彼女をアトモフィスに引き取ることを決めた。
アトモフィスに来てからは、組織滅亡以来レエテ一家に仕えてきた元乳母アニータ・ストゥーラスの教育を受け、ともに子供たちの保母役として役割も与えられた。
29歳となった現在では――完全に、大人の女性としての精神性を獲得するにいたった。恋人も、できた。
もちろん、失った人生経験の差は埋めがたい。本来高い知力も生まれつき備える彼女は、信仰と法力を学んだり頑張ってはいるが、24歳の弟ルーミスの方が精神的に大人である事実は変わらない。
それでも、姉と弟として、2人にしかわからない姉弟の思いというものはある。きわめて自然に接することができていた。
そして、あの忌まわしい「フォルズ家」の秘密もシエイエスから聞き、改姓を勧められたが――。
それでも彼女はフォルズの姓を捨てず、自分も贖罪に尽くすと約束してくれたのだ。
「姉さん。あの子達は――」
「……健気な、子たちよ。表面は元気にしているけれど、とても落ちこんでいるしナーバスになってるの。
母親か、母親同然の人があんなことになって……。
それは、あなたの娘エルスリードも、同じよルーミス。
いつものあの子の様子で接してきても、決して怒らないでね」
「ああ……わかってるさ」
眉間に皺を寄せる義父ルーミスの元に、9歳の娘エルスリードはとぼとぼと下を向きながら歩いてきた。
紅い髪の毛や肌の色、高い魔導の才能、知能、プライドは母ナユタと同じ。そして容姿の特徴の多くを実父ホルストースから受け継ぐ彼女は、ずば抜けた美少女だった。しかし――どの遺伝子や環境が影響したものか性格はやや陰気で気難しく、一匹狼的性質だった。それで、エイツェルら友だちとは険悪ではないものの、距離を置いているふしがあった。
「おとーさま……いまごろ何しに、きたの……?
レジーナぎちょう、ヘンリ=ドルマンへいかやオファニミスへいか、ソルレオンへいか。おとーさまよりいそがしいひとみんな、いちどはきてくれたのよ。
どうして、おとーさまが、いちばんの法力つかいのおとーさまが着くのが、こんなに、おそいの?
どーして!?」
「エルスリード……すまないな。
お前に云えなかったがお父さまはとても忙しくて……一週間も、かかってしまったんだ」
「おかーさまなんて……れんらくも、よこさないんだって、マルクさまがはなしてるのを、聞いた……。
そんなの、おかしい!!!
だってだって……レエテおばさまが、あんな……あんなことに、なってるのに!!!
いちばんのお友だちだって、いってたのに!!!
もう……もうしらない!! おとーさまも、おかーさまも、みんな!!!」
それだけ云うと、エルスリードは背を向けて走り去ってしまった。
「待つんだ――エルスリード!!!」
義理の娘の背に手を伸ばしたものの――その言葉にダメージを受けたルーミスには、走って追いかける気力は、なかった。
弟の背に手を置いて、ブリューゲルは云った。
「……行きましょう、ルーミス」
「ああ……そうだな、姉さん」
樹の根で形成されたカボチャの形状。独特の外観の家のドアを、意を決してルーミスは開けた。
そこには――。実に多くの人間が、集っていた。
「来てくれたか、ルーミス!! 待っていたぞ。さあ……すぐあいつに会ってやってくれ」
出迎えたのは、彼の兄、シエイエスだった。
「兄さん。どうだい……様子は」
ルーミスの問いに、目を閉じ寂しそうに笑う、兄。
心の整理はある程度ついているようだったが、気丈なのはあくまで立場上のことだ。目元、貌のかすかなやつれ方で、弟のルーミスには分かる。おそらく毎夜、一人密かに泣き明かしているのだろうということが。
「……覚悟はしていたが、全く手のつけようがないというのが、正直なところだ。
お前の力で少しは元気になってくれるといいんだが。
――レエテ。ルーミスが、来てくれたぞ」
開けられたドアの先。そこに居た、ルーミス自身の人生を変えた、かつて恋をしていた、偉大な運命の人は――。
家の中で最も広い部屋の中央に設置された、ベッドに横たわっていた。
元々樹で造られた粗末なベッドを、補強し拡充し、きれいな布団を敷いたと思われるそれは――。彼女が、幼少期をそこで寝起きした思い出の品を活かしたものだ。
白い羽毛の布団に埋もれるように横たわっていた、対照的な褐色の肌をもつ彼女。すぐにルーミスの貌を見て目を輝かせ、全身を痛々しく震わせながら起き上がろうとした。
ベッドの脇に座っていた、シェリーディアが介助しようやく上体を起こした、彼女。
――この世で最も強い戦士だった彼女が、今や自分で起き上がることも、できないのだ。
ついに恐れていた“寿命”を迎えてしまった、彼女には――。
「……ルーミス……! 来て……くれたのね……! 嬉しいわ……!
