表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/42

23

神龍が、口元に微かさ笑みを浮かべたまま首を傾ける。

「お前にとっても、そう悪いことばかりではあるまい?」

「あん?」

「ここにいれば術医の手当てが受けられるし、俺が知り得た真樹の情報もくれてやろう」

「教えてもらっても出られなきゃ意味ないだろうが   ……」

「確かにそうかもしれないが、知らないよりはましだろう」

 見下ろす神竜に香月は渋面を作り、子供が拗ねたように背を向けてしまった。

 神竜が肩をすくめる。

「傷に触っては何だ、今日はこれぐらいにしておこうか。何か軽く食べられる物を後で持ってこさせる」

 立ち上がりかけた神竜の耳に、聞き逃してしまいそうな小さな声が届く。

「…………は……」

「何だ?」

 座り直し、そっぽを向いたままの香月に聞き直す。香月が再びぼそりと呟いた。

「……森田って子は……どうなったんだ……?」

「あの子は……」

 神竜が苦虫を噛み潰したかのように顔をしかめる。

「……連れさらわれた」

 香月が首だけを捻ってこちらを振り返った。

 神竜が溜息を吐く。

「未だにどこにいるのか見当もつかない。まあ、見つかったとしてもあれだけ血を流していたからな、生きてはいまい」

 香月が顔をしかめる。

 道路に倒れていた森田葵はかなりの深手を負っていた。神竜の言うように、生きていない可能性の方が高かった。

「護衛にあたっていた術者二名が重傷。真樹がどこにいるか分からないこちらとしては、奴が何か事を起こさない限り打つ手なしだ」

「何だよそれ……」

 香月が痛みに顔をしかめながら体を起こす。

「じゃあ、何もしないでこのまま……」

 香月の顔が曇る。

 シーツを強く握りしめた香月の脳裏に、さらわれかけた洸の顔が浮かんだ。

「洸ちゃんはどうしたんだ?」

 香月の言葉に神竜が眉を潜める。

「洸ちゃんは大丈夫なのか?」

「いや、その洸という子についてなんだが……」

 神竜が懐から写真を一枚取り出し、その写真を香月に見せる。

 髪を肩で切りそろえた、どこにでもいる普通の女子高生が写っていた。

「この子か?」

 写真を覗き込んだ香月が頷く。

「うん。この子だよ」

「そうか……」

 神竜が何事かを考えるように眉間にしわを寄せ、写真に視線を落とす。香月は微かな不安を感じ、堪らず声をかけた。

「神竜、どうかしたのか?」

 神竜が伏せていた目を上げた。深い漆黒の瞳が香月を見つめる。

「本当はもう少し後で話すつもりだったんだが……この子は一カ月前に死んでいる」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