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真樹、暴走中です( ̄◇ ̄;)
バランスを崩しかけた香月も二、三歩歩を進めて体勢を立て直すと、女性の悲鳴が聞こえた方向に顔を向ける。唇を噛みしめ神竜の後を追うように走りだした。
香月は神竜の背を追いながら校門の前を通り過ぎる。その先には三又に分かれた道があったが目の前を走る神竜は少しも迷うことなく左に曲がり、次第に人気のない道に入り込んでいく。
道は細くなり、辛うじて舗装されてはいるものの片側を雑木林が覆う道に出た。
本来なら舗装された道が続くはずの場所で巨大な木がアスファルトを突き破り、根や枝がまるで生き物のようにのたくっている。
立ち止まった神竜の横に並び、その光景を目にした香月が息を飲む。
木の周りにはスーツを来た数人の男と、制服を血で赤く染めた少女が一人倒れていた。
木の根が血を流しながらピクリとも動かない少女の体に絡みつく。
少女に目を凝らせばそれは紛れもなく森田葵だった。根が森田葵の体を地面の中へと引きずり込もうとアスファルトの上を赤い血の跡を残しながら引きずっていく。
「真樹、やめろ」
香月が少女に絡みつく木の根に駆け寄ると、根から少女の体を引き抜こうと手を掛ける。少女の腕の下に手を差し入れ、引っ張るがビクともしない。それどころか木の根がさらに少女の体を締め上げる。
「どけ、香月」
神竜の声に香月が振り返ると、神竜が口早に早九字を切る。
「臨兵闘者階陣列在前」
森田葵の体に巻きついていた木の根が弾け飛んだ。とっさに腕をかざして飛んでくる破片を避けた香月の耳に、続けざまに神竜の真言が聞こえてきた。
「ノウマクサンマンダ バザラダン センダマカロシャダ ソワタヤ ウンタラタ カンマン」
神竜から吹きあがった霊力が辺り一面を白く染め、蠢いていた根や枝を一掃する。
巨大な木が耳をつんざくような悲鳴を上げた。怒り狂ったように残った枝や根を震わせ、アスファルトを砕き新たな木々が姿を現す。瞬く間に細い道路は地中から生えた植物で、樹海のように覆い尽くされていく。神竜がハッと地面に視線を落とすと、地面に亀裂が入り、神竜めがけて木の根が襲いかかってきた。
「オン アミリティ ウンハッタ」
とっさに張った守護結界のお陰で串刺しになることは避けたが、真下から生えた木に吹き飛ばされ、昨日貫かれた肩を地面に強く打ちつける。傷口が開き、血が滲む。
「……うっ」
肩口を押えれば、生温かいものが手を伝った。痛みに顔をしかめながら顔を上げる。
辺りを見渡せば植物の成長は止まり、静まり返っていた。耳が痛くなりそうな静寂の中で己が出す音だけが木々の間に響く。肩を押さえたまま立ちあがった神竜は、油断なく辺りの気配を探る。
ガサッ
背後から聞こえた音に神竜が振り返る。丈の低い常緑樹であるアオキの間から黒い影が飛び出してきた。




