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第三話 少年との出会い<帝国歴570年9月12日>


 少女と芋虫くんの名付けが終わり、ここからの脱出を考えることにした。



 警備が手薄のときに脱走するでやんすか?→木の柵を破壊する時点で人が集まるので却下。


 ここはあっしが一肌ひとはだ脱いで色仕掛けで!!→おそらく、奴隷として売られるため、相手にされないか、いいようにされてしまいそうなので却下。



(「どこかに移動されるときに隙をついて逃げるしかないでやんすかね?」


 そんなことを考えていると十代前半の少年が周辺を警戒しながら近づいてきた。


「姉さんら、奴隷として売られそうになっているのに元気だな」とこちらに声をかけてきた。



 髪はくすんだ黄色の短髪、額にバンダナをしており、粗末な服は彼の盗賊団の地位の低さを示している。


 あとエロイ……目線があっしとニサの胸を無遠慮に行ったり来たりしている。


 さりげなく、あっしはニサが少年の視姦しかんから外れるようにして、「暗くなっても仕方ないでやんす」と気楽に答えた。



「そうか。なら、俺と手を組まないか?」とにやっと笑って少年は提案してきた。



 あっしとニサは目をぱちくりとさせてしまった。サフィは知らんでやんす。







 少年があっしらに協力してくれる理由は少年の故郷の村にこの盗賊団が略奪しにいくのが理由だ。まあ、ありきたりな理由でやんすな。


 さすがに年若い少年――一度は畜生ちくしょうに身を落としたが、親兄弟を喰いものにするほどは落ちてなかったみたいだ。



「いやさ、盗賊団入ったら稼ぎがよくなって、女の子とにゃんにゃんできるかと思ったのに、来る日も来る日も雑用でさ……最低限の衣食住以外タダ働きなんだぜ」



「それは大変でしたね」とニサは少年をいたわる。



 ニサさんや、その少年同情の余地なしでやんす。


 ここから脱出したら、少年とは別れたほうがニサのためでやんすね。


「それで、具体的にはどうするでやんすか?」と少年に問う。


「姉さんの武器は持ってきた」と少年は背中に背負っていた――あっしのリュックの中から二振りのナイフをこちらに手渡してきた。


 あーノープランでこっちに丸投げでやんすか……。



(「ふむ、少年の腰には短刀が一つあるでやんすね。」


 ニサはどう考えても戦力外ということは少年とあっしで盗賊団を駆除しないといけない。逃げるだけでは少年は納得しないだろう。


 まあ、こんな単純そうな少年を騙して逃げることも可能でやんすが、助けてもらった恩は返さないと仁義じんぎに劣るでやんすね。


「ここは古来よりの常套じょうとう手段――火攻ひぜめでいくしかないでやんすかね」







 とくに少年とニサの反論がなかったので火攻めを敢行することになった。


 一応少年に「全員死んでしまうので助けたい奴はいるでやんすか?」と聞いたのだが「むしろ全員死んでほしい」と言われてげんなりしてしまう。



 時間は深夜、ニサたちには先に洞窟から脱出してもらっている。


 ちょうど、少年が見張りの番の時間で少年以外全員寝ているそうだ。


 あっしは洞窟の奥の方にある就寝所らしきところに全員いるのを確認してから、少し離れて火打ち石でわらに火を付けて、5個ほど就寝所の燃えやすいところに投げ込む。


 すぐさま、就寝所の入り口付近に用意しておいたガラクタやたるなどで入り口を封鎖する。


 少し離れたところで待機する。



「ぎゃああああああ!!!」


「火事だ!!逃げろ!!」


「な、なんだこりゃ!!」


と盗賊たちの絶叫が聞こえてくる。


 盗賊たちが簡易のバリケードに近づいてきたところで第二段の火付きわらを樽付近に投げ込む。



 すぐにバリケード付近には引火させないのは、近づいたところを火傷やけどさせ、気勢を浅知恵あさぢえやんすが……。



「さてと、手負いの獣程……怖いものはないでやんすからね。」と言いながらニサたちとの合流場所に急ぐ。


「万が一生き残った者がいたとしても……もう、少年の村には手出しする余裕はないはずでやんす」


 仁義は一応果たしたでやんす……確実に全員屠ほふらないのか?と嫌でやんすね。


 何事もほどほどにしないと痛い目見るでやんすよ。


 別にあっし英雄ではないでやんす。敵の死に目なんて見る必要ないでやんす。


 まあ、あっしのジンクスやんすね。それで痛い目見ることあるでやんが……。



 ニサの「フィさーん!!」と右腕をぶんぶん振って出迎える様子に少し心が晴れるのだった。


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