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「そう言えば、香月さんどうしてここに?」
ふと気づいたように顔を上げ、洸が首を傾げる。香月が肩をすくめる。
「この頃失踪した子について調べているんだよ」
「失踪?」
「知らない? この学校の生徒だよ。確か大崎美穂と葛城ヒナ」
洸の目が見開かれる。その様子に香月は首を傾げた。
「本当に知らなかったんだね」
「はい……その二人私のクラスメイトです」
えっと今度は香月が目を見開く。
「そうなの? じゃあ、森田葵って子知ってる?」
「はい。その子も同じクラスです」
頷く洸に、香月はグッと拳を握りしめた。名前は知っているが顔を知らないので、どうやって探そうかと思案していた所だった。へたに聞きまわれば、立て続けに起こっている失踪事件で神経質になっているであろう人々に妖しまれ、警察を呼ばれること間違いなしだった。
「よかったー警察呼ばれずに済むよ」
「え、警察?」
「こっちの話しだから気にしないで」
あははと笑って誤魔化し、森田葵について教えてもらえるよう洸に頼んだ。
「森田さん部活やってないはずだから、もしかしたら、もう帰っちゃてるかも」
顎に手を当て、小動物のように小さく首を傾げて思案した後、洸は教室に向かって歩き出した。白い校舎の壁に沿って正門の方へ歩いて行く洸の後ろを香月がついて行く。
洸が急に立ち止まった。
「どうかしたの洸ちゃん?」
香月が立ち止まった洸を覗きこむ。洸がスッと前方を指差した。
「あの子が森田さんです」
指差した方向には、カバンを肩にかけ携帯をいじりながら歩く少女がいた。
「え、あの子?」
今にも校門から出ていきそうな少女に、香月が慌てて走り出す。
「ありがとう洸ちゃん。気を付けて帰ってね」
手を振る香月に洸も笑って手を振り返した。その瞳に暗い色が混じっていたが、走る香月が気づくことはなかった。