こんな格好で……とても申し訳、ないけど……ゆるしてね……。元気そうで、安心したわ。ボルドウィンは、大丈夫、なのかしら?」
健気に声を張ろうとしているが、本来声を出すのも辛いのを無理しているのが明らかな、かすれた声。
かつてこの世でもっとも美しく潤んでいた両目の周りはびっしりと隈が覆い、振るいつきたいほど肉感的だった唇はかさかさに乾き血が滲んでいた。
それを目の前にしたルーミスの胸の奥底から――突き上げてくるものがあった。身体を震わせ涙腺は涙を大量に溢れさせようとするが、彼は持ち前の鋼鉄の精神力により全力で、耐えた。
「…………レエテ。遅くなってしまって、本当にすまない。ちょっと立て込んでしまってな。
ああ……オレは元気だし、ボルドウィンも心配は、ない。
……ナユタももう少しで、到着すると思う」
付近にいたエストガレスのダフネ元帥に勧められた椅子に腰をかけながら、ルーミスはレエテのベッドのすぐ脇で彼女に言葉を返した。
レエテは目をつぶってゆっくりと首を振り、ルーミスの手を弱々しく握った。
その手も――かつてあった、女性的な中にも無限のパワーを秘めていた生命力は、跡形もなく失われていた。
「無理しなくて……いいのよ。ボルドウィンが今、大変な状況なのは……知ってる。キルケゴール家の後胤が起こした反乱が……鎮圧して……ないんでしょう? 国民のために……それに立ち向かうナユタには……もう……会えないのは覚悟、してる……。そうなったら……ルーミス……あなたが……彼女によろしく、伝えて」
「……オマエには相変わらず、隠しごとはできないな。ああ、我が国の問題はまだ鎮火の見通しがたたない炎上中だ。だがナユタは、『必ず』ここへ来る。信じてくれ」
「わかったわ……楽しみに、してる……」
ルーミスはレエテの細くなった背中に手を当てると、優しく、しかし強力な法力を彼女の身体に流し始めた。
「……ん……相変わらず、きもちいいわ……あなたの法力は。すごく心が安らぐし――身体も力がみなぎる気が、する……。
もう、『吐血』をしてから1週間になるけど……赤ちゃんみたいにいろんなお世話を全部、ブリューゲルやシェリーディアや……シエルにまでやってもらって……とっても恥ずかしいし申し訳なかったの。これからはあなたが、ついていてくれるんでしょう……? 少しでも力を取り戻して自分のことをできるようになると、嬉しいわ……」
「ああ、オレも精一杯やるよ。オレにとってオマエは、やっぱり永遠の偶像的存在だ。オマエの側にずっといられて、世話までできるのは天に昇るほど嬉しい心地だからな」
「まあ……そんなこと、云って……いけない人。焼きもちやきのナユタに云いつけて……しまうわよ……」
軽い冗談を云いあう2人だったが、その深い絆と親愛の情は周囲の人々にはっきりと伝わった。
2人の姿の美しさに、後方で見ていたブリューゲルは口を押さえて涙していた。
「あなたが来る前にね……いろんな人たちが、ここを訪ねてくれたの……。
私なんかのために、本当に本当に……ありがたくて……涙が出てきた……」
「ああ、聞いたよ。各国からはるばる、お出ましを頂いたことを」
「ヘンリ=ドルマン陛下は……あれだけ虫が嫌いな潔癖な人なのに、頑張ってここまで来てくれた……。私に手ずから髪の手入れや薄い化粧をしてくれて……涙を流して、くれた。サッド元帥、ミナァン卿も一緒だったわ……彼ら、公認の仲なのに、結婚はしない、みたいね……かつての恩人、夫のために。あなたは義手のことで良く会っていると思うけど、イセベルグも元気だったわ。
ノスティラスは、さすが、安定してるようね……。国力も、統候との結束も万全だし……人材も……次期皇帝にふさわしい候補の人物も育っているようよ……。ゾラドスやガリオンヌの性差別の問題も、改善していると、云っていた……」
「そうか……オファニミス陛下もご壮健だったか?」
「ええ……もちろんよ。彼女、本当にきれいになったわね……。もう26になるし、そろそろ結婚を考えたら? って云ったら、一緒に来てたジャーヴァルスと……まんざらでもない様子だったわ……。ね、ダフネ……? ムウルが聞いたら……泣いて悔しがるでしょうけど……。
