10:Index finger
設定を練っていたら大変遅くなってしまいました。楽しんで頂けたら幸いです。
説明回が続いて申し訳ないです。
尚人は手に握られた両刃剣をみつめる。
(・・これは・・あの子が持ってた・・)
手の中にあるソレは隅々まで闇に溶けるような漆黒に染められており、刃物だというのにその身は一切の輝きも放ってなかった。
「これは驚いたね。」
神妙な顔をして政之が言った。他の皆もどこか戸惑った表情をしている。
「その剣。」
政之は尚人の両手剣を顎で指す。
「それととてもよく似た能力の子がいるんだ。」
尚人の頭に彼女の顔がよぎる。
「オダ マオ ですか?」
「⁈ 知ってるのかい? いや、待ってくれ。 尚人くんは彼女に殺られたんだね?」
「・・はい」
「彼女の剣も見たかい?」
「・・はい」
「うん、成る程。」
政之はひと呼吸おいて再び口を開く。
「この世界で全く同じ能力っていうのは確認したことがないんだ。まぁ僕らの知る限りだけれど、でもおそらく存在しないと見ていいだろう。
そこで君の能力についてだが・・
「考えられるパターンは2つ。」
政之の説明に早希が割って入ってきた。
「それが本物か。偽物か。」
尚人は瞬時には理解が及ばず眉をひそめる。
「おそらく君の能力は他人の能力を盗る能力。問題は盗んだものが原物か模造品か。原物ならば盗まれた本人は能力が使えなるだろう。
まぁただ単に見た目が似てるだけで、その剣が君の能力って可能性もあるけどね。」
そう政之が加えると、後ろの方で義明が口をおさえながら早希を指差す。
「ぷぷっw 3パターン目あるじゃんw エラソーに割り込んだのに間違えてんじゃんw」
早希はこめかみをピクリとさせゆっくりと振り返ると「ダセェw」などとおちょくりながら逃げ始めた義明を物凄い形相で追いかけ始めた。
尚人はその様子に唖然としていたが、政之はさもいつものことのように流し、話を続けた。
「まぁ僕の推測を言わせてもらうと。」
政之は尚人に見せるように親指と人差し指と中指をたてる。
「まず君がオダ マオに会って彼女の剣を目撃しているということを考えると、3つ目の"偶然形だけ似ている "とは考えにくい。」
政之は親指を畳む。
「さらに1つ目の"本物を盗む"となると盗られた方は能力が使えないと考えられるが、これは強力すぎると思う。今までの経験上そんな段違いな能力は見たことがない。確率は低いだろう。」
中指が折られ人差し指だけとなった手を尚人に突きつける。
「だから僕が考えるに、尚人くんの能力はおそらく2つ目、"偽物を盗む"。つまりは他人の能力をコピーして使用できるということ。」
何時の間にか体育座りをしていた佳苗が「おぉ~」と言いながら拍手していた。