《1》
趣味程度に書きますので誹謗中傷(主にへったくそ!!など)は遠慮したいです。
「すみません…今…何とおっしゃいました?」
「うっ…くっ…ぐす……だから、あなたが現神王の王妃に決まったのよ…」
「……」
今までしくしくと泣いていた女神は突然きっ!と睨みつけてきて、
「どうしてあなたが!!…美の女神か知らないけど今まで散々つくしてきた私じゃなくてあなたが選ばれるなんて…やっぱり顔なのね…」
さっきまで睨んでいたのにまたしくしくと泣き始めた。
……神王の嫁?
じょ、冗談じゃないわよ…
何故私が…美の化身である私があの老いぼれじじぃに嫁がないといけないのよ…っ!!
神王に嫁ぐ。それは神にとっては最高の幸せだ。しかし、この美の神は違った。
なっなっ!何事よ!?確かに前王妃が死んで新たな後妻を探してるって噂はあったけれど…私!?
確かにこの神の国で右に出るものはない位美しいけれど…しかもナイスバディですけれども…っ!ありえないわ…計画が丸潰れじゃない!!
そんな事を考えてるとは露ほどにも思っていない目の前の豊潤の女神は、
「うっうっ…今まで私がどれほどあの神王の無理難題に応えてきたか…全ては王妃になるためだったのに…今までの私の計画が台無しだわ…」
普通はこの女神のように王妃になれると言われたら泣いて喜ぶ位は当たり前だ。しかし、美の女神は事情が違った。
そんな…そんな…じゃあ、私が神王になる夢が消えるってこと……
そう…この美の女神は少し…いやかなりの野心家であった。
そんな時、コツコツとこちらに誰かが近づいてくる音がした。
「やぁ、やぁ、美の女神よ。今日も素晴らしく綺麗だのぉ。ほぉっほぉっ…今日お前と今宵を共に出来ると思うと久方ぶりに下が荒ぶってくるのぉ」
目の前にいるのは間違いなくこの神の世界を統治する現神王であるその神だった。
しかしこの美の女神、
うわっ…きっもぉ…おぅえ……
もし神王がこの心を読んでいたら憤慨していただろう。しかし、悲しい事に例に漏れず美の女神は自分の事が好きだと疑っていない。なので更にヒートアップする。
「いやはや。直ぐに伝えるはずだったのだがな。そこの豊潤の女神が考え直せとうるさくてな。全く、儂から伝えるはずだったのに勝手に伝えおって…そんなに儂の事が好きなら第2妃になっても良いと伝える前に先走りおって。」
「神王様……第2妃になっても良いのですか…?」
「おう。勿論だとも。そなたの献身的な態度は好いておる。」
「神王さまぁ…」
美の女神の目の前にはちゃんちゃらおかしい茶番が繰り広げられている。
「いらないわよ…」
辛抱たまらずぽつり…美の女神は呟いてしまった。それをどう解釈したのか、
「おぉ、そんな事を言わないでおくれ。一番はお前一人だ。この豊潤の女神がどうしてもというから妃にするのであって第一妃の方が偉いに決まっておる。儂の愛もそなたが一番じゃよ。」
「ちっがうわよ…」
「ん?なんじゃ?」
「あんたみたいな老いぼれじじぃがいらないって言ってんのぉ!!!」
言った瞬間二神は鳩が豆でっぽうを食らったような顔をした。
「そうよ!!そもそもあんたみたいな老いぼれ誰も彼もが好きって勘違いしてるってとっても滑稽なのよ!!神王になった当初は知らないけど、今は力も弱いただのきも親父よ!!」
神は永遠の命ではない。その魂も老いていくし、力も弱まる。ただ、永遠に近しい命であることは確かだ。
「だいたいいつまでも神王の座にしがみついてんじゃないわよ!!あなたもあなたよ!豊潤の女神!!こ~んないつ引退もおかしくない老いぼれについて行ってもお先真っ暗よ!!」
先程まではあまりのことに半ば唖然と黙って聞いていた老いぼれこと神王は肩をふるふると震わせ始めた。
それを見た美の女神は一瞬後悔したが、いやいや!と首を振る。美の女神も王妃になれと言われた位でこんなに我を忘れる程怒る事はない。過程があったからこそだ。
なにせ美の女神が会うごとにこの老いぼれは毎回毎回変態じみた事を言ったりセクハラまがいのことをしてきていたのだ。最初は神王にこんな事をされるなんて光栄だわ!と思っていたがだんだん、きもい変態じじぃに徐々にシフトチェンジしていった。
尊敬もあったもんじゃない。こんな奴に神王を任せていられない!と思い王を目指し力を貯めるなど努力をしてそれなりの地位に立つことが出来ているのにこの始末…
今まで溜まりに溜まった鬱憤が口をついて出てしまったとしてもしょうがない。
しかし神王は今まで尊敬しかされてこなかったため目の前の暴言を吐く存在が信じられなかった。
「な、何を言っているんだ。やきもちを焼いたのか?分かった分かった。妃はお前だけだ。この豊潤の女神もどこかへ飛ばす。それで良いだろう?」
ここまで言ってしまったらいいかと思い、
