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「あいつは反魂の術を行おうとしているのかもしれん」

「反魂の術……って何だ?」

 キョトンと首を傾げる香月に、神竜のこめかみに青筋が浮く。

「お前、妖しのくせにそんなことも知らないのか!」

「知るわけないだろ、陰陽師の術なんて」

「それくらい知っておけ」

 神竜が深い溜息を吐く。

「反魂の術とは、死者を蘇らせる術のことだ」

「…………死者を蘇らせる…………」

 香月が大きく目を見開く。

「本当に真樹がそんな術を?」

「推測でしかないが、間違いないだろう」

 神竜が肩をすくめる。

「反魂の術を行った有名なものとして、西行が行ったとされる反魂法がある。人骨に()(そう)と言う薬を塗り、イチゴ、ハコベ、さいかい、むくげ、藤などの多様の葉を使い、反魂の真言を唱えるものだ。まぁ、これは心のない木偶人形が出来上がった失敗作だったらしいが、真樹はこの反魂の術を行うために、人骨を欲しているんじゃないか?」

 神竜が軽く首を傾ける。

「洸の骨はもう火葬されているからな、他の人間の骨で代用するつもりなのだろう。でなければ、わざわざ死体の腐敗化を促進させたりはしないだろう」

「西行って人は失敗したんだろ? 成功する保証はのない反魂の術を真樹はやろうっていうのか?」

 困惑気味に瞳を揺らす妖しに、神竜がふんと鼻を鳴らし、冷たい視線を向けた。

「愚問だな。失敗したなら成功するまで繰り返えせばいいことだ。でなければ何の為に三人もの人間を連れ去る必要がある。禁忌の術に手を出すくらいだ、それぐらいやるだろう」

「…………」

 香月が息を飲む。

 心なしか震えているように聞こえる声で、神竜に問いかけた。

「もし成功して、洸ちゃんが生き返ったとしたら……それは普通の人間なのか?」

「どうだろうな。俺は反魂の術に成功した奴を知らないからな……だが……」

 神竜が漆黒の瞳を伏せ、香月から逸らす。

 低い声で呟いた。

「反魂に使われた魂は、永遠にこの世に縛られるそうだ。それが肉体にどう影響するかは分からないな」

「そうか……」

 そう呟いたきり、膝を抱え、膝の間に顔を埋めるようにして黙り込んでしまった香月に神竜が今日、何度目かの溜息を吐く。

 どこまでもそっけない声で呟いた。

「落ち込むな」

「落ち込んでなんかない」

 神竜の片眉がピクリと上がる。どう見ても落ち込んでいるだろうと、心の中で突っ込んだが、口には出さずに立ち上がる。

「そうか、だったら寝ていろ。まだ全快には程遠いだろう」

 香月が膝からほんの少し顔を上げ、こちらに背を向けた神竜を見やる。無言でその姿が障子の向こうへと消えるのを待ってから、再び膝の間に顔を埋め、強く両膝を抱え込んだ。

「真樹のバカ野郎……洸ちゃんをこの世に縛りつけてどうするんだよ……」

 真樹から受けた傷跡が、心の痛みと共にズキズキと痛んだ。


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