17
真樹の背後から無数の木の根が姿を現す。
神竜に向かって真樹が手を伸ばした瞬間、いっせいに神竜に襲いかかった。
木々の間を縫い、細かな枝を粉砕して猛スピードで神竜に迫る。
「やめろ、真樹。神竜を殺す気か」
香月が真樹の腕を掴む。真樹がハッとしたように香月を見た。
「香月」
真樹が愕然とした声で呟く。
目標を見失ったかのように根が神竜の横を走り抜けて行く。
木の影から神竜が飛び出してきた。手にしていた呪符を投げる。淡い光を帯びて飛んできた呪符を鞭のようにしなった根が弾き、呪符は散り散りに切り裂れた。
「陰陽師」
再び殺気立った真樹が身を乗り出す。その真樹を香月が突き飛ばした。
「っ……香月!」
倒れこみながら振り返った真樹の目に、後方から飛来した朱雀によって吹き飛ばされる香月の姿が映る。
地面に叩きつけられた香月の上に、朱雀が甲高い鳴き声と共に舞い降りて来た。
鋭い爪が香月の肩に食い込み、炎が肉を焼く。
「うあぁぁぁぁ--------」
堪らずに香月が悲鳴を上げた。
「香月!」
身を起こし、香月に駆け寄ろうとする真樹に呪符が飛ぶ。その呪符が真樹に捕りつく寸前に根が弾いた。
神竜が忌々しげに舌打ちする。
「ちっ……簡単にはいかないか」
「おのれ、陰陽師」
真樹の足元から無数の根が吹きあがる。肌にピリピリと刺すような殺気に香月が顔を上げた。
(ダメだ、真樹。これ以上人を傷つけるな)
身を起こす。地面に押しつけようとする朱雀を振り払い、駆けだした。
香月の瞳が金色に輝き、髪が銀色に染まる。
真樹が手を神竜に向けた瞬間、足元から生えた無数の根がいっせいに神竜に襲いかかった。とっさに神竜が呪符を放つ。
呪符が張りついた根は霧散して消え、その数を大幅に削ったが、防ぎきれなかった根が神竜を貫こうと襲いかかった。
避けきれないと悟った神竜がせめて致命傷を避けようと、顔の前に腕をかざす。
神竜と木の根の間に月の光を切り取ったかのような銀色のモノが身を滑り込ませてきた。それが神竜を背に庇うように両手を広げ、立ちはだかる。
鮮血が飛んだ。
時が止まったかのような空白の後、自分の物ではない血を浴びた神竜が目を瞬かせる。
「…………香月……?」




