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そこにあるべきもの
AM11:00
テレビも電気も点いていない薄暗い部屋
カーテンは開いているが、天気が悪いのか外は薄暗い
遠くで鳥の鳴く声と子供の遊ぶ声が聞こえる
一人の男が、パソコンに向かう―無精髭に眼鏡、煙草を口にくわえて大きく息を吸い込む
焦点は…合っていない
男が煙をはいた時、近くの学校からチャイムが鳴った
その時、煙草の灰が床に落ちる
そしてタイミングよく、家のチャイムが鳴る
ようやく正気を取り戻したように、男の目に意思が見えた
男は煙草を灰皿に押し付けると、大きなため息をついて玄関へ向かう
「遅い!」
ドアを開けると、20~30代の若い女が立っていた
言うが早いか女は男を押しのけて家に入ってくる
「また、こんなに散らかして。私がついこの前きれいにしてあげたのに・・・」
女は持って来た荷物を置き、床に脱ぎ散らかしてある衣類をかき集めながら言う
1LDKのこの部屋にはほとんど物が無い
つい最近引っ越してきたばかりのようだ
あるのは、テレビ、ソファ、ローテーブルに、ベッド、パソコン、そして角にある観葉植物。
「…悪いな」
男は後から部屋へ来てボソッと言った






