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 朱雀が静かに香月の肩に止まる。先ほどのように炎が香月の肉を焼くことはなく、何の熱も感じない。

 喉を仰け反らせた香月に身を寄せる。

「去れ、真樹。でなければ香月が死ぬことになるぞ」

 香月の側に片膝をつき、冷たい声音で神竜が言う。

 真樹の瞳に怒りの色が再び浮かびあがった。

 炎の中に埋もれていた枝や根がざわりと蠢き、黒ずんだ樹皮を割って新しい枝や根が姿を現す。

「香月を放せ、陰陽師」

「断る。もう一度言うぞ真樹。ここから去れ、これ以上お前とここで闘うつもりはない」

 炎の中から枝や根が蛇のように首をもたげる。

「私が香月を人質に取られたまま引き下がると思っているのか?」

「あぁ、引き下がらなければ香月は確実に死ぬことになるからな」

 血が滲むほどに拳を握りしめる真樹に「あぁ、そうだ」と神竜が言葉を付け加える。

「一つ言っておくが、これは香月のためでもある。お前では香月の傷を手当することは出来ないだろう。このまま何もしなければ俺が手を下さなくても香月は死ぬ」

 神竜に標準を定めようとしていた枝や根の動きが止まる。

 真樹の目が香月の腹部の傷に向けられた。傷口からはおびただしい血が止まることなく流れ、香月の服を赤く染めて行く。

 真樹は顔を歪め視線をそらす。

 逡巡するような間の後、苦々しげに呟いた。

「………………お前なら、香月を助けられると?」

「あぁ、約束しよう。森田葵がお前の手中にある今、お前を誘きだせる餌は香月くらいだろうからな、信用してもらって構わない」

 神竜が肩をすくめる。

「まあ、お前が罠だと解っていて姿を現わせばだがな」

「…………一週間だ」

 怒りを含んだ真樹の瞳が神竜を見据える。

「一週間後に香月を迎えに行く。その間に香月の身に何かあれば、死をもって償ってもらうぞ」

「いいだろう」

 真樹が香月へ悲しげな視線を向けたが、何も言うことなく唇を噛みしめて一歩後ろへさがった。

 その姿がボロリと崩れ、木の葉となって風に舞う。全ての葉が消え去ると同時に、蠢いていた枝や根、炎に焼かれ灰と化したものすらも風に吹かれて消えた。


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