表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TEN  作者: A
1/12

1:Intersection of midnight

夜空に広がった雲の切れ間から月が覗いている。

空いた窓の隙間から、肌寒く感じ始めた外気が仄かなキンモクセイの香りと共に部屋に流れ込んできた。



ベッドの上で寝返りを打つ。



暗い部屋に秒針の刻む音だけが響いている。

時計の針は揃って真上を向き真夜中を指し示していた。



また寝返りを打つ。



・・眠れない。



少年はゆっくりと体を起こした。



・・トイレ。



のそのそとベッドから這い出し 月明かりを頼りにドアへ向かうが、二、三歩のところで床に置いてあったランドセルにつまずき顔をしかめる。



ドアから出てきた影は廊下を左へ向かう。

数歩進んだ後に立ち止まり 思い返した様子で引き返して来ると、部屋の前を通りすぎて突き当たりのドアへと入って行った。







暫くするとトイレの流す音が廊下に響いた。

部屋に戻って来た少年は、今度は足元に気を付けながら再び寝具の中に潜り込んだ。





夜空に広がった雲がちょうど月の光を遮っている。

空いた窓の隙間から、肌寒く感じ始めた外気が仄かなキンモクセイの香りと共に部屋に流れ込んで・・・こない。


真っ暗な部屋は異様な静寂に包まれている。


少年は起き上がり部屋を見回す。


時計の針は揃って真上を向き真夜中を指し示したままだ。


窓の外に目を凝らす。


木々も電線も揺れてない。


暗闇に包まれた街並みもどこか不自然で気持ち悪く感じる。




ふと視線がある一点を捉える。


窓の外。


すぐそこの丁字路にある電信柱のそのてっぺん。









ヒトが立っている。




そのヒトは遠くをずっと見つめていたかと思うと、急に近くの家の屋根に跳び移り、軽い身のこなしでそのまま屋根伝いに家々の上を瞬く間に走り去っていった。





当たりに明るさが戻る。



夜空に広がった雲の隙間からまた月が顔を出していた。

一段と冷たくなった外気が仄かなキンモクセイの香りと共に部屋に流れ込んできた。



暗い部屋に、いつの間にか秒針の刻む音が響いている。


長針が小さな音を立てて時間を刻んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