41
光が全て消えるまで空を見上げていた香月が、背後から聞こえた草を踏む音に振り返る。
神竜が腕を組みこちらを見ていた。肩には朱雀が止まり、大きく羽を広げている。
「神竜」
「話はついたようだな」
「うん。もう真樹が人を殺すことはないよ」
「どうだかな」
神竜が肩をすくめて、香月の横に落ちていた緑の石の破片を拾い上げる。少し力を入れるだけで、砕けて砂のように細かな粒子に変わった破片に、神竜が目を細める。
「洸が消える前に、なぜこの石は砕けたんだ?」
神竜が真樹に顔を向けると、真樹が目を伏せる。
「姫の魂はもうこの世に形を保てるほど力は残っていませんでしたから、石に宿った私の妖力でこの地に留めていたんです」
「随分と存在のしっかりした魂だと思っていたが、妖力をつかっていたか」
神竜が手に残った粒子を払い落す。細かな粒子は風に乗って霧散しながら森の中に広がっていった。
神竜が真樹に顔を向ける。
「俺は、香月のように無条件にお前を信用できない。もうお前は三人もの人を殺しているんだ、また繰り返さないとも言い切れないだろう」
「はい」
頷く真樹に香月が慌てる。
「神竜、大丈夫だよ。俺だって傍に居るし」
「信用できるか」
「いいんだよ、香月。仕方のないことだ」
真樹は香月を軽く制し、神竜に向き直ると頭を垂れた。
「命を捧げることはできませんが、あなたのお好きなように」
「そうか、じゃあ俺の式になれ」
香月がまたそれかと脱力する。
神竜が軽く肩をすくめると、口の端を釣り上げて笑う。
「悪い話じゃないだろう。俺に殺されることもないし、何よりここで無駄に時間を過ごすよりも、仕事をして過ごす方が気が紛れていいだろう」
香月が狐につままれたような顔で黙り込み、真樹を見やる。真樹も香月と似たような顔で神竜を見ていたが、小さな笑みを口元に浮かべ、深々と頭を下げた。
「では、よろしくお願いいたします」
次でこの作品も、終わりです。
ヾ(@⌒ー⌒@)ノ




