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折れた枝と共に吹き飛ばされ、地面を転がる。
したたかに体を打ちつけられた。
「くそ……これは神竜か?」
香月は身を起こすが、頭がくらくらして旨く立ち上がれない。
頭を左右に振り意識をはっきりとさせようとしていた香月がふと地面に目をやる。
香月の周りの地面を割って、小さな木の芽が生えた。その木の芽が瞬く間に育ち、香月を守るかのように周りを覆っていく。
目を見張る香月の視界を白い着物が覆った。
真樹の腕に抱き締められる。
「香月、ケガはないか?」
「大丈夫だよ、ありがとう」
顔を覗き込んでくる真樹に笑みを返す。
ほっと真樹が安堵の溜息を吐いた。香月の背に回していた手を解きかけた真樹の動きが止まる。
香月の首筋を見つめたまま、訝しげに眉を潜めた。
真樹が手を伸ばし、香月の首を指でなぞる。
「真樹? 俺の首がどうかしたか?」
「痣が……」
「え?」
自分では見えないので気づかなかったが、先ほど神竜に首を絞められた時に付いたらしい。
香月はくすりと笑った。
「大丈夫、たいしたことじゃない」
無言の真樹。いつも穏やかだった瞳に暗い怒りの色が浮かんでいた。
様子のおかしい友人に、香月は言い知れぬ不安を募らせていく。
「真樹、どうしたんだ?」
首筋に視線を落としていた真樹が怒りに歪んだ目を木々の先に向ける。つられるように目をやった香月が木々の合間にちらちらと写る人影に気づき、顔をしかめた。
「神竜」
足元に転がる枝を踏み砕きながら呪符を手にした神竜が近づいてくる。
殺気立った真樹の髪が風もないのに緩やかに波打ち、空気が粘度を増したかのように重くなる。今まで感じたことのない友人の凄まじい殺気に香月の肌が泡立った。
「真樹、落ちつけよ。首にちょっと痣がついただけなんだから、お前がそんなに怒ることじゃない」
制止の声を掛けるが、真樹は一向に力を沈める気配がない。
香月から真樹の手が離れる。
静かに立ちあがった真樹に香月はぎくりと身を強張らせた。




