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第十二話 姉妹人形(下)(帝国暦570年9月21日)


 突如現れた町を覆う結界の救援のため、帝国軍に連絡がつく近場の町の冒険者ギルドに向かっていたあっしでやんしたが――怨霊系の魔物? と思わしき魔物に木魔法で拘束されてるでやんす。


(「最近、滅多にお目にかからないことのオンパレードやんすなぁ。勘弁してほしいでやんす」と内心愚痴る。



 青いドレスの妹人形――カトレアと赤いドレスの姉人形――テレシアとの自己紹介を終え、どうやら危害を気はなく、この人形たちの話を鵜呑うのみにするなら5日後の朝には開放してもらえるらしい。


(「これは――国などの組織が関わる計画的犯行やんすかね? あっしが思いつく限りでは帝国軍か略奪の聖女率いる聖導教会しか思い浮かばないでやんすが……」


 この帝国で大規模の犯罪組織は皆無というのは一般常識である。


 帝国軍の”血公将軍”に残らず粛清されてしまうからだ。


 そんなの無理だろ? 帝国の周りを囲んでいる国はどうしているんだ? と思うかもしれないが、そんな組織を作れば、例え帝都であろうと焼き払われると言われている。犠牲を恐れなければ方法はいくらでもある。クーデターなど起こす機運は起きない。何故なら余計なことをしなければ平和だからだ。重税というわけでもなく、問題がないならば実は過ごしやすいのだ。


(「この帝国は鎖国しているでやんすよね……あっしですら近くに”どんな国”があるかすら知らないでやんす」


 侵略されることもなく500年以上存在しているし、国境の守りは鉄壁なのだろう。



(「うーん、帝国軍の自作自演ってやる意味ないでやんすしなぁ。聖導教会が帝国軍に目をつけられることするでやんすかな? 略奪の聖女では血公将軍に対抗できないというのはもっぱらの噂でやんすし」



 自分の中には決め手となる情報もなく、人形たちから余計なことを聞き出すことに成功しても……恐らく困る――物凄く困ることが予想できてしまうでやんす。



(「すまないでやんす。ニサ。あっしには待つことしかできないでやんす」


 心なしかあっしの猫の耳のようにみえる癖毛が垂れているようにみえる。


 そんなことを考えていると――


「あ、あのでやんすね……」


「なんでしょうか?」と人形だから疲れないのか――テレシアはあっしのすぐ前に立ったまま優雅に聞き返してくる。


「……その……尿意がやんすね……」


「はぁ?!」と馬鹿にしたように反応するカトレア。


 い、いやでやんすね。人間だから仕方ないでやんすよ! 物語の登場人物じゃないでやんすから!!






 二人の人形見られながら、その……お花摘みをする羞恥しゅうちプレイを乗り越えたあっしはせめてもと有意義な話をしようと人形たちに話掛ける。地雷は踏まないように……。


「そういえば、テレシア殿は魔法がお上手でやんすね。生前は高名な魔法使いでやんしたか?」


「ちょっと!!」とあっしに詰め寄ろうとするカトレアを姉のテレシアが手で制し、


「少し他の人より才能があっただけです」と淡々と答えてくれる。


 お、おっと早速地雷でやんしたか……あっしは気が利かないやんすね。


(「それにしても、テレシア殿は敬語が完璧ではない様子……死んだ年齢が幼いのかもしれないでやんすね」と勝手に推測する。


 話を変えようと、「よければ、後学のために魔法について教えてくれないでやんすか?」と駄目元聞いてみる。なんとなく、何魔法とかわかるでやんすがわからないこと多いでやんすからね。


 少し、いぶかしげにしながら「……基本的な分類とかいいのでしょうか? 正直、話をするにしても教材がありませんし、簡単に語れるものでもありません」


「簡単な分類で大丈夫でやんす。あっしもうろ覚えでやんすし」


 通常魔法使いはあまり魔法の仕組みなど語りたがらない。何故ならそれが彼らのめしの種であり、一門で門外不出なこともあるからだ。まあ、魔物でやんすし聞きやすいかなと――



「わかりました……暇ですしね」とテレシアが答えてくれる。



「大きく分けて五芒星魔法と六芒星魔法の2つがあります。それ以外の外法や固有のスキルなども魔法ということがありますがはぶきますね」


「まずは五芒星魔法――正確には五芒星魔術ですね。」


「一般人は正式名称を勘違いしている人が多いですが……魔法の研究者の方には嫌悪する人もいるので気をつけたほうがいいでしょう」と後半の言葉は少し固くなったところをみると過去になにかあったのだろう。


「この魔法のメリットは六芒星魔法より消費マナが少ないこと、デメリットとしては魔術陣や媒体が必要なことですね。わたくしが先程使った木魔術は樹木の近くでしか使えません」


「分類は水魔術、金属魔術、木魔術、地魔術、火魔術の五つですね」


(「そうだったでやんすか。マナが少ないとかは知らなかったでやんす。おもわずかっこつけかと――さすがに冗談でやんす」


「次に六芒星魔法ですが――こちらのほうがメジャーですね。五芒星魔術よりは習得はたやすいとされています」


「それとね! 両方使えるのは珍しいの!! わたしのお姉ちゃんすごい!!」と元気よく答えてくれるカトレア。お姉さんきやんすね。


「こ、こほん」と人形でなければ赤くなったであろうが説明を続けてくれるテレシア。


「メリットは媒体などを必要としないこと、デメリットは術者によって消費マナが違うことですね。練度によって変わっていきます」


「分類は火魔法、水魔法、地魔法、雷魔法、光魔法、闇魔法の6つですね。ただ――雷魔法については一門によって他の魔法に置き換わることがあります。例えば、氷魔法とかですね」


(「おう、なんか複雑な事情がありそうでやんすなぁ」


「後は……」くすっとテレシアは笑ってから、


「魔法使いの初心者でありがちなのが魔法又は魔術を合成または威力上昇補助などにしようとする方が相当数出てきますが――これはできません。その系統のマナに変換してしまえば、違う系統のマナ同士は反発してしまうからです」



(「あー、俺の最強魔法とかやってしまうのがいるって話でやんすね。それはちょっと……痛いでやんすね。魔法使いはインテリってイメージやんすが少し親近感が沸いて来たでやんす。




 そんなことを話していると日が落ちてきて、あっしのかばんに入っていた非常食を食べさせてもらった。はたたしてじっとこちらを見る人形二体の前であっしは寝れるでやんすかね……。



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