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「何?」

 神竜が軽く目を見開く。

「……やはり洸と言う少女と真樹は接点があったということか……」

「やはり?」

 言葉の意味が分からないといった風に首を傾げる香月に神竜が暗い目を向ける。

「洸と言う少女なんだが、校舎から誤って転落死したことになっているが、本当は自殺なのではないかと噂されている」

「自殺……」

「いじめを受けていたそうだ。事故か自殺かは解らないが、いじめていたと思われる者は、今回真樹に襲われ、行方の分からなくなっている三人だ」

「それって……」

 香月が顔を上げる。

 神竜が軽く目を伏せ、溜息を吐くように呟いた。

「真樹は死んだ洸の復讐をしているのかもしれん」

「復讐……でも洸ちゃんと真樹にそれほどの関わりがあったようには思えないけど」

「ネックレスを渡すぐらいだ、何かしら関わりがあったはずだ。真樹から洸の事を一度も聞いたことがないのか?」

「う~ん、聞いたことない。それに……」

 香月が首を捻る。

「洸ちゃんネックレスは小さい時に貰ったから、誰に貰ったか覚えてないって言ってたぞ。真樹の事を知っていたとしても昔話に出てくる妖怪程度の知識じゃないか?」

「昔話?」

 神竜が端正な眉を潜める。

 体ごとこちらに向き直り、香月の前に座り直す。

「真樹に関する、伝承か何かあるのか? 俺が調べた時には何も上がらなかったが」

「ほとんど知られてないみたいだよ。俺も洸ちゃんに聞いて初めて知った」

「どんな話だ?」

「えぇっと、妖怪がお姫様と恋に落ちるんだけど誰も認めてくれなくて、妖怪がお姫様をさらっていくんだ。でも、お姫様は妖怪の出す瘴気によってすぐに死んじゃう話だったよ」

 香月が洸から聞いた物語を簡単に話すと、神竜が肩をすくめる。

「その昔話が本当ならば、洸と言う少女に真樹がほとんど接触しなかったことにも納得がいくな」

「どういうこと?」

 香月が解らないといった風に首を傾げる。

 神竜は溜息を吐くと、軽く香月を睨んだ。

「無闇に洸に近づけば、物語に出てきた姫同様に瘴気で死んでしまうだろうが」

「あぁ、そっか。洸ちゃんを殺してしまわないように近づかなかったってことか」

「そうだ」

 頷き、少し困ったように顔をしかめる。

「まだ、疑問に残ることがあるにはあるんだが、洸の死が今回の引き金になっていることは間違いないだろう」

「疑問? どんな?」

「なぜ、わざわざ連れ去って殺すかだ。どこかに連れ去る必要なんてないだろ。復讐しているだけならその場で殺して、置き去ればいい」

「そう……だね?」

「何か他の目的があるはずなんだ」 

「目的って……人の子を使って何するっていうんだよ」

 首を傾げる香月に神竜が瞳の色を深くする。

「お前が真樹に会いに行った時、大崎美穂は死んでいたと言っていたな」

「あぁ」

「では、死体をどこか別の所に捨てずに手元に置いてあったということは、真樹にとって大崎美穂は、死んでいても利用価値があったということだろう…………。香月、大崎美穂の死体を見た時何か変な所はなかったか?」

「変な所?」

 真樹の所で見た木の根元に転がる死体を思い出し、香月が顔をしかめる。

「別になかったと思うけど……白骨死体なんて気持ち悪過ぎて、じっとなんて見ていられないし、第一、そうそう死体になんて出くわすことなんてないから、どこか変な所って言われてもわかんねぇよ」

「白骨死体?」

 神竜が暗い瞳を香月に向ける。

「お前がこの町に来たのは、二週間ほど前だったと思うが?」

「うん。そうだけど」

 香月が今さらそんなことを確認してどうするんだと言わんばかりに、眉を潜める。

「言っただろ。二週間くらい前に変な気配を感じて、この町に来たって」

「あぁ……」

 神竜が頷く。

「お前が真樹に会いに行った時に見たと言う死体、本当に大崎美穂だったのか?」

「そう言っているだろ」

 目を細め、俯き加減に思案し始めた神竜から、自分の言葉を神竜は信用しきれていないのだろうと思った香月が、ムッと口を曲げる。つい言葉に力が入ってしまう。

「あれは大崎美穂だった。これは間違いないからな!」

「うるさい、怒鳴らなくても聞こえている」

 神竜が額に手をやり、溜息を吐く。

「少し黙っていてくれないか。俺は今、考え事をしているんだ」

 むーっと唸りながら香月は声のトーンを落としたが、それでもブツブツと呟く。

「……見間違えるはずないじゃないか、顔の方は比較的きれいなままだったんだ。酷かったのは木の根が絡まっている体だけで...... 」

「ちょっと待て」

 神竜が手をかざし、香月の言葉を遮る。

「木が絡まっていた体だけが腐敗が進んでいたということか?」

「うん。根の下はほとんど骨になってた…………あれ?」

 香月が首を捻る。大崎美穂と言う少女が姿を消したのは、二週間ほど前ではなかっただろうか。香月がこの町に来たのも二週間ほど前、だとすれば死後それほど日数は経っていないはずだった。

「白骨化って短期間で出来るものなのか?」

「条件によるな」

 はぁ……と神竜が溜息を吐く。

「夏場では、数週間で白骨化する場合もあるようだが、本来は数カ月から一年、場合によっては数年かかる。お前が見たと言う死体は長く見積もっても、死後せいぜい三日経つか経たないかのはずだ。今は三月だし、せいぜい瞳孔の混濁と血管網が出現しているくらいで、白骨化までは行っていないはずだ」

「じゃあ、真樹が白骨化を進めていたのか?」

「だろうな。だとしたら真樹がやろうとしていることは絞られる」

 淡々とした声で呟かれた神竜の言葉に香月が瞠目する。神竜の黒い瞳がスッと冷たく細められた。


(ーー;)

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