そして……ダレン=ジョスパンのお墓に、ずっと祈りを捧げてたわ。泣きながら……。お参りができたのはようやく二度目……のようだけど……一生彼のことを想い続ける、と云ってくれたのは嬉しかったわね……シェリーディア?」
「ああ……ありがてえ、話さ……」
「ムウルで思い出したけど、彼とソルレオン陛下、イオリアも、来てくれたわ……。
昔いがみ合ってたのが嘘のように……ドミナトス=レガーリアは一枚岩に結束した、最高の国になった。それは……国と反乱軍の共通の大切な人、ホルストースの勇気と偉業が……全てを変えたと、云っていたわ……。本当に、嬉しい……言葉よ……。“女神の衛士”墓所には引きもきらず民が巡礼に訪れてくれて……お墓と私の壁画のホルストースに、シュメール・マーナの祈りを捧げてくれてるそうよ……。本当に嬉しい……」
「そうか……」
「他にもたくさんの人が来てくれた……。今あなたの国の内乱鎮圧に力を貸してくれてる……レジーナ議長もね……。相変わらずよく喋るおもしろい人で笑わせてくれて……もふもふの毛のキャダハムを抱っこさせてくれた。彼、しぶしぶだったけどおとなしくしててくれて……」
「フフフ……そうか……」
「みんなに支えられて……この10年近く、私はやってこられた……感謝しても、しきれない……。
特に、ルーミス……あなた達、仲間には……。
あなたは……ダリム公国でありがたくも私のことを好きになってくれて……出会うことができた。
私はそれに中々気づかない鈍感でダメな女で……あなたをすごく傷つけて、私に襲いかかるまでに追い詰めてしまった。今でも、申し訳なく思うときが……あるけど……。あなたは、そんな中でも常に一生懸命……仲間のために行動してくれた。命をかけて……」
「昔のことは……いいんだよ……オレは自分が悪いと思ってるし。全ていい思い出さ……」
「……ベルザリオンやメイガン、ロブ=ハルスを斃してくれた心の強さ……。レヴィアタークやサロメとの戦いでは……私のことを一番近くで……サポートしてくれた……」
体力の限界を超えて喋り過ぎたのか、レエテの声は熱にうかされたようになり、他人と隔絶された独り言のようになってきていた。
「……レエテ! もう喋るな、少し休め……」
「法力も……あるけど……あなたの存在そのものが、私たちの癒やし、だった……。ランスロットだって、キャティシアだって、ホルストースだって、今生きてる私たちも……どれだけ……あなたに、救われてきたか……」
「……」
「ありがとう……ルーミス……本当にありがとう……。
たとえ……遠くにいても……私はあなたのことを見守るから……きっと……。
自分を大事に……ナユタや……シエル……子供たちのこと……おね……がい……」
そう云ってレエテは、脱力して意識を失ってしまった。
周囲の者たちが顔面を蒼白にして腰を浮かせるが、ルーミスはそれを手で制した。
「……大丈夫だ。疲れて気を失っただけだ。眠っているだけだ」
そう云ってルーミスは、そっと横たえ布団を掛けたレエテの貌を見つめた。
「衰弱期」に入り、確実に身体は死に向かっているはずだ。“核”が細胞分裂を停止し始め栄養を拒絶し、死滅に向かうためだ。その様子、この世のどんな病人よりも確実な死相は、子供ですら瞬時に理解できるほどのものだ。
サタナエル一族の寿命限界とされる30歳を迎えたレエテ。そこまで生を与えられたことには感謝すべきではある。
だが――。やつれても老化をせず、かつての冒険行のときと変わらぬ美貌を誇る彼女を改めて見、ルーミスの中にこみ上げる強い思いは――。
限界を、超えた。
失いたく、ない。
まだ生きてほしい。その優しい声で、語り続けてほしい。幸福を振りまく最高の笑顔を、見せ続けてほしい。
それが、永遠にこの世から消えてしまうなんて――。
「――嫌だ。絶対に、イヤだ――!」
呟いて、レエテの手を掴み、額に当てた。
その手をつたい――大量の涙が、流れ落ちて布団を濡らしていく。
「ううううう……ううううう……レエテ……レエテ……」
こらえることができず、ついに皆の前で悲しみの堰を切ってしまった、涙を見せてしまった、ルーミス。
その姿に、場の全員がすすり泣き、嗚咽をもらしたのだった――。