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 とっさに身構えた神竜だったが影の正体に気づき、顔をしかめる。

「…………お前か……香月」

「げっ神竜」

 木の葉や枝を大量に付けた香月が神竜に気がつき、体を硬直させる。はらはらと体に付いた葉っぱが落ちた。

 溜息を吐き、香月に近づこうと一歩踏み出した神竜の動きが木々の中で蠢く気配を感じ取り止まる。香月も感じ取ったのか辺りを見渡している。

 神竜が小さく舌打ちする。

 香月に走り寄りながら懐から呪符を取り出し、四方の近場の木に呪符を手早く貼り付けると真言を唱え始めた。

「オンキリリバサラバサリブリツマンダマンダウンハッタ オンサラサラバサラハツラカラウンハッタ」

 神竜が指を次々と組みかえ複雑な印を結んでいく。

「オンバサラフナツラコルレイバサラウンシャラウンボッタ オンアサンモウギネウンボッタ オンシュキャレイマカサンバエンハンダハンダソワカ」

 神竜が真言を言い終わった直後に周りに生えていた木の枝が生き物のようにうねり、神竜めがけて襲いかかる。その枝が神竜に届く前で見えない壁に弾かれる。

 神竜と香月の周りに結界が張られていた。

 神竜が懐から新たな呪符を取り出し、息を吹きかける。

「来い、朱雀」

 投げた呪符が炎をまとった鳥に姿を変える。朱雀は生き物のようにうねり始めた木々の間を火の粉を巻きながら飛翔する。辺りは瞬く間に赤々と燃える炎で包まれた。

 炎が木々を燃やしていくが、結界で覆われた部分には火どころか熱さえも伝わってこない。

「真樹!」

 香月が顔を蒼白にして駆けだした。

 結界から飛び出そうとした香月の襟首を神竜がとっさに掴み、力任せに引き倒す。

 怒りの籠った目で地面に倒れ込んだ香月を見下ろし怒鳴る。

「結界の外に出るな! 焼け死にたいのか」

「ふざけんな。友達が目の前で火に包まれてるのに指くわえて見てろってのかよ」

 叫ぶ香月に神竜の瞳に冷たい光が宿る。

 身を起こそうとする香月の腹部に片膝をつき、動きを抑え込むと、香月の首筋に手を掛けて軽く力を込める。今すぐ絞め殺せるのだと言葉外に語るその行動に香月は思わず息を飲んだ。

「結界から勝手に出るなと俺は言っているんだ。お前程度の妖力では何もできずに焼け死ぬのが落ちだろう」

 体の芯から冷えるような冷たい声に香月が身を大きく震わせる。奥歯を噛みしめて、首を絞めつけている神竜の手首を掴む。

「うるせぇ、この手を放せよ」

 身をよじって逃げようとする香月に、神竜の手に知らず力が入る。

「お前は本当にバカだな。まあいい……森田葵の安否が不明の今、囮に使えるとしたらお前くらいだからな、無理にでも大人しくしていてもらう」

 神竜の漆黒の瞳が深くなる。香月の意識を奪おうと空いている方の手を伸ばす。その手をとっさに香月は弾き、神竜の肩を掴んだ。

 先ほど地面に打ち付けたことで開いた傷口を掴まれ、神竜が痛みに顔をしかめる。

 香月の首を絞めていた手が緩んだ。香月は自分の首を絞めていた神竜の手を引きはがし、横腹を蹴り飛ばす。

 神竜の体が吹き飛び、地面を転がる。

 すぐさま身を起こした香月が己の手に視線を落とす。神竜の肩を掴んだ手は赤く染まり、ねっとりとした血が指先を伝い落ちていく。

 顔を泣きそうに歪め、肩を押さえて体を起こした神竜を見つめる。

「ごめん、神竜」

 そう呟き、結界の外へと駆け出した。


神龍、痛そうだな・・・( ̄ー ̄)

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