「はぁ?馬鹿なの??豊潤なんてどぉーでも良いのよ!!あんたみたいな老いぼれじじぃに嫁ぐのが嫌だって言ってんの!!尊敬なんてもうされてないわよ!みーんなあなたが引退するのを待ってるのよ!!」
美の女神はすっきり顔。言い切った感が満載である。この言葉を聞き己を振り返るきっかけになればという打算もあったがそこは頑固じじぃ。振り返りも何も全部自分は正しく刃向かうものは敵であるという思考は変えられない。
「ほう。お主がそのような事を思っていたとは……お主を反逆者とみなす!!その者を捕らえよ!!!」
神王が命令したとたん今まで姿を見せず影のように神王に付き従っていた守護騎士達が一斉に美の女神を捕らえる。
だがここまでは美の女神は焦ってはいなかった。何故なら神王の失脚を狙い反乱を起こす軍を既につくっていたからだ。今の神王の治世は余りある事が多すぎる。引退を願う者は大勢おり、反乱が少し早くなるだけだ。
それを知ってか知らずか、
「儂はお前の身体だけが気に入っておったのだ。あぁ、もったいないのぉ。どうにかして…くっくっくっ…」
突然神王は笑い出した。
「そうじゃ!お主の身体にこの豊潤の女神の魂を入れるとしよう!!豊潤の女神の献身さは好きじゃからのぉ」
「なっ!!」
魂の交換など禁忌の禁忌。禁忌の術は失敗する事が多く、また危険なもので徹底的に禁止されている。そんな事も忘れたのかと愕然とする。
しかし周りには王に忠実な騎士と王妃の座に惚れた女神だけ。
言うが早いが王は呪文を唱え始め私をニヤリと見やった。
そのとたん急に身体が浮遊間に包まれた。何が起こったのかと周りを見渡せば目の前には…私??
そして豊潤の女神の身体が糸が切れた操り人形のごとく床に倒れていた。
「こ、これは…?ま、まさか私、美の女神の姿に??」
「そうじゃぞ。そなたが一番羨んでた姿じゃ。」
「まぁ、素敵!!」
目の前の私が勝手に喋っている…
『な、な、ふざっけんじゃないわよ!!私の身体かえせーー!!』
そこでやっと気づいたという態度で神王が振り返った。
「ふん。お主は姿以外何の価値もない。豊潤の神の身体に入れてやろうと思ったが気が変わった。お前みたいな生意気な小娘は消えるが良い。」
神王は腐っても神王だったと言うことか。
神王が手を上げた瞬間、私は物凄い力の圧力に押され、消える!!と思った瞬間優越感に浸った私の顔を見た。瞬間、怒りが爆発し何とか力から逃れようとしたことまでは覚えているが他には何も思い出せない…
しかし、何でこんな事になったのか…
「レイリ様、お気づきになられましたか。いや、中の人、私の顔が分かりますか。」
目の前に突如人間が現れる。
それをぼーと見ていると、
「おいおい、失敗じゃねーの?こいつ何の反応もしねーぞ?おい!聞こえてっか小娘!!」
はぁ??小娘?人間ごときが小娘…だとぉ
左にはさらさらな銀髪を垂らした青年が丁寧な口調で何やら喋っており、その後ろに黒髪の剣を下げた青年が生意気そうにこちらを見下ろしている。
いったい何が起こったのか…
確か神王に逆らい身体を奪われ…身体??
私はばっ!!と起き上がり自分の身体を見下ろした。
「な、な、なぁ!!」
目の端に2人の青年が驚き顔でこちらを見ているのが分かるが気にしない。
「私の…私の胸がない!!!!」
叫んだ瞬間目の前の黒髪の青年が
「んだと!!レイリ様の身体を侮辱するな!!!」
と、怒り顔。
そんなこと知ったことか!!
私はキョロキョロと部屋全体を見渡す。
天蓋付きベットに寝ており、部屋は可愛い熊の人形やピンク、レースなどthe女子という感じだ。
まぁまぁ部屋は広く快適そうだ。
キョロキョロ見渡し、そこに私のお目当てのものを発見した。
ほっそい身体をよろよろと使いながらそのお目当ての所まで歩いていく。
そこに写る、そう、鏡に写る自分の姿を見て叫ぶ。
「なんっじゃこりゃぁぁ!!」
はぁ、はぁ…
肩で息を吸ってると、
「すっげぇだろ。この国一番の美貌と言われる姫の顔だぜ。有り難く丁重に扱えよ。」
いつの間にか黒髪が後ろに立っていた。
…はぁ??いやいやいや!!前の私の顔の足下にも及ばないわ!!いったい全体…
「申し訳ありません。驚いた事でしょう。こちらの事情で魂の蘇生を行いました。」
「魂の蘇生?」
「はい。実はその体の持ち主が亡くなられ、変わりの魂が必要だったのです。事情は後で必ず説明します。今は…」
そこまで銀髪青年が言ったとたん、横からずいっと黒髪が口を挟んできた。
「おい、お前。どこの誰か知らないがな、この国の姫として生きられるんだ。有り難く思えよ。あと、変なことしてみろ。お前を殺して違う魂を見つける。俺たちの言うことを逆らわず、ちゃんと人形として生きろよ。」
…はあぁぁぁぁ!?